2012/03/13

感じる科学(書籍)

さくら通信」を主宰している旅作家のさくら剛さんが、科学に関する書物を出版されたという話を聞いて、どういう内容なのかと早速手にとってみた。ご本人がポッドキャストの中で、旅に関することでは全くなく、趣向を変えた作品になっていると聞いてしまったら読みたくなってしまう。事前に他のさくらさんの著作物を読んでいれば良かったのだが、実は読んだことが無い。なので文章にしたときの表現趣向がどういう人なのかは全然想像ができなかったのだが、ポッドキャストの喋り方や思考を考えると、この人が科学なんていうものに対してどういう考えを持って説明をするのだろうか?というのはすごく期待してしまった。

最初は立ち読みから入ってみた。いろいろな人が「図解なんちゃら」とか「わかる!なんちゃら」とかというような科学系の書物を書いているのだが、どれもこれも専門的なことばかりを散りばめて、結果的には読んでいる人の脳みそが途中から付いていけず、結果的に何冊読んでもわからないというようなことに陥るのが科学系の書物の定番だったのだが、さくらさんの今回の書物をパラパラと読んで見た時に「これは汚いやり方だ!」と思った。「汚い」と表現したのは、誰もが本当はわかりやすい内容で書きたいときに、素人でもわかるような内容にする場合には、どうしても解りやすい例を持ってきて説明することになるが、その例がまたわかりにくいものになってしまって、本質がわかりにくい内容になってしまうのが定番だったところ、下品な例を持ってくることで、脳みそに自然なバリアを作ってしまう分野にも「これは楽しいものだ」というのを読者に植えつけさせることができたことが汚いと表現したまでである。たぶんいろいろな科学者が似たようなことをしようとおもったに違いない。ところが、そういう科学者たちは、自身の見栄や所属している業界からの圧力やバッシングを払いのける勇気がないために、下劣な例を内容にして表現するということはできない。ところが、どこにも科学的な分野に属していないさくらさんにとっては、「下品でなにが悪い?」と主張するような内容に仕上げられている。身近な、下品な話題を科学の例にすることで、実は事象や理論の本質を間違いなく突いているという点では「よくぞ、やってくれた!」と絶賛したい。

実は自分もいちおうは理系の人間だったし、学生のときには履修していたのに、全然頭に入らなかったのが相対性理論。3次元の関数で表現されている世界であれば、脳みその中ではチャカチャカと自分なりには想像できる能力はあると思っていたのだが、相対性理論について書かれているどの本を読んでもわけのわかんない公式やら言葉が出てきて、そこに時間要素がついてくることによって、なにがどう関係してくるのかというのが、ぼんやりとしてしか理解できず、確たる理解というのが全くできないでいた。いわゆる科学系の書物では「ブルーバックス」と呼ばれるシリーズなんか結構読んだはずなのに、内容が間違っていたり、表現が不足していることにより全然理解できない状態だったので、長年、「相対性理論っていうのは言葉だけでいいや」と内心諦めていた。ところが、この本を読んだことで、あっさり長年のモヤモヤとしたものが払拭されてしまったのには驚いた。やっぱり例がわかりやすい。時間要素という一番わかりにくいものをどのように扱えば良いのかがキーポイントになるのが相対性理論なのだが、ここを個人的にはポイントを押さえてくれているので、すんなり頭に入った。

そこでか!とツッコミを入れられても仕方ないのだが、最初の方に書かれている特殊相対性理論の章のところで「欲しい」と思ってしまったので、思わずそのままレジに行って購入。そのあとに述べられている一般相対性理論のことやその他の現象・理論についても熟読してしまう。どれもこれも、下品な例を使って説明しているのだが、別に無駄な例で亜もないし、雑談でもないし、理論を説明するための補足情報として使われているので、考え抜かれているなーと読みながら感心してしまった。よく日能研の広告で「□い頭を○くする」と宣伝されているのをみて、頭を柔らかくしないとダメだという宣伝にもなっているのだが、この本はまさしく柔らかい頭のままで難しいことが理解できるという有り難い本だとおもう。量子力学のところの章は、眼に見えないものをうまく表現できているもので圧巻だ。

大学生で実際に理論を勉強している人たちにはもちろんお勧めなのだが、できれば中学生や高校生のようなひとたちに読んで貰ったほうがいいと思う。小学生でもいいのだが、ちょっと早いかもしれない。でも、小学生のころだと、まだ科学も文学もあまり区別なくすんなり頭に入るような時期なのだから、本当は小学生のほうがいいかもしれないが、たとえとして出てくる例が、恋愛や下ネタのようなものが出てくるので、あまりこの例が理解できないために、全体がわからないというオチになりそうだとおもう。中学生・高校生なら多かれ少なかれ同感できるところが多々あるとおもうので、科学が嫌いになってくる時期でもあるのだが、読んでもらいたいところだろう。

京都大学の准教授のかたが内容を監修しているので間違ったことは記載されていない。しかし、いくら科学とはいえ、どこまでさくらさんの自己知識で書いているのかわからないのだが、ここまで砕けた内容にしたとしても、わかりやすくそして本質を押さえた書き方にしているのはある意味科学書物の革命だとは思う。

「感じる科学」
著者:さくら剛
出版社: サンクチュアリ出版
発売日: 2011/12/10
URL : 公式サイトはこちら

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