2006/11/13

中国による靴戦争


中国商務省は、欧州連合(EU)による中国製革靴への反ダンピング(不当廉売)課税の影響を受ける中国企業がEUの裁判所へ提訴するの を支援する方針を示した。EUは10月、中国から輸入される革靴に2年間にわたり16.5%の反ダンピング関税を課すことを決めている。同省はウェブサイ ト上で、EUの決定はEU自身の反ダンピング法規に違反する点が多いと指摘。中国企業の権益を守るには法的手段が有効だとしている。

実はこの背景、イタリアの靴職人たちからの強い要望でイタリア政府が中心になって、安い値段で入ってくる中国製品のEUからの排除を進めていったことが原因となる。イタリアの靴といえば、フェラガモを中心としてとても上等な革靴ブランドがたくさんあるというのもあるが、フィレンツェに行くと、Bottega と呼ばれる頑固そうなおっさんが一人でやっている靴の家内手工業の店がたくさんあることに気付く。値段はそこそこ張るのだが、一度足型を取っておくと、その後は、デザインさえオヤジに伝えておけば、自分だけしか合わないオーダーメイドの靴が出来上がる。フィレンツェに頻繁に行く人は、フェラガモのブランド物の靴を買うより、断然、こういうおやじが丹精こめて作った靴のほうが本当に丈夫だし、長持ちがするのでいいと思う。

中国から安い値段で、たまにはブランドの贋物をEU内で売られることにより、そういう技術を持っているおっさん達の仕事が減ってしまった。服装にはあまり金をかけないが、どんな貧乏人も靴だけは拘るというイタリア人。そういうイタリア人でさえ、最近は、質が悪くても、安い靴を買い、ダメになったら新しい靴に取り替えてしまおうという動きが、中国製品の大流入によって変わってきたようだ。イタリアの革製品工業がなくなるのはとても悲しいことだし、靴ひとつとっても、細かいパーツにはbottega同士の強い繋がりにより足らない部分を補ってきたという文化がある。それは是非残して欲しいものだ。

中国側からすると、自分達の商売の「邪魔」になるような部分は絶対許さないと思うのは当然だろう。特に商売や金になるような部分に対しては、死んでも奪い取ってやると躍起になっているのが中国人であるため、現地の文化を守るという感覚が全くないのが彼らだ。商業問題なのに、中国の北京政府が乗り出してきたから、話はややこしくなってきた。おそらく中国の革靴製品を作っていた工場の主な株主が政府関係だったのだろうと想像は容易につく。これが台湾企業がメインの会社だったりした場合、中国政府はほとんど動かない。自分達がほとんど労力を使っていないが、金儲けになる部分を邪魔された場合には政府でさえも黙っていないというのが彼らの方針である。EUと中国との喧嘩はどこまで行くのか面白いところだ。

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