TBSラジオで日曜の朝10時から11時55分まで放送している「安住紳一郎の日曜天国」は正直生放送として聞いたことが無い。その時間帯にラジオを聴くような環境にいないからというのが原因なのだが、番組の一番面白いところだけをピックアップして、それをポッドキャストとして放送しているために、あとからでも電車の中で聞くことができるため、とても便利だ。
TBSのアナウンサーの安住紳一郎氏はテレビでは良く見かけるので、どういう人かわかるし、実際に映像つきで出演しているときでも、キャラクターが濃いひとで、自分大好きというのを全面的に出している人だなというのはわかったのだが、ラジオという音だけの世界になったときにはさらにそれを強く感じることができた。やはり映像だと、顔の表情、体の態度で表現できるのだが、ラジオだと音しかその表現方法が無いため、結局は留まることなくアナウンサーの良い声で弾丸トークをするしかないのである。
だから、安住さん大好きーというようなファンがいるとすると、これほど安住ワールドをまとめて聴くことができる番組は他には無いと思うので、ラジオやRadicoで生放送を聞くのもよしだし、ポッドキャストであとからダイジェストだけ聞くのも良いだろう。
だが、この番組、安住さんの独走で成り立っているというわけではない。アシスタントの中澤さんの笑いと安住さんをたまには黙らせてしまうツッコミも聞き所だろう。安住さんの毒舌トークに対する良い毒消し役に徹しているところも、朝の爽快感を和ましてくれる。
どちらもアナウンサー(正確には中澤さんは元局アナ)なので、言葉に対する指摘は厳しい。鼻濁音の回が一番面白かったのだが、鼻濁音が出来ないというリスナーに対して、公開指導をしていたのがなんともほほえましい。教えているところが面白いというのもあるが、アナウンサーならではの指摘や情報を伝えているところは勉強になる。鼻濁音を使うときの法則と言うのは決まっていて、自分では何気なく使っており、あまりその違いというのを論理的に説明しろと言われてもできないのだが、言葉という表現を使って正しく鼻濁音を説明されていたのが素晴らしい。また、自分は鼻濁音というものを普通に使っているが、鼻濁音が出来ない人も中には存在するということも知ったのも衝撃的だった。鼻濁音が出来ない人が話す濁音は、妙に汚らしいと聞こえていたのは単なる印象だったのだが、その理由が安住さんの説明で分かったのは勉強になる。
2010年の3月から始まったインターネットを使ったラジオ生放送のRadicoについても、実は知ったのはこの番組である。いままで電波でしか聞けず、ラジオ受信機を持っていないとだめだったラジオ放送を、ネットがあり、本来の聴覚可能地域に合致していれば、電波と同じようにまたは電波よりもクリアに同じ時間帯にラジオ放送が聴けるというもの。これまではどこぞの「良い人」が海賊的にラジオ放送をデジタル化してネットに垂れ流ししていたというものを、放送局が自力で実現したところに意義がある。さらに、このRadicoが開始されるときに、安住さんは面白いことを言っていた。「Radicoはこれまでのラジオの常識を全部塗り替えてしまうかもしれない」ということ。つまり、これまでのラジオというのは、運転手、受験や試験勉強生などには聞かれていても、あまりそれ以外の人種には一般的ではなかった。それがモバイル端末と直結することになり、ラジオが身近なものにまた戻ってくることにより、重要なメディアの1つになるだろうという警鐘。これはその通りだとおもう。
ポッドキャストで提供されるところは、全番組内の内容を放送しているわけじゃなく、さらに音楽のような著作権が関わるところについては対象外になっている。全番組内のコーナーをポッドキャストにすれば良いと思うのだが、それだと番組を全く生放送で聴く人がいなくなるからという思いで設定していないのだろうと思うのだが、電波放送だけが放送なのだろうかというのを本当に気になる。中継媒体が電波になるのかネットになるのかだけの違いであって、放送内容は同じでいいのではないかと思う。それはおそらく電通のような広告媒体がまだどのようにCM徴収を設定したら良いのかという確立が出来ていないからなのだろう。全番組を聴きたいのであれば、生放送のラジオかRadicoを聴けとリスナーに上から目線で訴えるのはやっぱり可笑しい。いかような媒体であっても、それはリスナーが聞く権利として提供すればいいのだろうとおもう。なにしろ、1つのコンテンツを作れば、それを別の媒体に垂れ流すことくらい、製作時間に比べると断然楽だからだ。楽なことを無視してやらないのは、放送局の怠慢以外に何者でもない。
せっかく安住紳一郎の日曜天国がポッドキャストの番組の中でもダウンロード数が高いほうにあるのだから、こういう番組が率先して、ポッドキャストを単なるダイジェスト版として扱うのではなく、本放送と同じ位置づけにするように工夫をしてもらいたいところだ。
安住紳一郎の日曜天国
URL : http://www.tbs.co.jp/radio/nichiten/
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