2013/05/12

マフラ修道院(ポルトガル)

カンポ・グランデのバスターミナルからバスで約30分乗った場所に、いきなり目の前に巨大な建築物が現れるため、どこでバスを降りれば良いのかは一目瞭然なのが、今回のお目当てのマフラ修道院(Palacio Nacional de Mafra)である。

しかし、このマフラ修道院、実は想像以上の大きさなので、ガイドに書かれている量から想像してたいしたことが無いだろうなんていう生半可な気持ちで行くと、たぶん途中で嫌になってしまうことだろう。

歴史の教科書やガイドブックでは、この建物はポルトガル王ジョアン5世がなかなか生まれない嫡子の誕生を祈って、生まれたら神のために修道院を建てますと約束したから建てたということになっている。もともと狩猟地として使っていたこのマフラの土地は余っていたために、この巨大な修道院をつくったことになるのだが、なぜ巨大化しなければならなかったのかは不思議だ。別に子供誕生の感謝のためなら、もっと小さい修道院でもいいんじゃないのかとおもうのだが、それには王としての威信を見せ付けないといけないという背景があったようだ。

ポルトガルは伝統的にカトリックの国家であり、いまもカトリック信者が多いところでもある。その権威を大金を出してまで守らなければいけないのはなんだったのか?それはポルトガルがスペインの脅威から守ってもらうために、イギリスの協力を得ようとしたことであり、イギリスは反カトリックの先鋒でもあったわけだし、協力を要請したことにより見返りをイギリスはポルトガルから金とダイヤモンドという、植民地ブラジルからのいわゆる「アガリ」を吸い取られる形になってしまった。このままではスペインからの独立はしたのに、イギリスの奴隷になってしまうのではないかとポルトガル王は懸念する。さらに政治的基盤としてのポルトガル王は、ローマ教皇からも民衆からもあまりよく思われていなかったため、どうしても威信をカトリック教会と民衆に見せる必要があったのかもしれない。そういう意味で巨大化した建物になったようだ。

じゃ、一体この建物はなにが収められているかというと、まず部屋の多さから驚かされる。一体この建物中には部屋がいくつあるのかと数えても数え切れないくらいあるんじゃないかと錯覚してしまうくらいの数があるのだ。全部の部屋を見て廻ることは実は許されていない。しかしながら、見られる範囲は実は全体の1/3くらいしかないのだが、それだけでも全部歩き回るだけでも簡単に1時間は経過する。それらの部屋に飾っているモノを見学していることを合わせると、さらに数倍の時間は経過してしまうことになる。

中に展示されているものは、ヴェルサイユ宮殿やシェーンブルン宮殿のような派手さはここにはない。だから展示されているものもそんなに派手なものは存在されているわけじゃない。しかしながら、壁や装飾に残っているところには巨大宮殿になっていたことの名残が残っているし、展示物も若干派手になっているところもある。
 
 
 
 
名前が修道院となっているように、いちおうここには修道僧が住んでいたことの証拠もある。今で言うところのカプセルホテルみたいな個室がずらっと並んでいるところを見ると、そこが修道僧たちの唯一のプライベートルームなんだろうとおもうが、それも他人からは丸見え状態なのだろうから、落ち着くことは無かっただろう。ただ、ドミトリの生活をしたことがあるひとであれば、そんなのは普通だとおもうに違いないが、個人的にはここには住めないなと思う。
 
 
絶対見て欲しいのは、宮殿奥のところにある図書館だ。これは圧倒される。しかし、先にコインブラの大学図書館を見てしまったこともあるので、こちらの図書館のすごさもかわらんでもないのだが、凄いという共感が半減してしまったのは正直なところだ。特に原点になるような要素があったかというとそれはない。唯一無二のものがあれば感動するが、二番煎じのように見えてしまうと、やっぱり感動は半減してしまうようだ。ただ、こちらの図書館にはポルトガルの叙事詩である「ウズ・ルジアダス」の初版が保存されているのは必見だろう。
 
 
さらに王室の食堂のところには、鹿の頭部の骨ばかりを集めた部屋があるのだが、これはこのマフラが狩猟地域であった名残だとはいえ、ここまで同じようなものを集めておく王の趣味というものは、少しセンスがないとは思った。しかし、角の飾りはあったとしても、全身剥製のような絶対あるだろうとおもうものが飾っていないというところもよくわからない。もっと笑えたのは、同じ部屋にあるシャンデリアを鹿の角で作っているものが上から飾られていて、それを実際にいまでも利用しているんだが、これはかなり滑稽だ。
 
 
一体マフラ修道院をここまででかくしたのは、先述のとおりなにかにとりつかれたように巨大化したような建物になっているので、本当に館内全部を廻るのは、途中でしんどくなってくる。さらに最初は気合をいれて観ていても、後のほうになってくると刺激が少なくなってくるからということもあるのだが、だんだんだらけてくる。この修道院はどこを模しているのか?たぶんヴェルサイユ宮殿を模していたのだろうとおもうのだが、なんとなくヴェルサイユのような華やかさと品性が感じられない。それは現在の保管状態が適当すぎるからと言うこともあるのだろう。

それよりも、こんなに広いんだから、それなりに全体の展示物の説明があるガイドブックが売られていいと思うのだが、ポルトガル人はそういう本を編集すること自体が面倒くさいと思っているのか、お土産店にも売られていない。教養がないひとたちの集まりとは思えないのだが、なぜ販売していてもおかしくないようなもので、一番金になるガイドブックを作らないのか不思議だ。

マフラ修道院(Palácio Nacional de Mafra)
URL : http://www.palaciomafra.pt/
Address : Terreiro D. João V, 2640 Mafra
Open : 10:00 - 18:00
Holiday : Monday, 1/1, 12/25

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