2010/01/04

末広亭での新春落語(2010)

毎年1月3日恒例の個人的なイベント、新宿末広亭への新春寄席公演を観に行ってきた。いつも午後からの部(2時半から)を観るために出かけているのだが、今年も朝の11時ごろには到着しているつもりで家を出た。なにしろ、全席自由席であるため、遅めにいくと側道の席だったり、悪い席だったり、最悪立見席になったりする場合があるので、早めに行かねばならないのだ。

しかし、早い人は早くきているようで、11時に到着した際には、既に12人くらいの人が並んでいた。今回は天気が良いので、絶対混むだろうと思っていたので、早めに到着しておいて正解だった。が、その反面、寒風吹きさらす日であったために、待っている間に底冷えと風が吹き付けてくるのでかなり寒くて大変だった。落語を見たいのは自分で、友達はそれに付き合うようなものであったために、後から合流すればいいよーといった手前、友達が来るまでは一人で待っていなければならない。これで困るのは、トイレに行きたくても行けないことだ。何しろ自分だけしかいないので、抜けると後ろの人が入ってくるからである。それまでに前後の人と仲良くなっていればいいのだろうが、まぁ、普通はなかなか難しい。幸い、今年はトイレトラブルがなかったのでラッキーだったが、底冷えした分、心底からだが冷えた。友達が「あったかいコーヒーでも買っていくから」と言ってくれたときはうれしかった。

待っている間に、何度か爆笑問題の2人が横を通り、昼からNHKで中継している新春寄席の番組のために、末広亭から生中継の挨拶をしている光景が観られた。これも例年通り。猫背の太田は、テレビでみるような感じで、まじめそうだったし、田中は自分の肩よりも低い身長しかないのもいつものとおりだ。小学生並みとテレビで言っているのも納得である。2人が中継のためにしゃべっている間は人垣ができる。今回は並んでいるのも前のほうだったのと、周りのひとよりも顔ひとつ上に出ていたので、中腰になって中継カメラに写らないようにしていた。

元日から10日までの間は、顔見せ興行としてたくさんの人たちが、入れ替わり立ち代り舞台に出てくる。そして、第二部と第三部の間は、休憩は入るが、客の総入れ替えにならないので、二部の最初からぶっ通しで最後まで見ることができるのも正月のありがたいイベントだ。ただ、3日のNHKの中継が入るときだけは、催し物が異なり、本来出演するべき人が出演せず、出演予定が無い人が出演したりするから、調子が狂う。今回、NHKの中継用として出演してきたのは、次の5組だ。

・ナイツ
・てつ&トモ
・爆笑問題
・ケイシー高峰
・桂歌丸

ナイツとてつ&トモが出演したあと、ちょっとした大喜利が行われたが、これが全然面白くない。爆笑問題が司会をしていたんだから、もうちょっとマシなことをしたほうがよかったんだろうとおもうが、残念だ。爆笑問題自体も10分くらいの舞台で漫才をしていたが、やっぱり勢いがあって面白い。しゃべり慣れはして
いるなーとおもった。もちろんてつ&トモの体を張った演技は、いつもながら感服する。これにナイナイの岡村が混ざっていたら、すごい面白い映像になっていただろう。あとは、いつもながら思うのは、ケイシー高峰の医学漫談ネタが、中途半端に面白くない。毎年見に来ている人の中には、もちろんファンがいるのだろうとおもうのだが、個人的には古臭いなーとおもうし、それほど大きな笑いが取れているわけじゃないのだから要らないんじゃないのかなと思ったりする。最後の歌丸は、第二部の主任公演者でもあるため、テレビ中継の部分と末広亭での挨拶と2回のしゃべりを披露してくれた。テレビ中継のときには何を話すのかなと思っていたら、古典落語の「壺算」をお披露目していた。古典落語好きに取っては「キタァ!」と思ったに違いない。そういえば、歌丸は去年もこれだった気がした。

さて、テレビ中継が終わった後は、通常通りの興行が始まるのだが、演者の数がだいぶ減る。当たらしめの人と古参演者を適度に散らして出演させているのは、ディレクタの腕の見せ所だと思う。客も飽きもせずに見ることができよう。

今年もぶっ飛んでいるなーとおもったのは、春風亭昇太だろう。今年も毒舌を振りまいて「死んじゃえばいいのに」の連発。今年は脳みその足らないパカっぷるをネタにしていたところが笑える。落語なのか悪口大会なのかわからないが、新春初公演なので、こういう話もOKだろう。客を笑わせればOKなのである。ただ、表現がとてもオーバーで、座布団の上にほとんど座っておらず、立てひざの姿勢で手を大げさにしていたのが印象深かった。

雷門助六は、見た目が桂歌丸にそっくりであるため、今年もそのネタをやっていたのだが、いつもなら歌丸を自分に置き換えて、模写などをしているところなのだが、今年は歌丸がNHKの中継のときに出演していたこともあるため、自分の出る番のときに歌丸が舞台袖のところにいたというのが幸いしたのか、歌丸が突然出てきて「似てねーよー」と一言言ったから、当の助六もびっくり仰天で、舞台の端まで飛んでいってしまった。おまけに、しゃべろうと思っていたことが全部吹っ飛んでしまったために、時間をもてあますような状態になってしまい、あたふたしていたのも面白かった。こういうやりとりがあるのも新春らしい。

漫談の国分健二は、いつもながら似ている物まねをしてくれるのだが、爺さん・ばあさん相手のネタであるために、元になっている俳優や歌手が全部古い。小林明だの五木ひろしだの。当人も言っていたが、「これ、老人ホームで受けるんだよね」と言っていたくらいだから、年配のひとにとっては楽しいネタだろうと思う。

手品の松旭斉八重子は、個人的には「八重子ちゃん」と勝手に呼ばせてもらっているおばさん手品師なのだが、この人、ほとんど簡単な手品であれば、ネタばれさせていたりするのが面白い。ただ、落語や漫談のように、ドッとした笑いが取れないし、あっと驚くような手品を披露するわけでもないので、拍手も疎らになってしまい、毎年中途半端に終わる。助手として出演しているおっさんとの掛け合い(といっても、おっさんは全くしゃべらない)が面白いので、大人しめのマギー四郎と言ったところだろうか。

全体として今年も面白かったのだが、いかんせん、今年の客は本当に態度が悪かった。携帯の電源をあれほど切れとアナウンスしているのにも関わらず、ピーコピーコ鳴らすバカはいたし、漫才のネタでは先にオチを言ってしまうおばさんは居たし、お菓子をバリバリ食べながら聞いているおっさんたちも居たし、前列のほうでは内容が難しかったり意味が解らなかったりすると寝ている若い人も居たし、客がバカになるとこうもろくな見方をしないんだなというのが良くわかった。最後に歌丸が出てきて、観客の態度の悪さを皮肉った話題を話していたのだが、どれだけ自分たちのことだということを認識した人がいるのかどうかは不明である。

桂歌春も当日言っていたが、一人入場料3000円で、1日見ていたら、それだけで演者が40人も出てくるんだから、1人の演者あたり70円くらいで見られるなんて、お得でしょう?なんて言っていた。確かに、正月の場合は、いつもより一人当たりの時間は短いが、たくさんの人たちが出てくるので、これは楽しい。こういう落語の場で、普段テレビでは見ないようなひとを見る機会があるのはうれしい限りだ。

新宿末広亭・正月初席出演者一覧
http://www.suehirotei.com/01kami.html