湯西川温泉に何かを求めて行くというのであれば、それは湯西川温泉にいくべきではない。なにもないから湯西川温泉なのだ。そのなかでもさらに平の高房のある場所は、ど田舎にあるため、滞在中はここではのんびり部屋でうだうだしているか、温泉に何度も入って湯治の気分に浸るかをするべきである。そんなことをするためであれば、ここは最高のロケーションである。携帯の電波もドコモなら辛うじてつながるが、ソフトバンクならまず圏外の場所だ。誰からも干渉されずに、ボーっとしたいというのであれば、この旅館に詰まるべきだろう。
いま、旅館と書いたのだが、旅館というにはもっと豪華な感じがする場所だとおもう。建物自体は昭和50年から使われているといわれているのだが、そんな年期が入っているようには建物から見られなかった。去年やその前くらいに建てたのではないか?というくらいの新鮮さが建物すべての中に感じられた。この旅館は、もともと保有していた山から材木を卸す業者だったところ、山道の途中でドライブインを作ったことから温泉旅館に発展した場所である。それも「日本の秘湯を守る会」に属している、ちょっといい場所なのだ。だいたい自ら「秘湯」なんていっていること自体が恐れ多い気もするのだが、ここは確かに秘湯だと考えてもいいと思う。相当の山の中だからだ。しかし、道路があるので車があれば問題なく来ることは可能だ。車で来ない人は、路線バスの湯西川温泉の終点バス停に到着したら旅館に電話をして、迎えに来させれば良い。できれば、バスに乗る前に、たとえば、湯西川温泉駅を出発する前くらいに旅館に電話して、何時のバスで到着するからといえば、それにあわせて迎えが着てくれるのだ。親切にもワゴン車で迎えに来てくれるから心配ない。
部屋数はそんなに多くない。多くないから細かいところまで気配りが行き届いているといえるだろう。トイレとお風呂がついていない部屋と、トイレと室内浴室がついているタイプの2種類に大きく分けられる。また、団体旅行者でも泊まれるように、本館と離れという二パターンの棟があるため、やかましい団体旅行者のそばで泊まりたくないというひとたちにとってはとてもありがたいところである。
いつもだいたい決まっている部屋に通されるのだが、今回も同じ本館二階の一番端の部屋に通された。ここの部屋は10畳くらいの部屋なので、のんびり泊まることができる。ただし、ここには高速LAN回線も引いていなければ、先端的なものは何もない。あくまでもここは旅館であり、秘境の地なのである。
部屋に入ると、典型的な旅館のとおりに、部屋の真ん中に大きな御膳があり、それに座椅子がある。お膳の上には、ウェルカムドリンクならぬ、茶菓子が用意されているところなんかは、もう典型的なおもてなしである。ご飯は決まった時間に、すべての客と一緒になって食べる。それも各人に囲炉裏があるという趣向だから、おもしろい。こういう旅館は外国人であれば、もっと楽しめると思うのだが、できれば来てほしくない。こういうところこそ日本人だけで楽しみたいものである。料理は山の幸がメインで、まぐろのような海にしか採れないようなものはまず出さないところもいい。定型的な平家落ち武者村の料理を提供するのが目的であるところがぶれていないのがいい。事前に言っていれば、コース料理を提供してくれることもできるので、鹿の肉や熊の肉を食べたいといえば、事前予約をしておきたい。その日にいっても無理である。
1日目の夕食2日目の朝食2日目の夕食3日目の朝食
それと、食べるときには女将による挨拶がある。これはここの慣わしなのだろう。おもてなしという意味では、ぜひ女将がどういうひとなのかは知っておきたいところだろう。残念ながら大女将は、体の体調が悪く表にはなかなか出てこない。いまは若女将が仕切っている。以前からここにお世話になっているので、毎度ここにお邪魔する際に、大女将のことが気になって仕方がなかったのだが、今回は運良く、大女将の元気な姿を見ることができた。どうやら、以前より体調がよくなって、元来の「お客様の前に立ちたい」という気持ちだけはどうしても捨てきれず、朝の少しの時間だけお土産屋に立つことにしているのだそうだ。しばらく姿を見なかったので、てっきり「もう逝ってしまったかぁ・・・」と勝手に思っていたのだが、それは大きな間違いだった。人里離れたところでのんびりするなら、絶対ここだ。
平の高房
URL : http://www.takafusa.jp/
住所:栃木県日光市湯西川1483
TEL:0288-98-0336
FAX:0288-98-0860
MAIL:info@takafusa.jp
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