2008/06/21

オウム帝国の正体


一橋文哉の作品はどれも臨場感漂う文章の書き方をするので三文小説より楽しいのだが、「オウム帝国の正体」というものも、また素晴らしい。オウムの事件というと、松本サリン事件や地下鉄サリン事件くらいしか分からず、あとは、大学や駅前で「しょうーこー、しょうーこー、しょこしょこしょーこー♪」とあほ踊りをしていた奴らを思い出すくらいであるが、それは表向きの奴らの顔で、裏ではとても汚いことをしていたのが事実だ。マハポーシャという名前くらいは聞いたことがある人は多いと思うが、オウムがアキバに作っていたパソコンショップであり、これが激安で「洗脳されるかも」と言われながらも買っていたひとを何人も知っているが、それも単なる布教のための資金集めかというと、実はそうではなく、あれは単なる隠れ蓑だったことがあとで分かる。「血のイニシエーション」や「シャクティーパット」という意味不明な儀式の名前くらいはテレビでも散々出てきたので名前は聞いていたが、なんでそんなもので洗脳されるのか皆目検討がつかなかったのであるが、儀式の前に実は麻薬を使って信者を昏睡させて行っていたことが分かると、その麻薬はどこから手に入れたものか?というのが疑問になってくる。

一橋文哉のような作家がいるから事の真相がわかるのであって、どこの報道機関も事件や話題が盛り上がっていたときには報道するが、それ以降、ほとんどなにもオウムのことが言われなくなってしまった。コメンテーターも突っ込みをしたいところだが、突っ込むと自分の命が危うくなるためになかなかいえなかったのであるということも、この本を見ればよくわかる。

というのも、オウムは単に表向き宗教団体を装っていたのだが、各国の闇社会と手を結んで、世紀末騒乱を自らの手で起こそうと勝手に思い立って動いていた集団であることが分かる。オウムが表向きに動いてくれるので、それに便乗した暴力団とさらにその暴力団に群がる政治家がとても絡みついていて、利権を全員が享受していたことが本を読めば分かりやすく書いてある。利権なしに政治家は全く動くわけが無く、政治家が何か話をし始めたと言う事は、その裏に何かがあると考えればよいというルールを示してくれたものである。北朝鮮との関係について政府が触れるようになったときが、ちょうどオウムが北朝鮮経由で麻薬を大量に日本国内に持ち込んで暴力団経由で売りさばいていたときであることもわかるし、ロシアにオウムの主力がわたって、ソ連崩壊後コントロールが効かなくなって来た、武器の密輸や第3国への密売を行っていたのもオウムである。

オウムの幹部同士の軋轢や、各人の人格やオウムでの役割というのがとても分かりやすいので、ニュースや報道で見るよりはとても理解しやすい。化学実験もロシアが絡んでいるし、国松長官襲撃事件には北朝鮮が絡んでいるから、なかなか暴力団顔負けのバイオレンス集団であったことが分かる。

そんなオウムも今では「アレフ」なんていう意味不明な名前で活動しているのだが、基本的にはロシアで組織を握っていた「あぁいえば上佑」が仕切っているので、これも何をしでかすか分からない。信者を組織に食い止めるためには、信者を何かで脅すか信じさせるしかないという発想しかないので幼稚なのだが、所詮、オウムの成り立ちだって同じだったのである。あとは、宗教団体の上部組織になれば、いくらでも金銭と人間を自由に扱うことができるという優越感が出てくるものだ。創価学会だって、立正佼成会だって、まさしく原理は同じで、一般社会ではどうしても上になれないひとが肩書き欲しさで、意味不明な団体を大きくすることでそこを仕切っていることで自己満足していったというのと同じである。特に宗教団体の場合、税金を取られないというメリットがあるために、布施でもなんでもいいが金は集まってくるし、信者を奴隷のように扱うことができる王様気分は楽しかったのではないだろうか。

これからも経済が不安定になってくると、似たような宗教団体やそれに加入する馬鹿が一杯増えてくるので、オウムが極端だったにせよ、何をしでかすのか分からない人間の行動を知る上ではこの本は大変有益だと思う。

オウム帝国の正体
一橋 文哉 (著)
新潮文庫
ISBN-13: 978-4101426235

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