
実際に一般新聞で報道されている情報しかこれまで知らなかったことなのだが、最近の内閣は総理大臣もそうだし、内閣に属している大臣も素人ばっかりでコロコロ変わって、一体プロフェッショナルが腰を落ち着けてなんで政治をしないのだろう?というのは、ちょっと脳裏の片隅には思っていたのだが、そういう政治家同士の椅子取りゲームになってしまう点についてを、見事にそして簡潔にまとめてくれて一般人にわかりやすい言葉で説明しているのが本書「政権交代の内幕-民主党は日本をどう変えるのか」である。
この本、文章があまり多くないため、あっさり行き帰りの電車の中で読める程度のものであるが、政権交代における根回しや、選挙の前後における各立候補者の奮闘について克明に書かれている。だいたい選挙になってくると、一般市民にとっては「うるさい時期が股来た」としか思えないのだが、やっている本人たちは明日がプー太郎になるのか、それとも「先生!」と持ち上げられるのかという、両極端の立場になるのだから、必死である。
本書の内容は、小泉政権のときから鳩山内閣が出来たときごろまでの時代のことについて述べられている。ただ、参考までに、田中角栄が首相だったときや竹下登などの名前もでてきているのだが、だいたいあまり政権が変わるときの様子というのはいつの時代も変わらないということのようだ。それはこの本のなかでも情報が整理されているので、「なんとなく」と思ったものがすべてすっきりするのではないだろうか。
ただ、民主党についてちょっとした期待を持っている国民に対して「いやいや、そんなに期待を持っていたら、あとでバカを観ますよ」というのが上杉隆の言いっぷりなのだが、政権が自民党から民主党に変わったときには、一般市民は本当に期待していたと思う。しかし、いまとなっては、この期待は全部ウソだった、つまり騙されたというのは誰の眼を見ても解ることだろう。先に上杉隆がその危険性について警鐘を鳴らしていたのは、予想通り皮肉にも当たってしまったということになる。たぶん、政権が変わった時点では、大手メディアでは、それなりに民主党に自民党時代のしがらみに付いてぶっ壊してくれという表面的な期待はしていたのだろうが、実は自分たちも影響を受けるからということから、あまり自民党時代のことを壊さないで欲しいという内面的な抵抗もあって、実はあまり「民主党も実はダメだ」という報道は一切なかったとおもう。そんな時期にこの本を出したというのは、先述にも書いたとおりに、なにか肩書きがあってその組織に言いなりになっているブン屋が書いたのではなく、いちフリーランスがなんの背後を持たずして率直に現状を分析して述べているというだけのことなので、いろいろな視点は持つべきだという点を教えてくれたのは勉強になった。
ただ、この本を読んで悲しいことだと思ったのは、やはりこの国の政治家は官僚の言いなりにならないと何も出来ないということであり、官僚を大切にしない政権は官僚から見捨てられ最終的には自分の首を絞めることになるという事象になるということだ。そして、いままで小泉純一郎元首相は「自民党をぶっ壊す」という宣言をしていたのは有名なのだが、これはそのまま自民党のなかの古い体質をぶっ壊すのであり、郵政民営化だけで政権に就いたひとではある。しかし、一切官僚の言いなりをやめるということは行っていない。小泉元首相は官僚を敵に廻したときに恐ろしさを良く知っていたというのがその理由である。反対に、そのあとに続いた安倍晋三元首相は「官僚をぶっ壊す」としたので、抵抗にあい、最終的には「おなかが痛くなったから」で辞任した。福田康夫元主張はまた官僚をうまく使ったが今度は身内から突き上げられて、こちらも意味不明な理由で辞任した。なので、この国はなにかしらの国政をするには、常に辞めさせられることはない官僚をうまく使わないと、立場不安定な自分のクビが飛ぶことになると、そして賢い官僚からの突き上げに対してどっしりした構えがないひとは、その精神的プレッシャーで「ボク、もう辞めたい」と辞任に追い込まれるということになるようだ。こういうことをまとめてくれる人がいないので、上杉隆氏の本は本当に重宝する。
政権交代の内幕-民主党は日本をどう変えるのか
著者:上杉 隆
出版社: PHP研究所
発売日: 2009/9/19
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