2009/12/28

おんな浮世絵 紅之介参る

昔のテレビドラマや映画を久しぶりに観ると、その完成度の高さに惚れ惚れするというのに最近良く出くわす。最近、ちょっと個人的に嵌っているのが、「おんな浮世絵 紅之介参る! 」だ。日テレ系で1974年10月6日~1975年3月30日の半年間、日曜夜9時からの1時間枠で放映されたものであるが、実はリアルタイムでこのドラマを見たことはない。何度か、夕方の再放送の時間枠で見たことがあったが、その痛快さと、おいおい!と突っ込みを入れたくなるような箇所がいくつかあって、結構おもしろいドラマだなと思ったのである。

それが2007年にDVDとして発売したという話はチラッと聞いていたが、自分で買うまでも無いと思っていたし、そのうちネットでも流れるだろうとおもっていたところ、なんと友達が「買った・・・」という話を聞いたものだから、もう観るしかないと思い立ち、ここしばらくは頭の中に「紅の介」一色になっている。

このドラマは、江戸時代に町の蘭学医者として、貧しい人に無料で治療を行っていた奥山千絵が、夜は、私腹を肥やす悪党どもに立ち向かう女義賊・紅之介として活躍する痛快劇である。おんなねずみ小僧と怪傑ゾロを合わせたような話である。

また、出演している演者たちがすばらしい。主役の奥山千絵を演じるのは小川 眞由美。文学座出身の彼女らしいしっかりした演技もそうなのだが、太刀振る舞いのところが日舞をやっていたことを証明するほど、実に巧い。それと、副主役の「花川戸の夜太郎」を演じているのはあおい輝彦。とにかく若い。あと粋がいいし、勢いがある。岡っ引きの役柄としてはとてもすばらしいと思った。その手下の下っぴきを演じていたのが、漫才師の青空球児・好児だ。そう、昔はお正月の「爆笑ヒットパレード」には司会者として絶対君臨していた、あの「げろげーろ」でおなじみの2人である。これもまた息がぴったりだ。千絵先生の周りもすごい。まずは、診療所の助手をしている石部金吾役が三ツ木清隆で、薬の行商人の顔をしつつ、
町のなかの偵察や、夜には紅の介の手助けをする抜け忍・伊賀栗の源八の役をするのが井川比佐志とは、これまた渋い。

ドラマの中でたまに出てくるジングルがしばらく頭から離れなかったこともあったくらい、しばらくは紅の介の面白さに改めて脱帽した。が、何気に聞いていると、台詞回しがとても難しい言葉を使っていることに気づく。たとえば、男を門付(かどづけ)、女は鳥追(とりおい)と言ったりする箇所もある。いまだともう存在しないので、その言葉自体を聞いても「???」と思うのだろうが、江戸時代にはかなりたくさんの人がいたので、普通に使われていた言葉だ。ただし、現代だと差別用語につながると、うるさいどこかのヤクザまがいの団体が文句を言うため、現代の時代劇や江戸を舞台として人情物のセリフでは、絶対出てこない言葉だ。そういう言葉を聴けるというのも、昔のドラマのほうが良かったという表れなのだろうと思われる。なんでもかんでも日本語として成立している言葉を「ダメダメ」と禁止するのは、個人的には許せない。その身分の子孫の人たちにとっては嫌だとは言うのだろうが、実際に子孫の人はその言葉を言われる職業についているわけでもなんでもないのだから、無駄に「差別だ」と騒ぐほうがおかしいのだ。

番組がスタートするとき、小川真由美がしゃべる「昼の恨みを夜晴らす」というセリフはどうしても覚えられないが、口調としてはとても楽しいものである。

おんな浮世絵 紅之介参る!の批評サイト
http://www9.big.or.jp/~rokugen/ingen/beninosuke.html

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