2013/07/27

東海館(伊東)

伊東市内をぷらぷら歩いていると、川沿いに情緒溢れる建物が目に前に出てきたので、なんだろうとおもっていたら、ここは元々温泉宿として栄えていた「東海館」というところ。実際にはいまは温泉宿として経営を行っているわけじゃないのだが、史蹟として現在は一般開放しているようだ。木造3階建ての温泉宿は、伊東に来たのであれば、是非一度は訪問して欲しい名所だと思う。

いまでは大型の鉄筋コンクリートで出来た温泉宿・ホテルがたくさんできている伊東の街並みだが、昔から伊東は温泉宿場町として発達してきていたため、古い宿を探せばいくらでも出てくる。JRの路線がなんとかして客を乗せたいとして、無理やりでも伊東まで線路を引っ張ってきたのは有名な話だが、それだけ昔から伊東へ行きたいと思っていた東京およびその周辺住民は多かったところであり、いまでも結構伊東は東京から近い温泉宿場町であるために人気が高い。その客目当てに宿がたくさん出来ていたのは当然のことだろう。
東海館はその中でも豪華な場所であり、それなりに金がないと泊まることができないところだったようだ。その証拠に、ここの建物のつくりは、結構細かいところまで含めて実に丁寧に仕事をしていることがわかる。1つ1つの部屋自体に、職人の嗜好が施されているのが目に付いて分かるのだが、宿として機能をしていたときには、宿泊客はその優美で赴きがあり、格調高い室内に泊まっているときには、かなり緊張をしていたのではないだろうか。
 
 
 
ここの建物が昭和3年。大正の名残を残して、その後、戦中に入る前の一番日本が近代的に発達していく過程で面白い時代だったときのことだ。この頃の日本は、山師や政治家、そして革命家や作家など、有象無象でそれぞれが活躍するのに躍起になっているときであり、その時代の書物や行動記録をみているだけで、現代人は楽しくなってくるはずだ。そういう書物に登場してくる人物なんかもこの東海館に泊まって、その戦術や怪しい話をするために泊まっていたりしたんだろうと想像すると、いまでは簡素な展示建屋になっていたところも、当時は仲居と宿泊客でめちゃくちゃ混雑していて、仲居さんがお膳と酒の銚子を山積みにして廊下をパタパタ歩いていたんだろうと想像できる。そんな姿がとても似合うような宿がここなのだ。
3階にいくと、大広間がある場所に出てくる。ここでは集団で食事をするということもあっただろうが、たぶん多くは部屋だしでご飯を食べていたことと考えられる。じゃ、こういう広い場所では何をしていたかというと、当然宴会だ。前にはステージもちゃんと用意されているし、間の襖を外してしまえば、全部で100畳以上はあるんじゃないのかと思われるくらい大きな部屋が出来るわけだ。温泉場の宴会といえば、芸者がいることは当然のこと。壁には当時活躍していた芸者衆の写真が飾ってあり、絵に描いたような芸者の活躍が当時をしのぶようにわかりやすく展示されている。
 
一緒に観て欲しいのは、建物を形成している梁の部分だろう。たぶんここまでじっくり見ている人は数少ないのだろうが、和風の家だったら、昔はどこの家でも、金をかけても装飾を梁等に施したものだが、ここもご多忙に漏れずにすごいデザインになっている。これだけみていても、かなり反映していたことだろうというのは想像ができる。
 
1階には和風カフェがオープンされており、和洋のお茶が堪能できる。ここでは抹茶とお茶受けを頼んでみた。さすがに仲居さんは現代風の格好をしているので、芸者ガールがやってくることは期待してはいけない。川沿いの風情を横で見ながら堪能する抹茶もいいものだ。
 
東海館
所在地 : 静岡県伊東市東松原12−10
電話: 0557−36−2004
営業時間: 館内見学は9時から21時
休館日:毎月第三火曜日(祝祭日の場合は翌日休館)
料金: 大人(1人1回につき)200円(個人) 150円(団体)

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