ビットコイン(BitCoin)がここのところ金融界では注目される金融商品の1つであったが、それを管理および取引機関とする世界最大の会社であるマウントゴックス社(MTGOX)は実は日本の渋谷に存在していたのだが、この会社が会社更生法を申請した。これが普通の会社であったり、普通の銀行であったのであれば、そうですかーで終わるところなのだが、取り扱っている商品がビットコインだったため、そのビットコインとは一体なんなのか、そしてリアルの世界で取引されている貨幣と互換性はあるのか、実態はなんなのか?という点で、一般的には疑問符がたくさん付くような商品だったために、そんな怪しいものを取り扱っているのであれば、別に会社更生法を申請したとしても、それで一体オチとしてどういう結論に落としたいわけ?と思う人もいるし、行政機関としても対応に苦慮する自体に陥ってしまった。
ビットコインは、ネット上の仮想的な貨幣であり、実世界では、鉱物の金と同じように、埋蔵量は決まっていることと、埋蔵化されているビットコインは暗号化されており、それをビットコインとして利用できるようにするには、非常に難しい復号処理をして「発掘」作業を行うという意味では、まさしく金山から金鉱脈を探して、金を掘り出していると言うのと同じであり、その発掘量があまり多くないために希少価値化していて、その価値に対しては、もともと実世界とネットの仮想空間上の世界は別々のものだったものを強引に取引できるようにしてしまったのがマウントゴックスのような取引機関である。全体の「埋蔵量」は」2400万ビットコインであり、それを全部発掘するにはまだまだとてつもない年月が必要になってくるものである。そして、その埋蔵量というのは、誰かが決めているというわけじゃなく、どこの世界にも属さず、どこの管理機関が指示しているというわけでもないのだ。したがって、普通の貨幣は、その国家の中央銀行がその国家の価値を量るための指標でもあるのだが、ビットコインは国家というわけに属さないために、仮想貨幣としての価値を独自に持てるという意味では世界共通貨幣といえるだろう。まさしく金が実貨幣と取引でき、その価値はその時勢にあわせて変わっていくのと全く同じである。
リアル通貨と交換できるのが取引所であるのだが、実際にビットコインを通用通貨として利用できる店舗や会社なんかも実は世界中に結構たくさん存在する。一番ビックリしたのは、給与をビットコインで支払っているという会社だ。ビットコインとして社員に渡される給与は同じ「量」なのだが、それを実生活で利用できるためにリアル通貨に変換するときに、ビットコインと例えば米ドルとの間の為替は、毎日のようにビットコインが強くなるようなレートになっているのであるため、同じビットコインの給与だったとしても、毎月給与が勝手に上がっているということになるのと同じだ。
今回会社更生法を申請したマウントゴックス社は、この右肩アガリになっているビットコインの世界で、所詮取引所として運営しているだけだったら、その管理費だけをユーザからふんだくっているだけで左団扇のような会社経営ができたはず。そうは黙って運営できなくなってしまった理由はというと、それは数年前からシステムの脆弱性を狙ったネットハッキングの攻撃によって、管理していた顧客の口座のすべての預金に該当する金額が抜き取られる事件が発覚してしまったのだ。被害総額はリアル貨幣価値でいうところの480億円分。マウントゴックス社が世界最大のビットコイン取引会社であったために攻撃者は一番狙っていたのだとは思う。全口座を全部抜き取られてしまったので、この会社に資産を保有していた人は、一瞬にしてパーになってしまった。口座に資産がなくなってしまたのであれば、本来の銀行だと、預金を補填する義務がある。ところが、このビットコインの世界は日本の金融管理とは全く関係ないところで管理されているところであるために、普通の日本の会社が会社更生法を申請したら、銀行の場合はある程度政府から補償を得たりすることもできるところを、政府としても仮想貨幣なのだから補償しようにも出来ないというオチになってしまっているわけである。これで一気に問題が表面化してしまったわけだ。
