通信インフラは、その国の根幹を左右するほど重要な役割を担っている。その国のなかで競争が生まれて、ユーザに安くて高品質のサービスが提供されるのは良いことだ。しかしながら、その競争に外国資本が入ってくることは、一般の業界と異なり、少々厄介な問題をはらんでいる。国内企業同士が通信インフラにおいてシェアの競争をしているのであれば、結果的にその国内で閉じた問題として片付けることが出来るのだが、外国資本が入っている企業がその競争の中に入ってきた場合、国内問題では片付けれらない。というのも、もしその競争業界の中で1位の企業が外国資本であった場合、外国資本の会社によって国内の通信網が牛耳られていることを意味する。ということは、外国資本は基本的に外国に企業の本拠地がある会社なのであるから、もし、その外国が敵対する外国であった場合、当然その企業に「おまえの企業があの国を牛耳っているのであれば、ネットワークがつかえないようにしろ」という政府の命令があった場合には、その企業は従うことになるだろう。なぜなら、その企業にとって、その企業の本拠地の政府は、その企業を如何様にでも制御できる力を持っている。政府が「嫌だ」といえば、その企業は今後企業活動が出来ない。従って、間接的に外国資本の企業に牛耳られてしまった国の人は、あるときから通信ができなくなってしまうなんていうことが発生する可能性がある。
何処の国でもそうなのだが、従来は国営企業として通信インフラを整備管理してきたところ、各国の通信キャリアが民営化し競争原理によって一般ユーザに高品質・低価格サービスを提供してきたのは時代の流れであるが、その流れに一定の規制を設けるようにしている。例えば、日本の場合、通信インフラを管轄している総務省(旧郵政省)が、国の根幹を他国に牛耳られないようにNTTの株を最低でも33%は保持するようにNTT法という企業法で明記され、それが巡視されている。普通の企業には会社法というのは存在しない。ところが、NTTは旧公社であったため、このような特殊の会社の法律が国会の承認の上で成立しているのである。例え、外国の超金持ち企業がNTTを乗っ取ろうとした場合でも、NTT株自体が基本的に高価であることお、発行株数が7800万株というとんでもない数になっているので、総務省が保有している株数以上を保有するのはかなり難しい。そういうハードルを高くすることで、日本のインフラを外国に乗っ取られないようにしているのである。
さて、今回の問題はイタリアの通信会社であるテレコムイタリアの話。この会社、昔からどうしようもない会社の1つで、蛸国の通信会社と何かをする場合でも「まだ時間があるじゃん」とか「そんなにきっちりしなくてもいいじゃん」という、イタリア人特有な対応をする会社として嫌がられていた。当然、国内通信としても「まぁ、使えるんだったらいいんじゃん?」という程度だし、日本では高速通信が当然のようにインフラを整備しているが、高速通信整備をしようという気がほとんど無い。公社だからねーという国民感情もあるのかもしれない。こんな会社だから、経営状況も全然よくない。携帯電話は世界的に重要な通信網になっているのはご承知のとおりで、一番の儲けがある部門である。これを売却してテレコムイタリアグループの再編を行おうとしたところ、政府から「待った」がかかってしまった。なんと売却先が、アメリカのニューズ・コーポレーションという「外国」の企業だったからである。政府が待った理由というのは、先述の通りで「他国に乗っ取られた形になるのが嫌だから」である。政府与党の一部は、政府がイタリアテレコムに持つ黄金株の拒否権を行使して、携帯電話事業売却を防ぐべきだという意見をだしているという報道が今回あった(日経新聞より)
通常の企業買収とは異なるところが通信会社の面倒くさいところである。
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