新年の落語会を見に新宿にある末広亭に行ってきた。お正月になると、挨拶代わりにいろいろな落語家や芸人が小時間で代わる代わる入れ替わって、簡単な挨拶や短い落語を行うので、落語初心者や普段テレビでは見ることができないひとたちを沢山見ることができるので、お正月休みに飽きてきた場合には、とてもおもしろい娯楽だと思う。以前1回だけ友達に誘われて行った時にとても面白かったので、また行ってみたいなとおもい、その友達を誘ってお正月の三が日の最後の日に行ってみた。
前回行ったときには、スケジュールも調べずにまずは行ってみようと思っていたところ、午前の部が始まったばかりで、午後の部にあわせて再度並びなおした経験があったから、行く前には時間を調べようと思い、ネットで調べていくことにした。午前中から行くより、午後からのほうがいい。午前中からだと朝早くから行かないといけないということも考えられるが、実は、1日3部に分かれている出し物のうち、午後の2部は、客は入れ替わることなく見ることができるからである。時間と心に余裕がある人は、午後の2つの部をまとめてみるという人も居るのだ。出演者によって考えようと思っていたのだが、もし楽しい人たちが出演するのであれば、午後の2つの部も見てしまおうと思っていたからである。ちなみに、午前から入場した場合には、午後の最初の部が始まるときには、全員退出しなければならないのだ。ちなみに、3部に分かれているそれぞれの開始時間は、午前11時、午後2時半、そして午後6時で、それぞれ3時間公演される。
前回の経験から、1時間くらい前に到着しておけば、かなり前のほうに座れるだろうとおもい待ち合わせをして末広亭に行ってみる。ところが、なんと既に長蛇の列が出来ており、自分達の前に50人くらい並んでいた。少し遅すぎたとここで後悔する。そう思うのは、末広亭の内部のつくりを説明したほうがいいだろう。歌舞伎や寄席の会場に足を運んだことのある人はわかるとおもうが、真ん中に映画館のような椅子が設けられており、そこに座れない場合には、両横に設けられた座敷席に座らされる。ここは座布団が用意されているだけなので、正座で見るかまたはあぐらを掻いて座らないといけないので、長時間見るには疲れる。さらに、その座敷席にも座られなかった場合には、二階席に通される。二階席からはかなり高座(舞台)を見るのは難しいのだ。だから、できるだけ1階の席でそれも椅子の席に座りたかったのだ。それでも座れない場合には、座敷席の後ろにある通路に立たされることになる。たかが落語というなかれとはこのことを指すと思ったのは、こんな正月から落語を聴きに来る人なんて少ないだろうと鷹を括っていたのだが、同じような正月の過ごし方をする人が多く、この新年落語を楽しみに見に来ている人が実は世の中多いことが分かったことである。自分達が並び始めた後、すぐに自分達の後ろにも長蛇の列が形成された。普段は人が少ない伊勢丹裏の裏路地に、馬券を買うような人たちみたいに長蛇の列ができたときには、道行く人たちも「一体何事?」と思ったに違いない。ちなみに、末広亭を伊勢丹から見てさらに進んでいくと、かの有名な新宿2丁目界隈に出くわす。言わずもがな、こちらはゲイの聖地であるため、新年からたくさんのゲイの人たちに「この人たちは一体何をならんでいるのかしらぁ~ん♪」という顔をされて見られる。こちらも、「あっ、おかま発見」「短髪マッチョ系のおにいさんたち、あんたら、ばればれだよ」と並んでいる人たちは全員思ったに違いないが、落語をみるひととゲイのランデブーがこの瞬間に行われるのだ。ちょっと新年早々面白い。
並んでいるとハンディーマイクを持った人が現れて「今日は午後の部でテレビ中継がはいますので、みなさま精一杯笑ってくださいー」と言っていた。その人の説明によると、NHKの新春寄席という番組が生中継で放映されるらしく、それをここ新宿末広亭で行われるとのこと。通常、誰がいつ登場するのかというのは、寄席の入り口に順番がかかれているのであるが、この日に限って言えば、テレビ中継のために出番を大きく変更したようである。テレビ中継で映されるというのであれば、それなりに知名度が高い人が中継に使われるのだろうと思ってかなり期待大と思っていたのだが、実際に切符売り場に掲載されている予定表を見ると、あまりにもがっかりである。ちなみにテレビ中継で使われた人たちは以下のとおり。
・テツandトモ
・ケーシー高峰
・翁家喜楽
・三遊亭小遊三
