2009/07/26

沖縄・奄美「島旅」紀行


沖縄の各諸島と奄美諸島は、はっきりいって日本のなかにある外国そのものだ。日本固有の島でありながら、日本本土の歴史と文化が全く異なるところに、多くの観光客が魅了されているのだろうと思う。ところが沖縄や奄美に関する文化的な書物というのは、ほとんど見たことが無い。ほとんどの書物は、どこどこの店が美味いとか、観光名所に関する記述は書いているが、沖縄や奄美が持つ独特の雰囲気がなぜ形成されたのかとか、地元の人たちが生活するうえで考えていることなどは、皆無に等しいのだと思う。

本著「沖縄・奄美《島旅》紀行」は、離島に関するジャーナリストでもある著者が沖縄と奄美の各島について、観光ガイドとは異なる視点で紹介しているところはありがたい。観光ガイドとしてこの本を読んでも、地図も適当だし、おいしい店を列挙しているわけでもないので、使い物にならない事は先に言っておきたい。

そもそも、題名に「沖縄・奄美」と2つの列島を列挙していること自体がなぜ?とおもわれるとおもうが、それは奄美が鹿児島県に現在は属しているためであり、諸島だけを本当は紹介したいと考えたいときには、この県の問題が邪魔になる。琉球王国時代には奄美も含めて実は琉球だったのに、薩摩藩の支配に伴い、奄美が薩摩藩に割譲されたことから、いちいち沖縄・奄美なんていう面倒くさい表記になったことは言うまでも無い。

紹介されている内容として、一番遠い与那国島からというところもなかなか面白い。本当なら沖縄本島から紹介したくなるのだが、沖縄本島ほど他のガイドでなんども紹介されているものはないわけで、そんなところにフォーカスを当てて、ページ数を稼ぐより、ほとんど表に出てこないような島をできるだけ紹介しているところが良い。

現地に実際に足を運んで、現地の人の声を紹介したり、現地の人なら当然であるということを紹介しているところも、読み物としては面白い。記事にはカラー写真が全くないが、いくつかの白黒写真が掲載されている。ただ、それだけでも行きたくなるのだが、文章の書き方が、まるで自分がその場所にいて、実際の光景を見ているような状態を想像させてくれる内容なので、どこの島にも行ってみたいという思いを興させてくれる。

この中で行ってみたいなぁーとおもった個人的な感想の島は、次のとおりだ。

・池間島(宮古島から橋で繋がっている)
・奄美大島
・加計呂間島
・竹富島

どこの島も、島名だけ聞くと聞いた事があるというところなのだろうが、奄美大島以外はどこも行くのにとても面倒くさいため、国内旅行としていったとしても、結構日数と費用がないと気軽には行けない場所だと思う。それが面倒なので、海外に行くという人も多いのだと思うのだが、本当なら、同じ日本国内なので、日本のこのような離島を知ってこそ、日本を知ったと言えるのではないだろうか。日本もまだまだ捨てたもんじゃないといえる場所が、このような島にはまだあるということだ。

時間と金をすっかり都会に忘れて、のんびりと上記の島で気ままに暮らせるほどの余裕ができれば、一度は訪れてみたいところだと思う。そのときには、一般ガイドと一緒にこの本を持っていき、著者と同じような生活と視点で島を見てみたいと思う。

どの島も特にこれといった名物があったりするわけでもない。そこで生活している人・モノ・風景すべてが観光名物となるようなものであるため、何かを探すためにこれらの島にいくのとは違う考え方で島への訪問をするべきである。どうしても、南の島だと海に入ってスキューバをしたり海水浴をしたりするのも1つだが、そういうのも止めて、ぼーっとするのもよし、島の人と1日会話をしたりするのもよしだとおもう。

ただ、なかなか島の人たちの懐に入り込むのは難しいだろう。いくら南の島のひとたちは、フレンドリーだといっても、一元さんを快く迎えるかどうかは、その人の器量と訪問者の考え方次第だと思う。

池間島なんて、何もないところの代表みたいなものだが、その島を囲む海の透明度はとても高いため、この海を見ているだけでいいじゃないかと思うだろう。それを見ながらコーヒーを飲んで、ぽかーんとしてみたいところだ。

奄美大島は、言語的にも文化的にも沖縄とは違う文化を持っているため、前からいってみたいところであった。ただ、あまり奄美について書かれている本を見たことが無いので、今回の本を皮切りに、少し奄美について研究したいと思う。そういうきっかけを作ってくれたこの本に感謝だ。

加計呂間島と竹富島については、いろいろなメディアに取り上げられているので、毛説明は要らないだろう。あと、ちょっと興味があるのは、南大東島だ。だいたいどうやっていけばいいのかわからないし、そんなところに住みついた経緯についても面白い。沖縄のこんなところと小笠原諸島の方言がほとんど同じという事実も面白い。

ただ、何度も言うが、こういう離島に行くには金が本当にかかる。金がかかるから、観光客がきてもたくさんではないので、島のよさが残っているのだろう。

沖縄・奄美《島旅》紀行
斉藤 潤 著
光文社新書
2005年7月1日出版

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