2013/05/14

蒋介石が愛した日本(書籍)

蒋介石は中華民国の総統であり、後に台湾を拠点にして最後まで中国大陸に戻りたい一心であったことは、自分が孫文の一番の教え子であり、孫文の意思を継いだ唯一の後継者であると自負しているからだと思っていた。清朝を倒したあと中華民国として各地に居た軍閥を自分の支配下にして、中国を統一的に、そして民主主義国家にするために夢を見ていたことは知っていたが、本書「蒋介石が愛した日本」を読む前は、蒋介石が日本を好きだった、愛していたなんていうのはなんで!??と思いが強かった。中国大好き人間であり、かつて第二次世界大戦のときには敵国として中国軍のトップとして君臨していた人がなんで日本を愛していたのか?というのは疑問だったからだ。

しかし、本書を読み進める上で、次第に蒋介石が本当に、そして実は日本が大好きであったということと、それを中国民衆に悟れないように、特に身内の人間にはその思いを悟られないようにしていたのはビックリだった。なにしろ、清朝崩壊後の中国では、どこもかしこも中国がめちゃくちゃになっていており、そんな時代では日本はロシアの勝ち、規律が正しく統制よく戦い、そして近代的な国家になっていたことはアジアのなかではぬきんで居てわけで、そんな日本に憧れを持っていたアジア諸国の人たちは多かったが、蒋介石もそのうちの1人であったようだ。

当時の日本への留学は各人の思いと何を修得していくのかということ自体で変わるとおもうのだが、蒋介石は中国を国家として強国にするため、日本から学べるものは何かと考えたときに、中国人には成し得ていない軍の規律を学ぶために日本に留学してきた。ここはいろいろな本で記載されていることなのだが、その留学地、新潟の高田の駐屯地での生活というのはほとんどの本では記載されていない。短い期間でしか高田には居なかったようだが、この中でよい上官に出会い、日本人の心からの良さを知ったことは蒋介石に衝撃的だったことだろう。

その後にも何度も日本にきて、中華革命・国家統一のために日本の要人ともあっていたということは知らなかったので、なぜ日本や蒋介石の研究をしている人たちはこれまでこの事実を言わなかったのだろうということが不思議であるということと、日本の要人と話をしていたときには日本語で話をしていたというのもビックリした。英語が話せないために、ヤルタ会議では英語で会話されていたイギリス、アメリカ、ソ連の指導者と会話ができず、奥さんの宋美齢が通訳をしていたというのは有名な話だったが、日本人との会話では日本語で話し、通訳が要らなかったこともビックリだ。そして、のちに結婚する宋美齢が日本嫌いであったため、奥さんの家からの資金を充てにしていた蒋介石にとっては、日本語を話し、日本が好きで、日本人を良いと思っていること自体は隠すべき事項であったことは悲しいことだったろう。

日中戦争が始まり、日本軍が中国の土地を侵食していくのは蒋介石にとっては苦々しいことだったのは当然だろう。だが、そのような状態になっても、蒋介石は日本の軍隊を憎んでいたとしても、日本人の良さを肌身で知っていることと、日本の皇室・日本人・日本の国家を愚弄するようなことは絶対なく、中華民国人に対しても決して日本を愚弄するようなことは許さなかったというのは素晴らしい姿勢である。軍人の思想が悪く、日本が悪いということではないというのは、台湾にもそのまま残る思想であり、中国大陸の中でも多くの人は頭では理解している思想である。ただ、残念ながら中国大陸の場合、共産党というどうしようもない独裁組織が民衆を押さえつけているため、民衆からの反感を共産党がモロに受けるのが怖いためか、思想教育として日本はすべてが悪いと教えていることは、本当に信じている中国人にとってはかわいそうなことだ。本当なら戦時中もこれと同じことが中国で教育とされてもよかったはずだが、それを蒋介石は絶対許さなかったし、たぶん周りにいる宋美齢や部下にとっては、蒋介石はなんで日本に対してそんなに甘いんだ?というようなことを本気で思っていたことだろう。

それが決定的に露呈されたのが、西安事件として起こったことだろう。ぜんぜん日本軍に対して戦おうとしない姿勢にいらだった、日本人に父親がぶっ殺されたことを非常に恨んでいた張学良は蒋介石を軟禁し、共産党本部に連れて行き日本人と戦えと脅すのは、蒋介石にとっては苛立ったことだろう。なぜ日本人のことを知らないやつに、日本のことをとやかく言うのだ?そして、何も知らないし、思想的にも破壊しかしない共産党の言うことを聞くのだ?と思ったことだろう。

戦時中には蒋介石はチャーチルやルーズベルトのような聡明さを露わなさなかったと一般的には思われているのだが、実は世界情勢に対してはすこぶる敏感で、当時そんなに情報が発達していなかったわりには、日本国内で起こっている事象や欧米の動きについてもよく知っていた。ところが、共産党によるめちゃくちゃな動きに対してだけは、ゴキブリが勝手に家のなかを駆けずり回っているかのような存在だと思っていたようで、それがどうしても許せなかった。最後の最後まで蒋介石の手を焼いたのは、この共産党。しかし、蒋介石のこの情報力はどこから出てきたのだろうか?それは宋美齢を中心とする英語を理解する人たちの活躍なんだと思う。

書籍「蒋介石が愛した日本」というよりは「日本を愛した蒋介石」という風に名前を換えたほうが良かったんじゃないかと思う内容が散りばめられている。蒋介石の目から見た日本の様子だったら、この本のタイトルの通りでいいと思うのだが、日本のことは大好きであったために蒋介石が何をしたのかという紹介に終始した内容になっているので、やっぱり後者のほうがしっくり来る。従って、日本LOVEと思っていた蒋介石がどんだけ日本に対して庇っていたのかというのを中心に読み取ればいいだろうと思った。

蒋介石が愛した日本
著者:関 榮次
新書: 253ページ
出版社: PHP研究所
発売日: 2011/3/16


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