2012/06/16

B-CASカード

ネットニュースのGigazineに掲載されたから、あっという間にネット上を拡散して広がったのが、B-CASカードで有料放送を見放題にする手順というもの。方法は簡単でカードリーダとソフトがあれば、なんの知識もなくできちゃうというから、そりゃぁ、誰でもやるだろうなと思った。ただ、難点はカードリーダがそう簡単に手に入るものではないということだ。

ソフト自体はブームに則ってあっというまにネット上に広まった。なので、最初に配布をした人から、子・孫・曾孫とサイト分裂していって、そのあと、実際にいろいろなカードで実験してみて「書き換えができた」「書き換えができない」という情報まで出回ることになったのはすごかった。ネットの力によって、不特定多数による分散実験が行われたと言うことになる。なので、後発として、この書き換えの動きに入った人は、それらの情報を単に実行するだけでただで見られるという環境が出来上がってしまうということだ。

ソフトはハードのことを書く前に、今回のB-CASの話が出たときに、有料放送に対する放送形態が自分が考えていたのと実際では全く異なっているんでは無いだろうかということを改めて知った。これまで、WOWOWみたいな有料放送というのは、もともとが実放送コンテンツに放送局側がスクランブルをかけて、それを電波に乗せて一般家庭まで飛ばしているのかと思った。そして、そのスクランブル放送を、契約することによってチューナーなりで解読をしてテレビに観られるという方針を採っているのかと思っていたのだ。ところが実際には違った。本当のところは、放送局からは普通に地上波放送と同じようにテレビで観られる放送コンテンツとして搬送されるが、それをテレビ側でスクランブルをかけているのがB-CASで、そのB-CAS自体の情報を書き換えることでテレビでみらえるという放送形式だったのだ。となると、今回のB-CASですべてのチャンネルをスクランブルが既に有効になっていて、それを2038年まで使えるというようなやり方をすれば、すべての有料放送が観れちゃうというのはすごく納得できた。たぶん、この放送形式を採用しているのは放送局側が投資コストを安く済ませることが原因なんだと思う。放送局からは家庭ごとに放送形式を替えてできるわけがない。電波とはそういうものだ。なので1種類の放送形式でしか送られないので、有料会員と無料会員の違いを端末側で識別するしかないのである。

B-CASはB-CAS株式会社が運営しているカード会社である。テレビがデジタル放送になって、それも地上波放送になったときも、コンテンツ管理ができるからという理由でB-CASを運営しているようだが、実際には有料放送と無料放送の管理をカードにやらせているだけで、左団扇でふんぞり返ってテレビが売れるたびに入ってくるマージンで儲けている会社である。

さて、ソフトというのは、出回っているのが2種類。東芝製のカード用と松下製のカード用とで対応の仕方が異なるのだが、それも出回っているソフトも誰もが簡単にできてしまうくらい洗練しているもの。要は、B-CASのデータを書き換えちゃうだけなのである。おそらく普通の場合はWOWOWのような有料放送が、会員申し込みを一般ユーザのほうからあった場合、代理店や担当者がB-CASのカードを有効にするような設定変更をしているんだろう。それを一般ユーザが簡単にできちゃうということのやり方が出回っているのではないかと思った。だいたいB-CASカード自体に、松下製と東芝製の2種類しかないと言うこと自体が笑ったし、このB-CASの仕組みはどうやら日本だけのことなのだなということはこの時点で分かった。ソフトの使い方については、ここでは言及しない。他のサイトでも記載されているのだろうから、そちらを参照すれば良いだろうし、雑誌・ラジオライフには随分前から記載されていたような気がする。

それからハードだが、これはカードが読めるハードでなければならない。手近なハードというと、最近はe-taxでの申請が流行っているため、個別認証用のカードリーダというのが量販店で売られている。これを使って、ICチップのところに埋め込まれているデータを書き換えちゃうというのがやりかただ。検索をかけると、NTT Communications社のカードリーダがたくさん出てくるのだが、そのOEM供給元になっているSCM Microsystems社性のカードリーダが一番安いので、お買い得だと思う。単なるICチップの情報を読み取るだけのものなので作りは簡単だ。

USB接続のカードリーダにB-CASのカードを入れてしまって、あとはソフトで設定操作内容に書かれている通りにやってしまえば、それで終了。あとは、BSだろうがCSだろうが、電波を受信できる環境であれば簡単に見られる情報ができてしまう。

