2007/03/22

台湾語辞典


日本が台湾統治を行っていた時代に、現地の台湾人との交流を積極的に行おうとした日本政府の監修の元に作られた偉大な台湾語辞典が戦前に作られていたのは知っていたが、それからというもの、ほとんど台湾語の需要というのが無視され続けていたために、台湾語の辞書というものは皆目見たことが無かった。ただ、戦前に作られた台湾語辞典(臺日大辭典)は、学術的にはとても有益であり、その内容の豊富さには脱帽するのは認めるが、一般的な家庭で使う辞書ということになると、とてもじゃないが手に入り難いものだとおもう。いまでも売られているが、さすがに48000円もする辞書を気軽に買うということはまずない。よっぽどの台湾語オタクか台湾語学習者じゃないと、そんなものは要らないのだ。

ここに東方書店から、ようやくという言葉が似合う辞書が登場した。それが「東方台湾語辞典」である。この東方書店というのは、なかなか面白い企画をたまに行って、辞書も通常の中国語のほかに、一般家庭でも使えるような広東語の辞書も出していたりする。職場が近いこともあって、たまにここの書店に行くのだが、中国・台湾・華人文化に関する本を購入したい場合には、ここにいったら、すぐに見つかる。そんなに大きい店ではないので、店員に言えばすぐに見つけてくれるから嬉しい。

さてその台湾語辞典だが、まず台湾語をどのように表記しているのかというのがとても気になった。なにしろ、台湾語というのは、文字が無い言語として今でも使われている言語の代表格なのであるからだ。現地台湾では、やはり台湾語の表記をする際に、頭を悩ましているらしいのだが、日本語の平仮名に該当する「台湾式ピンイン」で表記している場合がある。ただ、現代台湾人は現代中国語も話すので、文字表記として台湾語で書くことはほとんどない。ごく珠に、ピンイン表記をして「お茶目さ」を演出している場合があるが、それでも一般的には中国語で書くものだとおもっている。台湾語は現在の台湾人の75%以上を構成する本省人が使っている生活言語であるのは言うまでも無い。ただ、本省人も学習として中国語で教育を受けているので、当然表向きは中国語を第1言語として使っている。が、その本省人は、家や友達と話をするときには台湾語を使っているということが多い。台湾語のほうが本性を剥き出しにして話ができるから便利だーとはよく聞く話だ。逆にいうと、20%くらいの外省人は台湾語が話せない、または、台湾語は聞けるが話せないというひとがほとんどである。育った環境によって台湾語を操れるかどうかということに依存する。台北に居ると、それほど台湾語を聞くことは無いが、台北を少しでも離れると、そこはもうほとんど台湾語天国といっていいほど、普通に台湾語が耳に入ってくる。台湾語は全然理解できないが、さすがに中国語と違うなぁというのは分かる。

台湾人は結構日本語を話せる人・話そうとする人が多い場所なので、日本人が台湾を旅行する際には、英語さえも使わないでも旅行ができるというとても便利な場所だ。台北に限らず、実は南部に行けばいくほど日本語を操れる人が実に多いことか分かる。台湾を日本が以前統治していたことが原因ではあるが、彼らにとって日本語というのは「懐かしい言語」と思っているようで、半分「日本語を使えるのを自慢したい」というのも一理あるようだ。だから、逆に台湾語を現地でちょっとでも使うと、相手はとても吃驚する。どこで覚えた!?とか、なんで知っている?とか、その反応は、アメリカ人のつまらない芸人の反応くらい激しい。単に「多謝」と言うだけでも、店のおばちゃんがサービスしてくれたりするのは面白い。やっぱりそれだけ日本人が台湾語を使うことに違和感があるのだろうか?つまり、サルが人間並みに箸を使ってご飯を食べているように見えるのだろうか?

今回の台湾語辞典は偉大なる臺日大辭典に比べると13500語しかないので物足りないなと思うかもしれないが、だいたいの言葉はここで網羅されていると思うので、台湾語を知るためには十分だと思う。ただ、やっぱりあまり使われない言語であるし、需要が少ないからということだろうが、辞書に6000円も出すのは、英語の辞書を気軽に買えるのとは違うために、少し手が出しにくい。しかし、これまで一般人が手に入る台湾語のための語学本に比べると、断然とその内容は豊富なので、手にとって見てもらいたい。意外に、日本語と共通する言い回しや、発音が沢山あることに気付くはずだ。

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