いまどき「テツandトモ」?と思ったのにがっかりきた。まだお堅いNHKでは彼らは人気がある人たちに掲げられているのだろうか?ケーシー高峰はテレビでは見たことがあるが、あまり最近テレビで見ないのでじっくりと演技をみてみたいとは思っていたから、ちょっと楽しみだった。小遊三は「笑点」に出ている人なのでもちろん知っている。もう一人の人は見たことが無いので、想像が付かない。
入場料を払って入場してみると、もう既に恐れていたことが分かった。なんと1階の椅子席は全部埋まっていた。1つだけは空いていますーとは言っていたが、こちらは1人ではないので、座れない。仕方なく、入り口右側の座敷席に陣取る。すぐ隣には、テレビ中継用のミキサーの人たちが準備をしていた。2時半からテレビが生放送でやるらしいのだが、末広亭だけが中継されるのではなく、他に3箇所との多元中継らしい。第2部もある程度出し物が出てしまっていたのだが、その間で中座されて、テレビ中継に切り替わる。切り替わる前に、NHKの関係者の人が「あと5分でテレビ中継が入ります。お化粧をする人は今のうちにおこなってくださいー」と客に向かって説明が入る。この説明で会場がドッと湧いたのは言うまでも無い。掴みはOKである。中継が入ると、なんと会場の説明をテレビの視聴者に説明するために、春風亭昇太と中川翔子が高座の隣に陣取り説明を行い始めた。なんで中川翔子なんだ!というのはここでは不思議なのだが、うまくそこは昇太がフォローして高座へ場を移す。
「テツandトモ」は、一斉風靡した「なんでだろう~」を中心に5分くらいのネタを一生懸命行う。しかし、なんだかつまらない。客の反応もいまいちである。ケーシー高峰は本人が医師の免許を持っているだけあり、かなり医学の知識はある。ただ、小さい頃見た記憶だと、結構お下劣ねたを披露して会場を笑わせるというようなことをしている芸人だとおもっていたのだが、今回はそうではなかった。ただ、時事ネタと医学ネタと会場の客いじりを一緒にやっているところは、さすがにベテラン芸人だと感心した。大いに笑わせた貰った。初めて見た「翁家喜楽」は、簡単に言うと海老一染の助・染め太郎のような芸を行うような人だった。これは長年の芸を見せているという意味で素晴らしい。新春ネタとしておめでたい。トリはおなじみの「三遊亭小遊三」。何を出し物として行うのかなと思っていたら、落語では有名な「ん廻し」。田楽を食べようという話ではあるが、「ん」の数だけ食べられるという典型的な落語。短時間で客を掴み、同じようなオチを複数回使うので、落語初心者でも笑い易いネタである。さすがベテラン。規定の時間内にぴたっと納めたのは凄い腕だ。これらの単独芸人で終わればよかったのだが、最悪なのはこの後だった。なんと司会者の昇太としょこタンを含めて全員で「大喜利」が始まったことだ。これがめちゃめちゃ面白くない。いわゆる「あいうえお作文」を題材にしていたのだが、オチでなんとかケーシー高峰がフォローをするが、会場が静まり返ってしまうくらい、「テツandトモ」の廻し方と昇太の司会が無様だった。会場に来ている人たちも「速く終わらないかな」と思ったに違いない。
なお、中継が終わった後のほかの落語や出し物についてはとても面白かった。漫才のWモアモアなんかは、爺さんたちのペアなのだが、そのボケぶりがとても面白く前からちょっと注目していたのを生で見られて、ちょっと感動。司会で失敗した昇太は、大喜利でおおはずれだったのを失敗だったとわかったようで、自分の出番のときには半ばやけくそのように、落語らしい落語はせず、やかましいだけで終わったし、「隣の晩御飯」でおなじみの桂米助が出てきた時には、「あーっ、晩御飯!」と会場から言われる始末で少し笑えた。となりの晩御飯の収録暴露ネタを披露していたので、客のつかみはかなり良く、話もとてもよくまとまっていたのでとても上手いとおもった。あのひと、やっぱり落語が出来たんだと改めて感心する。紙切りネタの林家今丸という爺さんが出てきたときには、近くにいた子どもをネタに、器用に紙を切って芸を見せていたのは見事。締めは、歌丸が出てきて、びしっと決め「今年もよろしく」で大弾幕が降りる。
それぞれの芸の寸評を書こうと思ったのだが、なにせ総勢20名以上が出てくるので、それを全部書くのは大変だ。落語は少しとっつき難いというイメージがあるのだが、とっつき難いかそうではないかは、落語を演じる人の技だとおもう。落語だけではなく、合間合間に手品などの色物があるのも寄席の面白いところだ。是非、みなさんも行ってみると楽しいと思う。
当日の出演者は以下のとおり
新宿末広亭 http://www.suehirotei.com/
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