2014/03/08

TRANSIT(トランジット)22号 美しきスペイン

雑誌TRANSITをここしばらくよく買うようにしている。決して安いものじゃないのだが、特集として組まれている内容が、時には国だったり、時にはエリアだったりするのだが、その注目ポイントがこれまでよくある「地域あるある」本に書かれているものとは、ちょっと異なって、多元的文化論で論じているのはもちろんだが、豊富なカラー写真で掲載されているので、白黒写真だと何が映っているのか分からないというのがオチのところを、文章で分かりにくい表現を映像で補っているところが分かりやすい。カラー写真だからといっても、良い紙を使っているわけじゃないので、全体的には本の重さが軽いところもいい。

その中でもゴールデンウィークに行こうかなと思っていたスペインのことを特集しているときがあったので、早速スペイン編を買ってみた。スペインといっても、これが地域によって全然カラーが異なっていて、十把一絡げでスペインを語ることは本当はいけないということがよくわかった。もともとがスペインがあるイベリア半島は、ポルトガルを入れて5つの王国から分かれていて、それぞれで独特の文化を形成していたところのまま現代に至っているので、北部と南部でも違うし、スペイン中心部と沿岸部でも全然カラーが違うということが分かる。

スペインというと、どうしてもバルセロナとマドリードのことばっかりが書かれている本が多すぎるのもイヤなのだが、このTRANSITは満遍なく全スペインのことを記載している。それも誰かがそこを訪れたときに感じた紀行文という文章ではなく、事実を客観的に述べており、あとは街の様子や風景というのを写真という映像を使って、その写真を見た人が勝手に感じて考えてくれというような手法をしているからである。だから、余計な主観が入ってこないので、写真と補完的に記載されている文章を読めば、その土地に行きたくなったり、行った気になれるのがこのTRANSITだとおもう。

ゴールデンウィークの時にはアンダルシア地方に行こうと思っていた。いざ、アンダルシアに関係する本を探してみると、実はそんなに多くアンダルシアの本が刊行されているわけじゃないことに気づいた。地球の歩き方くらいしかまともに情報が載っていないのであれば、これは現地にいったときに結構大変だと思った。もちろん今ではネットがあるので、紀行ブログやいろいろなサイトを見れば情報がある程度載っているのは分かるのだが、やっぱりそれはその旅行者の主観が入ってくるので、良いものも悪く、悪いものも良いというような表現になっているかもしれないので、その見極めが難しい。TRANSITにもアンダルシアにフォーカスがあたった内容が載っており、これをみて、最初はグラナダくらいしか行かないでおこうと思ったが、セビーリャやコルドバにも行ってみたいと思ったのである。

文化論だけではなく、現在の政治・経済に関する情報も載っている。歴史事実は当然載っているのだが、現実の世界があるのは過去の事象を継承しているからという位置づけだとおもうような書きかたをしている。これによって、スペインがECになかなかな入れなかったことや、EUになってようやくEU加盟国になったのはいいが、東ヨーロッパの国々もEUに加盟したことによって、スペインの名は世界中に知られていても、いつまで経っても経済的には上向きにならず、貧民国になっているということもTRANSITによってわかった。それだけ分かりやすく説明がされている。あんまりガイドブックの中では、史蹟や観光地の情報は載っていても、存在背景について詳細に述べているところは他の雑誌にはない表現の仕方だろうと思う。

なお、TRANSITには過去に「イベリア半島」という特集の本も出ているので、こちらも参照して読むと良いと思う。

TRANSIT(トランジット)22号 美しきスペイン
出版社: 講談社
発売日: 2013/9/6
ページ数: 204ページ

TRANSIT(トランジット)3号 スペイン・ポルトガル特集 美しき太陽、追いかけて
出版社: 講談社
発売日: 2008/12/5
ページ数: 177ページ



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