リアルの世界では、ほぼドルを世界通貨の基軸として、その為替レートに従って経済が廻っているのだが、そこにどこの国の制御も関わらないという第三勢力が入ってきたことによって、アメリカが市場をコントロールできると思っていた自体を脅かすことになってしまって苦々しく思っていたことなのだろう。なにしろ、世界をアメリカが握っているようなものだった経済が、アメリカの支配とは全く関係ない経済支配が出てくるということは脅威のなにものでもない。貨幣価値が低い通貨を発行している国にとっては、基軸がドルになるのか円になるのかユーロになるのかと同じようにビットコインになるかの違いだけだから、そういう国にとっては基軸が変わることは大して影響が無い。今回の攻撃としては、既存経済を脅かすことに違和感を感じる国家が一番怪しいと睨んでも良く、その国家の秘密警察を中心としたサイバーテロ対応機関が攻撃したのではないかという話が出てくることも分からなくも無い。
溜まったもんじゃないと思っているのは、この倒産したマウントゴックス社に口座を持ち、闘志目的に資産をぶん投げていた人たちだろう。投資した金額が短期間で100倍以上の価値に上がったビットコインの世界を、どこかのタイミングでは引き出そうとは思っていたことは間違いないのだろうが、下がる気配が一向にないような動きをしていた仮想貨幣に対して、もう良いから下ろそうと思っていたような人はほとんど居なかったのではないだろうか。まだまだ価値は上がると思っていた矢先に、いきなり口座は消滅するわ、資産はパーになってしまうわというオチになったことによって、全財産がいきなりなくなってしまったという悲しい人も出てきた。日本に会社があるからといって、この会社に日本人ばかりが預けていたかというと、そうでもない。むしろ外国人のほうが積極的にビットコインに投資をたくさんしていたひとたちが結構多い。テレビで何度も出てきたイギリス人は、2週間も自分の口座にアクセスが出来ない状態に非常に不安を感じて、マウントゴックスがある日本にまでやってきて、必死になって会社の前で「なんとかしろ!」と1人でシュプレッシコールを行っていたのだが、消滅してしまったものは残念ながら戻ってこない。
今回の出来事を「事件」と見た場合、かつて「円天」なんていうわけのわからない仮想通貨があって、一部の熱狂的な老人や主婦層が盛り上がっていたという事件があった。結果的には、その円天ワールドに参加していた人たち全部の資産が主宰者に持っていかれて、円天を主宰していたひとが逮捕されるという結果に終わったことがあった。今回出来事は、ある意味、この円天に似ているような気もする。ただし、仮想通貨として有効利用できている範囲が、円天の場合は日本国内だけだったが、ビットコインの場合は世界規模であるというところが違う。そして、ビットコインの取引所というのは、世界各地に会社が存在しているというところも違うのである。
さらにもう1つ、こういう仮想貨幣に近い空間で商取引をしていた仕組みがあったことお覚えている人はいるだろうか?かつて「アバター」という仮想空間上のキャラクターを使って、仮想空間内で商取引や生活などをする半リアル型シムシティーである「セカンドライフ」というものが流行っていた。あれもいつの間にか誰も何も騒がなくなってしまったものだったが、一時期、世界中でその利用について大騒ぎして、大量のリアル貨幣と、セカンドライフ内の貨幣へ変換されて、セカンドライフ内での商取引が馬鹿みたいに盛り上がっていた。究極の育てゲーをネットで接続された空間で、世界中のビジネスマンが本当の金を大量に投入して遊んでいたとしか思えないようなことだったのだが、あのときには、自分は全くのカヤの外で、そこで盛り上がっているアホたちののんきさと、必死さについて馬鹿馬鹿しいと思いながら様子を見ていたのを思い出した。円天のときも、セカンドライフのときも、今回のビットコインについても、見えないものに対して無理やり可視化して、そこに参加していることが最先端な事業であるというような風潮でいることが、参加していない目からみると、AKB48の握手会に熱狂的に参加している人たちを外部から冷めた目で見ていると馬鹿馬鹿シイと思っているのと同じに思えた。
そんなマウントゴックスのサイトは、もう閉鎖されてアクセスできない。マウントゴックスに口座を置いていたひとは、残念でした。お疲れ様でした。
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