2011/02/12

シンガポール財宝の行方(書籍)

シンガポールに住んでいる友達から来日時に貰った本がある。それも日本語。なにかなーとおもって手に取ってみたのが「シンガポール財宝の行方ー学徒兵のジャングル横穴探索ー」という本である。シンガポールが出てくる小説類というのは、実はあまりなく、現在ではシンガポールと言えば経済大国というイメージがあるだけで、それ以外の題材の書物を探すというのは結構難儀なのである。それもシンガポールからお土産(?)としてもらったのであれば、読まないわけにはいかない。

日本語が結構達者になったシンガポール人が読む日本語の書物としてはちょうどいい難度のものだとはおもうのだが、純日本人が読む書物としてはこれは脳みそをあまり使わず、空き時間にさらーっと読める本だとはいえよう。文字が大きいのである。

さて内容なのだが、著者の実体験をそのまま文章にしたものである。悪い言葉で言えば、老人の戯言を文字に残したものである。太平洋戦争で台湾・マニラと進出するにあたり、シンガポールまで侵略を犯した日本軍。その軍の組織に一兵隊として参加した人が、当時、日本軍がシンガポールを侵略して、シンガポールで奪取した財宝を隠すのに手伝ったことがどうしても現代になっても気になっており、その発掘をすることに苦労するというお話である。

著者いわく、略奪した財宝は、戦況悪化したあと日本軍の略奪・殺戮をしたときの証拠になるとしてジャングルの横穴に隠したということを主張している。そして、その横穴を掘る作業をする際に、スマトラ島パレンバンに駐屯していたのを命令でシンガポールに生かされ、横穴掘り作業に協力したとのこと。その作業をしたのは、戦時中はジャングルであり、どうしてこんなところに要塞みたいなのを作ろうとしているのか?という素朴の疑問から、これはもしかして要塞ではなく、なんらかの横穴つくりなのだというのを直感する。

戦後、シンガポールでのあの作業がどうしても思い出されてしまい、通称「山下財宝」と呼ばれるものを隠すための横穴だったんだと、それから考える。本当にそういう意味で掘られた穴なのかどうかは今となっては誰もわからず、日本政府としても軍時のときの証拠資料を喜んで出すとは言えないだろうから、単なる老人の戯言と言われてしまってはそのままだと思う。そして、何かにつけてシンガポールへ滞在し、そのたびに、当時ジャングルだった場所で横穴の場所を探そうとするのだが、現地の華人たちに協力を貰うのはなかなか難しい。というのも、既に山下財宝という金を狙って、何人もの華人たちが泥棒の戦利品を別の泥棒が分捕ろうとしようしたわけであり、そんな泥棒たちが自分達が成果が出なかったからといって、日本人がまたやってきて協力せよと言われても誰も協力なんかするわけが無い。日本政府の協力も無く、現地のシンガポール華人たちの協力も無いまま、個人が勝手にシンガポールの過去の場所を探すのは大変なことである。

さらに言うと、独立後のシンガポールは、その経済発展著しさに、土地改造を行っている。既に人間が住んでいるバラックみたいなところを一気に整備するより、まずはジャングルとして無価値になっていた場所に、人間がまともに住めるように整備をして準備をし、そこにバラック住まいの人たちを移住させようとしたわけである。そのために、ジャングルというジャングルがほとんど以前の形がなくなってしまっているというのが、現在のシンガポールを見ても分かることである。そんな状態のシンガポールで横穴を探すなんていうのは、無謀に等しい。見つかるわけが無い。土地開発をしている段階で、すでに横穴らしいものは全部壊されているに違いない。

ただ、共感する場面もある。軍参謀本部は、戦況が不利になっている事実を国民および軍隊全体に知らしめるのを隠し通すのが一番の仕事であり、最前線に行かないで机上の空論で、常に自己保身のために仕事をし、物資が不足しているのを知りながらも、そこは精神力のみでなんとかしろと強調し、国民には銃に対して竹やりで戦えと、馬鹿みたいなことを命令していた。このばかげた軍部の責任はとても大きいのだが、その軍部は卑怯の集まりだというのは同感できる。これは大きな会社に居るととても分かるのだが、嫌なことは末端社員に押し付け、自分達は赤絨毯にゴミひとつ落ちていない清潔感一杯で、それでもその絨毯の上を歩こうとはしない上の人たちが多く居る。それとかなり酷似しているから共感できるのだ。

アメリカとの戦争においても、兵器に格段の差があったのにも関わらず、リメンバー・日露戦争と、いつまでも日露戦争に勝てた自信だけで大国たちと戦ったことが馬鹿の元凶だと指摘する。これも納得だ。

戦争のことはどうでもいい。いろいろな人がいろいろな書物を書いているからである。この人は、本の題名として、山下財宝のありかを探すことと、その財宝自体を掘るため記録を書きたかったのだろうが、なぜか途中から戦争記ばかりのことと、軍部がいかに馬鹿だったかということばかりを書いている。結局、横穴のことは何度もシンガポールに行って調査をしているにも関わらず見つからず終い。読んでいる途中で「なんじゃ、これ?」と何度も思ったのは言うまでも無い。終わりが締まらない内容になっていることもそうなのだが、あとがきというのをあとがきらしくなく、本文の1部のように使っているところもかなり疑問だった。あとがきのところに、これまで協力してくれていた大手新聞社のシンガポール支局の職員のことが書かれており、その人が日本へ帰国した途端に全く協力しなくなったということに対して「世知辛い世の中になってしまった」で終わらせている。「んで?」とツッコミたくなるようなものである。


シンガポール財宝の行方 学徒兵のジャングル横穴探索
著者:東浦 美文
出版社: 文芸社
出版日:2010年2月15日

0 件のコメント: