2009/07/26
カルチャーショック・マレーシア人
マレーシアいう国は名前は知っていても、意外にどういう国なのかというのを知っている人は少ないと思う。東南アジアに存在する国であり、ボルネオ島のジャングルのようなところはフォーカスとして当たっているのだが、マレー半島に関しては良く分からない。もちろん、マレーシアに住んでいる人のことなんかまるっきり日本に伝わってこないし、周りにマレーシア人というのを見たことが無いのも事実。しかし、シンガポールに接する国であり、シンガポールと元々は同じ国であったことは知っていても、マレーシアのことをほとんど知らないことを最近知った。
マレーシアに関する本は本当に少ない。本屋に行って見ると、本当に少ないことが分かる。何も資源が無いシンガポールは観光地化に成功したためか、シンガポールのガイドやシンガポールに旅行した旅行記の本は存在する。だいたいがツマラナイ内容になっているのは仕方が無いとしても、出版されているということは、それだけ一般日本人には注目している人が居るから出版して売れているのであると思う。ところがマレーシアに関する書物は、地球の歩き方のような通常ガイドブック以外はほとんど見たことが無い。
今回紹介している本は、マレーシアに移り住んだイギリス人が、マレーシアに住んでみて接することで理解したマレーシアの生活・文化・風習・政治・制度などについてまとめた本である。マレーシアは人種の坩堝であるため、マレーシア人が書くと、どうしても出身母体の人種からみた国家観を書いてしまうため、偏った見方で自分の国を述べてしまうことになるために、本当にそうなのかな-と思うのだが、マレーシアとは全く関係ない人が第三者の目で書いた本なので、ある程度は公平に目で眺めることができる。しかし、先に言っておくと、今回の本もイギリス人が書いているために、どうしてもイギリス国教会の眼から見た、つまりキリスト教徒としての人間から見たマレーシアという国を見ているため、ある程度キリスト教徒の感覚でのモノの味方をどう捕らえるかという問題は有る。しかし、その宗教的な側面を除けは、結構公平にものを見ているなという気がした。
マレーシアははっきり言ってイスラム国家である。そのイスラム国家に、マレー人、中国系、インド系が混在して住んでいる。マジョリティはイスラム教徒のマレー人であるため、マレー人の風習がこの国を形成しているのは当然である。しかし、経済を握っているのは中国系の人間であることは言うまでも無い。著者はマジョリティのマレー人の文化を中心に述べているため、よく知らないイスラムの文化も知ることができる。かつ、著者がマレーシアに移り住んでから感じたことなので、マレーシアで生活するための知恵や住居に関すること、それと隣近所のマレーシア人との間で考えておかねばならないことが記載されているので、生活しようとする人にとっても有益な情報だと思う。
観光客にとって有益な、どこの店は美味いとか、どこの店で買物をしたほうがいいというような情報は皆無である。そんなのは地球の歩き方のようなもっと特化したガイドブックを見ればいいのであって、マレーシア全体を総括してマレーシアとはこういう国であるというのを紹介しているため、どうしても狭い地域の詳細情報を記載するまでは紙面のスペース上無理なのだと思う。ただ、これを見て分かったのは、地方に行けばいくほどイスラム色強くなるため、仏教やキリスト教の世界にいる人間から見ると「なんじゃ、それ?」というような事象に出くわすことが多いだろうという警告は、十分に読む価値はあると思う。知っているのと知らないでいるのでは、だいぶ生活や旅行をする際に対応が違うからだ。
著者のいい所は、自分がマレーシアで感じたことを並べ、それに対して良し悪しと判断していないことである。郷に入れば郷に従えであり、当地の風習や文化は当地であるために生まれてそれが形成されているわけだから、それがダメということは他人種が否定することは許されないし、してはいけないことであることを良く分かっている。本人はキリスト教徒であるため、キリスト教徒から見たイスラムの世界とマレーの文化については、だいぶなれるのに苦労したのだとおもうのだが、その苦労に関して「どうやったら克服できるか」とか「こういうモノの味方をすれば気が楽になる」というような自身の体験をベースに記載しているので、マレーシア人が読んでも違和感や嫌悪感は出てこないだろう。
マレーシアに今後は旅行としていく人も多くなると思うのだが、ショッピングばかりに眼が行くのではなく、こういう文化的な要素を持って旅行をするともっと楽しくなると思うし、現地にせっかく行くのであれば体験して欲しいと思うし、その際の参考資料として事前に本著を読むのはいいと思う。
マレーシア人 (カルチャーショック)
Heidi Munan (原著), 増永 豪男 (翻訳)
出版社: 河出書房新社
出版日: 1998年4月20日
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