2012/10/28

日本橋・玉ゐ

日本橋界隈はどこを歩いても本当に落ち着く。なぜだろう、この感覚は。近代と伝統、発展と停滞、想像と保守。どの面をとっても、正反対ではない2つのポジティブとネガティブな表現を交差することができる街だからなんだろうなと思う。だから、たまに日本橋をふらふらするのが好きなのである。

いつの時間帯に行っても、常に店の前に長蛇の列ができていて、前から気になっている店がある。日本橋高島屋のすぐ裏にあるあなご料理店「玉ゐ」だ。あなご専門店であり、あなごに関する料理は多種多様にあるという店である。さすが江戸前、鰻じゃなくあなごをメインとする店があることが面白い。
夜に行くより、断然昼に行った方が人は少ないだろうと思って行ってみたのだが、全然当てがはずれた。昼間でもこの店は混んでいるのである。幸いにもこの日は小雨だったので、あまり外に待っている人はいなかった。が、傘を持って歩いてこなかった人が、雨の中で待っていられないのか、近くの店の軒下に立っている。どの人も、店の前に置かれている順番待ちを表す名前を記入したあとに立っているのだが、その順番待ちの数に耐えられなくて、名前を書いたのはいいが、そのまま高島屋に行って買い物でもしている人が多いようなのである。お店の人が「いますかー?」と冷静に呼んでも返事が無い場合には即効で次の人に飛ばされる。順番待ちのひとが呼ばれたあとに戻ってきた場合には、仕方なく最早で呼ばれることになるようだ。

うな重と同じように、あなごがお重に入った形で提供される「あなご箱めし」はあなごの大きさと数によって、小箱・中箱・大箱の3種類が存在する。デフォルトで焼き骨が入った茶漬け用出汁というのが勝手に付いてくる。今回は小箱を選んだのだが、隣りで食べていたサラリーマンは大箱を選んでいた。
中に入ると、テーブル席とカウンター席がある。テーブル席にいる客は、長居する気マンマンのひとが多いのか、意外に客の回転が悪い。カウンター席は入口席に近いからということもあるのだが、結構食べたらさっさと出てくる人が多いため、大抵、後から入店するようなお客さんはこのカウンター席のほうへ積極的に座らされる。

お重を注文すると、ゆず・わさび・白胡椒・ねぎの4種類の薬味と、最後にお茶漬けにして食べれるような出汁が提供される。まるで鰻の「ひつまぶし」を食べているような食べ方だが、あれと大体似ていると思って良いと思う。ただし、素材は鰻ではなくあなごである。だから、高級感を無理やり仕立てて鰻なみの質にしたように見えなくも無い。

個人的にはあなごを食べるには絶対一番あなご寿司にしたほうが美味いとおもうのだが、こういうお重にしてたべるのもなかなかおもしろい趣向だなということに気づいた。あの甘いタレを味わっているのかもしれないのだが、それでもあなごの味は分かる。ただ、残念ながら鰻のように、デブっとしたようなあなごは、あなごの性質上そんなものはありえないので、残念ながら鰻と同じようなものを追い求めてはいけない。あくまでもあなごはあなごなのである。しかし、そのあなごをいかに色々な味付けで食べようと試みているこの趣向が面白いではないか。

味はなにをしても所詮深みが出てこないあなごである。ただ、こういう店が今でも日本橋のど真ん中で客に媚を売らずに営業をしていることがすばらしいではないか。家屋も近代化せず、決して周りの風景に同調しませんという頑固なまでの雰囲気。たまに、こういう店にいくと、勝負するという気になってしまうのはなぜだろうなー。

あなご料理 玉ゐ 日本場所本店
URL : http://anago-tamai.com/
住所:東京都中央区日本橋 2-9-9
電話番号:03-3272-3227
営業時間:平日 11:00~14:30(L.O.14:00) 
           17:00~21:30(L.O.21:00)
     土・日・祝   11:30~15:30(L.O.15:00)
              16:30~21:00(L.O.20:30)

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