2013/09/09

富士山の世界遺産登録

日本を代表や象徴になるものとしては富士山が挙げられるだろう。その富士山をどうしても世界遺産に登録させたいという動きは数年前からあったのだが、ようやくその努力が報われて世界遺産に正式に登録されることになった。富士山という自然現象で出来上がった山のことだから、てっきり自然世界遺産として登録されているんだろうなとおもっていたら、なんと文化世界遺産として登録されたというニュースを聞いて、一体、富士山のどこが文化的な遺産になるのか?というのが全く判らなかった。

報道の状態を聞いていると、富士山を取り巻く宗教的・芸術的要素が実は非常に残っているようで、それを残すためのものだということだ。ということは、実際には富士山をテーマとして取り扱った作品集が世界遺産になるものであって、富士山本体には世界遺産の価値はないんじゃないのか?と勘ぐってしまった。が、世間の動きは名目はなんでもよくて、富士山が世界遺産にさえ登録されてしまえば、あとは何でも良いのだという動きになっているのが気になる。

ここ数年前から起こっている山登りブームにくわえて、日本最高峰の富士山が世界登録になったのであれば、もちろん、富士山に登山しようとする人たちが増えてくることだと思う。しかし、個人的には富士山は登るものではなく、下から眺めるものだと思っている。自分の足でわざわざ登頂して、富士山に登ったぁーという満足感はあるのだろうけど、富士山の山頂からは富士山を眺めることができず、単なる雲海しか見えない。そんなものは飛行機の上から毎回見ることができるわけで、なにが楽しくてあんなちょっと酸素の薄いところに行って、苦労して寝不足でヘロヘロにになりながら登り、それも平坦ではなく岩だらけのところを登るなんていうところに何が魅力があるのか全くわからん。それよりは遠いところから富士山の雄大で優美な姿を観るほうが、圧倒的に精神的にも思想的にも豊かになると思うのだが、このあたりの考え方は個人の主観の問題だし、生粋のマゾのひとであれば苦労して登山したという満足のほうを採ってもいいんじゃないのだろうか。

さて、理由はなんであれ富士山が世界遺産になったことによって、色々な問題がこれからは出てくることだろうと思うので、下記に書き出してみようと思う。

まずは、中国の土地バブルと資産運用の考え方により、富士山を含めた水源地域の土地を中国人が買い漁っていたというのがここ近年の動きとしてはある。富士山が単なる自然地域であった場合には、土地所有者が好き勝手にしていいのだろうが、世界遺産になったことにより、今後は指定された地域での開発はすべて許可が必要になってくる。つまり好き勝手にはなんにも開発ができないということと、すべての自然に生じる生産物についても搾取をすることはできないという状態になるわけだ。水源を押さえて、それを商売の道具に使おうとしていた中国人にとっては、大きな痛手になったことだろう。なにしろ、世界遺産になったことで、取得した地域での開発ができないということは、金のことしか考えていない中国人にとっては金のなる木を失ったことと同じであるために、持っている資産がパーになったことと等しい。もともと日本政府は、中国人が土地を搾取していたとしても、土地は動かないものであるから、中国に持って買えることができないのでどうでもいいことだと高笑いをしていたようなのだが、それはその通りの結果になったというわけである。

また、先述の通り、世界遺産になったことでアホな登山客がこれからは数倍の規模で登山をするために富士山にやってくることと思う。一部の登山者だけが楽しんでいて、富士山の自然を守るために努力していた人たちにとっては、自分が登って降りてこれることに感謝をするためも含めて、これまで登山道の整備やごみ収集に大変な労力をかけてきたことは有名な話である。登山者たちは暗黙の行動としてこの掃除と整備をするようになるのに、アホ登山者がこの中に入ってくることになると、それまでの富士山に対する整備がいっきに崩れてくるだろう。登山料を強制的に徴収するという話が出ているのだが、これに対して賛否両論があるのはわかる。だが、上記の通り、富士山の整備のためには、変な登山者がやってきて自然をぶっ壊すというのをさえぎることと、整備をするためにはそれなりに資金が必要であるために、入山料としては1人あたり1回あたり1万円以上の徴収をしたほうがいいと思う。ただ、大金を持っている中国人観光客は、おそらく1万円くらいの徴収料を払っても、おそらく登山道の路上でのポイ捨ては当然のように行うことだろう。彼らは「公の場は好き勝手にしていい」という考え方が自然に身に付いているからである。

そして一番の心配は、自然現象である。東日本大震災の影響で富士山近郊のマグマが活発化していることは事実で、富士山がいつ爆発するかわからないという状態になっている。直接の原因かどうかはわからないが、箱根で続く群発地震もそうだし、温泉の源泉が高くなってしまっているというのも怖いところだ。さて、その富士山が本当に爆発してしまった場合には、あの優美な形が崩れるということになるだろうが、そのときには世界遺産という施策がどうなるのかは不明である。

世界遺産になることで、観光客はわんさかやってくることになるだろう。それを当て込んで儲けようとする人たちがかなり居たはずだ。世界遺産登録の動きを活発化していたのは富士山愛好家のひとではなく、富士山から恩恵を被っていた商売人たちである。ただ、このひとたちも世界遺産になったことで誤算が生じた。結局、今回の世界遺産としては、地域として登録されてしまっているため、その地域で商売をしている場合でも、好き勝手に建設物を作ることができないということと、登録時の状態を保持しなければならないという決まりになっているために、商売をしているひとたちの建物も自前でメンテナンスを随時やっていかねばならないのである。風化してはいけないうことが一番面倒くさいことなのであるが、これに商売人たちは、観光客からむしりとった金でメンテナンスをやっていけるのかどうかは不明である。

それでも世界遺産になったからと騒いで良いのだろうか?一気におそらく世界遺産になったからといっても、その熱が冷めるんじゃないのだろうか?熱しやすくて冷えやすい日本人感情もあるが、おそらく「こんなはずじゃなかった世界遺産は・・」と悲鳴を上げる人たちも出てくるんじゃないのだろうか?これから世界遺産として登録されたのだから、まもっていかねばらないのが地元住民の義務でもある。

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