2012/02/12

ウィーン・小さな街物語(書籍)

筆者のご夫婦がウィーンを新婚旅行で行ったときの印象がとてもよかったため、そのまま再度ウィーンに渡り、そのまま居ついてしまったというから、それだけウィーンの街には魅力的なものがたくさん詰まっている場所なのだといえよう。本書は、観光ガイドによくあるような、その街に関する情報がつまったものなのであるが、1軒1軒の店についての詳細な情報を書いているわけではなく、ウィーン全体の街の様子やウィーン気質はどういうものか、そして、ウィーンに行ったら是非こういうところで何をしたらいいというような全般的なことを記載されたガイドブックだ。さすが、ヨーロッパの文化の中心地であったところの街なので、すべてのニーズに関しては満たされる場所なのだといえよう。それは買い物から芸術から自然まで含めてである。

こういう書物の場合、書いている人のバックグランドによって、同じような内容であっても全く内容が異なるように見られるのが不思議だ。この著者お二人は、文化程度がとても高いため、オペラや絵画、そしてダンスや陶器という、知識が無いと少し読みこなすには大変なのと、買い物1色でしか都市を見ないような馬鹿ねえちゃんには、この本は全く役に立たないと思われる。逆に言うと、これらの趣味があるひとにとっては、とても有益な情報が満載になっているので是非ご覧になったほうがいい。特に、ウィーン少年合唱団の記事なんていうのは、ほとんどの似たようなガイドブックには記載がされていない内容だ。これだけ世界的に有名なのに、歌っている少年たちのことについて言及して、引退後の人生にまで踏み込んで記載しているようなものは皆無だ。

本の中を見ると、結構カラー写真を豊富に使っているし、2005年に出版されたものだとはいえ、あまり見劣りしないような内容になっているので、いまこの本を参考にしてウィーンを訪れてもかなり役に立つだろうと思う。特に音楽に興味がある人はいい。別にクラシックの基礎を知っている必要があるとか、そういう意味ではない。クラシックの本場のような場所なので、それを体験したいという気持ちがちょっとでもある人にとっては、ここは理想的であり、その理想が実現化しているところなのがウィーン。それを上手に解説しているのがとても素晴らしい。素養と知識を持っていないと、簡単には説明が出来ないと思う。

筆者はウィーンの人になりきるように、表面的にウィーンの人と付き合っているのではなく、もともとウィーンで生まれて、ウィーンで育ったかのような振る舞いができるように現地でとても努力をされているようだ。あとから入ってきたアジア人が、世界的文化の中心地に現地の人のように振舞うのはとても難しいし、現地の人から見ても、いつまでもお客さんという扱いではなく、前から知っている現地の人という扱いとして認めてくれたというのは本当に努力したんだろうなと思う。そうじゃなければ、表面的に知りえるようなウィーンではなく、ウィーンの内部に入り込み、ウィーンの内面を紹介しているように思える。単に現地の言葉が話せるという程度ではこれは得ることが出来るものではないのじゃないかなと思う。

是非、ウィーンに行く前には他のウィーンに関する本と一緒に参考にしていただきたい。

ウィーン 小さな街物語
須貝 典子 (著), 片野 優 (著)
出版社: JTBパブリッシング
発売日: 2005/03/15

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