2010/04/18

鄭和

明の大航海時代を作った鄭和は宦官として有名であったのだが、なぜ宦官である鄭和が航海に出ることができたのかとか、鄭和はいったいどうして宦官になったのかという基本的な情報というのが全く無かったので、なにか良い書物はないのかなとおもって手にしたのが、この本だ。だが、買って失敗した。そう思ったのが、これが小説だからということもあるのだが、話が飛びすぎて、わけがわからなくなってしまうからである。そんな事実はみんなもともと知っているよねというのを前提で書かれているようにしか思えないからだ。せっかく鄭和について書かれているので、永楽帝の庇護の下に大航海が開催されたいきさつが知りたかったのだが、これではぜんぜんわからない。読み進むうちに勝手に、永楽帝が好んで重用したというのが書かれるようになっているのだが、じゃ、なぜ重用したのかというのが全くわからない。

ちなみに、鄭和は、イスラム教徒であり、漢民族出身者ではない。さらにいうと、前王朝の元朝の高官の息子だったということだったというのがわかったのだが、そんな鬼の子をとったように、天敵に関係するようなガキんちょを自分の部下にするといういきさつが不明だ。宦官にされたのはわかる。先述の通り、前王朝に関する子供だからであるからだろう。が、どうやら通常の宦官たちとは違い、宦官になるための儀式として、完璧に性器と陰嚢を取られたということではなく、単に性器だけとられたらしい。だから、完璧な女性的な性格にはならなかったということだ。女性的な要素が出なかったから、中途半端に男性的な要素が残っているために、あんなタフな人間じゃないと達成することができなかったという大航海のチャレンジについてはできなかっただろうと思う。

ちなみに、大航海は第3代永楽帝のときに行われたのであるが、その永楽帝は皇帝になるまでは北京を中心とした、常に元の襲撃を受ける場所に駐屯していた。その永楽帝と鄭和の関係についてもよくわからない。そういうのを全部すっ飛ばして、鄭和が航海に乗り出すところだけをメインで書かれているので、中途半端に鄭和のことを知ってしまうという危険は有る。だから、船の旅が好きな人ならば、結構楽しいかもしれない。海の上でなにが起こったとか、滞在地でなにが起こったかというのが書かれているからである。冒険モノが好きな人はぜひどうぞ。歴史を勉強したい人にとっては物足らないものだろう。

ただ、この本、書かれている文字が結構大きい。本の厚さはちょっと有るので、読むのに時間が掛かるだろうなと思っていたのだが、ぜんぜん時間が掛からなかった。ただし、最初の内容を理解するのに、すこし時間が掛かるかもしれない。

ただ、鄭和は魅力的な人物だ。ヨーロッパの大航海時代よりも100年も前にすでに中国からアフリカまで政府の資金によって航海をしたのは、記録として鄭和が世界で初めてである。民間レベルでは、すでにイスラム商人がインドや東南アジアとの交易をしていたから、海を伝って航海をしていたのは当然だろう。だが、これはあくまでも民間人が商売をもとめて海を渡ったもので、歴史的に名を残すために実績を残したというものではないというものだ。陸路だと砂漠地帯をとおらねばならないし、海だと遭難してしまう危険もある。どちらも危険であるのだが、商売のためとはいえ、いずれかの方法で遠い世界と接続するような出来事を実施したのは恐れ多い。いまだと、飛行機でひとっ飛びのところだ。

鄭和 - 中国の大航海時代を築いた伝説の英雄 -
太佐 順 (著)
文庫: 437ページ
出版社: PHP研究所
発売日: 2007/11/1

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