2007/09/16
古典落語
最近、若い女性を中心に落語が再燃しているようである。落語は江戸時代から続く、「喋り」の娯楽であるのは誰もが知っていること。そして、クラシック音楽と同じように、話の内容は同じでも、話し手によって全然内容が異なったように思えたり、その話の中に入り込むことが出来るという違いはあるから面白い。落語家によって、その味が異なるので、いまだに人気がある娯楽の一つなのだろうと思われる。
ただ、いま若い女性に人気になったのは、たぶん、TOKIOの長瀬と国分が演じたテレビドラマを見て初めて落語というジャンルを知ったという人が多いのではないかと思われる。立川談志が作った「笑点」は長寿番組ではあるが、あれはほとんど落語を演じておらず、いまでは大喜利ばかりがメインになってしまった詰まらない番組に成っているが、まぁ、たまに落語を演じる場合もあるし、江戸落語の名手が揃っているので、名前は知っているという人は多いのではないだろうか。
さて、肝心の落語の内容というと、有名な「時そば」や「目黒のさんま」くらいは知っている人は居ても、それ以外の古典落語については知らないひとは多いのではないか。これぞ定番という落語の話は、「落語の基礎」なる本はたくさんあるので、それで概要を知ればいいと思うのだが、じっくり内容について知りたいと思ったときには、意外にそれを知るための本が少ない。そういう中で、この本は、数少ない、余計な解説なしに、純粋に話ばかりを全文掲載している本だと思う。本としては文庫本ではあるが、これは永久的に保存してもっていてもいいと思う。古典落語というのは、新作落語がたくさん出来たとしても、基本的には無くなることがない題材であるからだ。また、お正月のときに、新宿・末広亭のお披露目講話の際、この古典落語から短い部分だけ抜き取って紹介する人もいるので、知っていて損は無いとおもわれる。
個人的に好きな古典落語は「千早ふる」と「金明竹」だ。「千早ふる」は百人一首の内容を紹介する話だが、これで百人一首に興味が出てきた人も多いと思う。それに、「ち」で始まる句は、百人一首の中で1首しかないので、かるたをとるときには、必須で覚える札であるのは言うまでも無い。まぁ、百人一首の事を知らなくても、無知な住人と、なんでも知っていると思わせている、知ったかぶりの師匠との間の言葉の掛け合いが見事だ。もうひとつの「金明竹」は、ちょっと抜けている丁稚が主人の留守中にやってきた客に対してうまく対応ができず、その都度主人から教わった話の内容を、次にきた客に対して全然関係ないのに使ってしまうという面白さと、途中でやってきた大阪からの使いのひとが、関西弁でわめきちらして用件を伝えて帰るというのを、江戸の人間から見たら漫才にしか見えないというやりとりのところが面白い。
「千早ふる」は実際に聞いたことがあるのだが、「金明竹」を実際には聞いたことが無い。たぶん、早口で大阪・船場言葉で用件を伝えるところをうまく表現できる東京の落語家が少ないからなのだと思われる。でも、これをうまく演じることが出来る人がいたら楽しいだろうな-と思う。話はわかってもなかなかあの長いセリフを覚えるのは至難の業なのだろう。
他にもたくさん定番中の定番の話が載っているので、落語に興味がある人、または落語通のひとでも十分に楽しめる本だと思う。余計な解説が無いところが良い。解説は別の解説本を読んで勉強すればいいのだから。
-掲載内容-
(上巻)
・明烏
・三人旅
・厩火事
・千早振る
・そこつ長屋
・三方一両損
・たがや
・居残り佐平次
・目黒のさんま
・小言幸兵衛
・道具屋
・時そば
・芝浜
・寿限無
・三枚起請
・素徳院
・野ざらし
・青菜
・らくだ
・がまの油
・子別れ
(下巻)
・まんじゅうこわい
・酢豆腐
・代脈
・船徳
・大工調べ
・宮戸川
・妾馬
・品川心中
・富久
・千両みかん
・たちぎれ
・茶の湯
・小言念仏
・禁酒番屋
・百川
・金明竹
・花見の仇うち
・山崎屋
・茗荷宿屋
古典落語 / 古典落語(続)
興津 要 編
講談社学術文庫
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