
その中でも色々なガイドや本を読んでも、分けのわかんない宗教だなと注目していたのが、カオダイ教だ。簡単に言うと、「なんでもあり」の宗教であり、それもそのはず、仏教、道教、儒教、キリスト教、イスラム教の教えはすべて教義の土台になっているからなのである。世界では宗教同士の教義が違うからというだけで戦争を起こしているのだが、このカオダイ教のなかにはいれば、すべては1つの要素にしかないため戦争なんか起こる要素が全くなくなってしまう。5つの教義が土台になっているので、カオダイという。漢字で書くと「高台」だ。


カオダイ教の大本山があるタイニンはホーチミンから約100kmも離れているので、ちょっとやそっとでは行くことができない。調べてみると、だいたいはツアーに参加していくということになっているのだが、単にカオダイ教の大本山に行くのに、すごい値段を取られて、決まったコースでいくというのは少し嫌だなと思っていた。日本で日帰りツアーを頼むと高いから、現地で探してみると何とかなるだろうと思っていたが、やっぱりなんとかならなかった。信者数が100万単位でいるということは、ホーチミン市内にも絶対寺院があるんだろうと思っていたので、ホテルでカオダイ教の寺院がホーチミン市内にもあるのかどうか聞いてみた。ホテルの人も即座にはわからなかったらしいが、無理な頼みを聞いてくれて、大調査が開始された。結論として、チャン・フン・ダオ通りに寺院があることらしいと教えてくれた。名前は「Thanh That Saigon Temple」である。大本山じゃないけれど、列記としたカオダイ教の寺院であるから、こじんまりとはしているだろうが、内装なんかは同じようなものだろうと想像して出かけた。
この場所に行くにはタクシーでいくしかないのだが、タクシーには住所を見せれば何の問題もない。住所を見せただけであれば何にも運転手に怪しまれないが、寺院名なんかを見せたら「そんな寺があったっけ?」というような顔をされることは間違いないだろう。もちろん、自分達の場合もそういう顔をされた。さらに、道教とか仏教とかの寺院ではなくカオダイ教だからだ。なおさらだろう。
タクシーで約15分ほど乗ってみると、目的地の寺院は、いきなりその派手な門構えで存在をアピールしてきた。タクシーの料金は、ホテルからだと値段は85,000VNDだった。やっぱりベトナムのタクシーは安い。


カオダイ教の信者は、朝の6時、昼12時、夕方6時と深夜12時の4回はきっちりと礼拝を行わなければならない。これはイスラム教の教えから受け継いできたものなのかもしれない。自分達がこの寺院に行ったのは、12時の礼拝の時間にあわせてイベントが行なわれると思っていたので、それに間に合うように出かけた。到着は11時半頃だったので、儀式が始まるまでにいろいろと質問できたのはよかった。
男性信者は実はこの寺院で寝起きをしている住み込み信者であることが話をしているとわかった。そういう信者というのは結構いるらしく、住むところも同じ敷地内に共同生活として行なっている。さらにびっくりしたのは、基本的には宗教の勉強を行なうために住み込みなのだが、学生の年齢である信者も当然いる。この男性信者も年齢は20歳で、これから大学にも進みたいとおもっている信者であった。常に本を持ち歩いていたので、「それって教本?」と聞いてみたところ、なんと数学の教科書で、それも一番数学でも面倒くさい「数論」のところを勉強している最中だった。それも英語版。ベトナム人の勤勉さには驚かされたが、彼の喋る英語も、別にどこかで習ったというのではなく、自主学習だけらしいが、完璧な発音と文法だった。恐れ入った。
毎日4回も礼拝をするのか?と聞いてみたところ、朝の礼拝は参加するが、夜は眠いから参加しないらしい。「へ?そんなことでいいの?」と聞いてみると、笑いながら「ははは、本当は参加したいけど、眠さには敵わないし。それに朝の礼拝はちゃんと5時半には起きて参加しているよー。夜参加する人は早朝は参加しないひとは多いよ」との説明を聞いたときに、生々しい意見を聞けたとおもった。
建物中に入ると、礼拝が始まると利用される中央広場が広がっており、ネット上で見つけた写真でしか観た事が無かったが、目の玉の象徴も発見。さらに生で見たほうが、あの派手な壁の装飾にも唖然としてしまった。なんというか、ここまでの装飾を造ると言う事は、これを作ったひとの脳みその感覚というのがどういうものなのだろうかと疑問に成ってしまう。漫画のようにぽか~んと口を開けて、その派手な演出を見ていたところ、信者の人が「上に行きましょう」と連れて行ってくれた。儀式を見るのであれば、上の階から眺めたほうが良く見えるからということ。螺旋階段のようなところをぐるぐる廻って上に上がっていく。儀式まではちょっと時間があったので、さらに上のほうに行くと、時報にあわせて鳴らす太鼓があったり、見晴台のようなところに出てきた。高さとしては15メートルくらいなのだろうか。ただし、ここまで高くしても何の意味があるのかよくわからなかった。












儀式が終わったあとに、再度お祈りをしていた場所と祭壇のほうを見学することができた。実はお祈りする場所は3箇所あるらしく、1箇所は上からみた光景の場所。その他は、女性信者しか入室できないと言われている媽祖が納められている場所。そして最後は、祭壇のすぐ傍の所である。眼の玉をすぐ傍でみたときには、なんだか不思議な感覚に陥った。

そういえば、帰り際に、モノは試しにと「信者の人が使う教義が書かれた本はあるんですか?」と聞いてみた。老婆の信者がなにか持っていたので、きっと聖書みたいなのはあるんだろうとおもったら、やっぱり存在した。「じゃぁ、あげるよ」と老婆に言われたのであるが、そんな貴重なものを貰ったら、念も入っているのだろうから大変だと思い、丁重に断っていたのだが、相手から見ると「汚いから受け取らない」と思ったようで「いま新しいのを持ってくるからちょっと待ってて。あんたたち、時間あるの?」と言われてしまった。もちろん、こちらは暇だから腐るほど時間はある。そうしたら「ベトナム語と中国語の2種類しかなく、英語の教本はないんだよねー。もちろん、日本語は無いよ」と言われた。まだ漢字だったら読めるかなとおもったので「中国語でお願いします」と頼んでみた。ベトナム語なんか、どこがなんだかわからないけど、漢字だけ読めればなんとか意味がわかるだろうとおもったからだ。中国語で書かれた教本をもらって帰ってきた。たぶん、普通の観光客でここまで要求する人も居ないだろうし、こんな教本を持っているやつなんか、たぶん日本にはほとんど居ないのだろうと思う。カオダイ教の教本の中身については、別の機会に記載したいとおもうが、そこには普段の生活の仕方から、お経の唱え方と文句も書かれていた。すべて知っていると、カオダイ教を理解できたことになるようだ。
最後に、案内をしてくれた信者の男性のかたの名前を聞くのを忘れたので、もし、またこの寺院に行く機会があったら、感謝の言葉と少しお布施でも渡しておきたいと思った。なにしろ、なんのお布施もしなかったのに、あの丁重なもてなしをしてくれたのだから。ベトナム人の気質を垣間見た気がした。
ベトナム「3大カルト」聖地へ
http://www.tanken.com/viet.html
Thanh That Saigon
Address : 891 Tran Hung Dao Thanh Pho, Ho Chi Minh
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