ただし、ここからは想像の世界なのだが、最近のテレビはネットに繋がる環境があるものが多い。テレビでネットサーフィンをしたり、テレビがテレビ電話になったりするような環境もあるくらいだ。つまり、テレビから外部に対してデータ送信できてしまう環境が可能なのである。これは言い換えれば、B-CASのデータを書き換えたことが、テレビから勝手にWOWOWのような有料サイトに定期的にポーリング発信しており、不正に観ているところがあれば、テレビIDかB-CASのIDからユーザを特定しちゃうだろうとおもう。たしか、B-CASのカードはテレビを観るときにユーザ登録をしていたと思う。そうすると、IDから簡単に情報が抜けることができるというわけである。インチキでWOWOWなんかを観ているようなひとは、双方向の環境は作らないほうが良いだろう。

B-CASカードで、ソフトを使っても見られる環境でできないような古いタイプのカードを持っている人はどうしているんだろう?もしかしたら、電化製品の売り場に行って、サンプル展示しているテレビに付いているB-CASカードと使えないB-CASカードを勝手に取り替えて、新品の書き換え可能のB-CASカードをゲットしているひともいるんではないだろうか?それは犯罪だとは思うのだが、ただ、どういう犯罪なのか不明。物を勝手に取り替えているだけなのだから。

会社の隣りの先輩がカードリーダを知り合いから借りてきて早速挑戦したようだ。マンションではケーブル放送が入っているために、有料放送はスクランブルで表示はできていただけだったが、ソフトを使って書き換えたら全部丸見えになってしまって、もう家から出なくても良いやと言っていた。ただ、面白いことを言っていたのだが、放送が見えない環境であった場合には、「観れたら良いのになー」と思っていたのに、いざ全部丸見えになってしまうと、それほどテレビに執着しなくなるとのこと。MTVのようなテレビチャンネルは、単なるBGMにしているだけでも効果はあるし、新聞のテレビ欄で昔はこれがみられたらとおもって憤慨していたのに、いまではすっかり新聞のテレビ欄は全く観なくなったとまで言っていた。

今回のこのタダで丸見えになる仕組みが解放されたことは一般ユーザに知られるのはgigazineがまず大きく関わっているが、このとき、一般新聞には事件として掲載されることになった。しかし、テレビの報道番組やワイドショーでは全く取り扱われることがなかったのが面白い。それはそのとおりで、ただでさえ地上波放送を生で観ないで全部録画し、CMをすっ飛ばしてみている視聴者が結構大半になってしまった状態に、有料放送の放送方式を覆すようなことを自分たちで放送するわけが無い。テレビ放送というのは、それだけ影響力があるというものだ。わたしもわたしもと、その辺の素人ばばぁが騒ぎ始めたら、有料コンテンツとしてテレビ放送をしている仕組み自体が存在意義がなくなり、放送局の経営に関わってくるからである。とはいっても、いま有料で払っている人が払わなくなるということはどこまであるだろうか?新規で有料会員が増えなくなるだけで、いつまでも右肩上がりで加入するようなDFCを廻すくだらない経営計画をしているんだったら馬鹿だなと思うだけである。

なお、今回の事件によって一番笑えるのは、これを阻止するための方法が無いことだ。ソフトがネット上に出回ってしまったのでは、必死になってサイトを削除するように中国共産党の特殊部隊所属のGFWの制御なみにしらみつぶしにネット上々を徘徊するだろう。しかし、消しても消しても、一度ネット上に出てしまった情報は誰かがコピーをするわけで、終わらないもぐらたたきゲームをしているようなものである。また、ハードのほうを潰そうとしたとしても、カードリーダの場合には、一般的なICカードであるために、e-taxだけとか、社員証用とか、そういう特化的にしかカードリーダが使えないということはまずできない。じゃ、問題のB-CASカードを全部回収して、新しいカードを配布するという網羅的行動もできなくはない。これをやるとしても、一体、日本にはテレビが何台売られていると思うかを考えれば、まずは行動ができない。すでに1000万台単位でB-CAS対応のテレビが世の中に出ているのである。ということは、この1000万台分のカードを作って、配布してというようなことを短期でやることはまず無理だ。法律を印籠のように脅しをしたとしても、集団でやられたら、日本中から人がいなくなってしまい、ほとんどの人が牢屋暮らしになってしまう。それも現実的ではない。さらに言うと、電波でB-CASカードを定期的に変更していたのを見つけるような仕組みができないかということもあるが、それは先述の通りにB-CASカードを書き換えても、さらに上書きされたら意味が無い。書き換えされたことは、先述の通り、放送局側に情報が戻るためのネット接続がなければ全く知られることがないからである。長く書いたら、要は、今回の問題は対応策が無いので、無理なのだ。

もう、B-CASという仕組みがダメなんじゃないだろうか?という時期に来ていると思う。B-CASを潰すと天下り先がなくなるので、総務省は潰せないという痛いところもある。

GIGAZINEの記事
http://gigazine.net/news/20120518-b-cas-card/

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