熊野詣2日目は、当初紀伊勝浦駅からバスに乗って本宮に行こうと思った。バスは、紀伊勝浦駅前から出ており、ちょうど営業所が存在するので、そこで通常なら切符を買えば良い。事前に乗り放題券を持っているこちらは、特に切符を買う必要は無いところが良い。そして、本宮辺りにいくには実は結構バスに1時間くらい揺られることは想像していたので、バスで座れなかったら嫌だなーとおもったため、出発の30分前くらいにはバス停に居ようと思って、それにあわせて船に乗ってホテルをあとにした。
バス営業所で10時発の本宮行きのバスを待っていると、9時半発の那智行きのバスがやってきた。この那智行きのバスに乗って那智方面に行こうと思っている人は結構いることは待合室あたりでよくわかっていたのだが、あと30分も待っているのも面倒くさいなと思ったので、急遽予定を変更して、那智に向かうことにした。那智は最初の予定では3日目に行こうと思っていたのだが、これが実際には大成功だったことを後で知る。那智大社のあたりはたくさん見るところはあるのは最初からわかっていたので、ゆっくり廻っていたら、もしかしたら帰宅の電車に間に合わなくなるかもしれないので、熊野エリアに来る前はどちらを先にしたら良いか悩んでいた。なにしろ見所がたくさんあるのに、帰りの時間を気にして、観るところもじっくり観ずに帰ってしまい、あとで後悔するようなことがあったら、それは悲しい結果になるからである。
急に那智にいくことを決めてしまったのはいいのだが、バスはどこまで乗れば良いのか分からないので、持っていたパンフレットを使って調べてみたところ、終点の那智大社のところまで乗ることも出来るし、その手前にある「大門坂下」というところで降りるという手もあることがわかった。大門坂というのは、熊野古道の中でも一番絵になる場所であると思うから、行きか帰りかどちらかでは通っておきたい場所だとは思われた。しかし坂と言っても500メートルくらい長く続く石畳の坂であるため、坂を上るのがしんどいという人にとっては地獄かもしれない。が、串本あたりから本格的な熊野古道を歩くよりは、こういう道を歩いているだけでも十分熊野古道を堪能できるとは思う。だから、熊野にいってきましたと言う人が居ても、この大門坂を歩きましたという人じゃないひとの意見は聞かないほうが良いと思う。そして、大門坂は、普通の人が歩くと、だいたい20分から30分くらいはかかるような道である。バスだと、その坂道を、日光のいろは坂のようにうねうね曲がりながら上っていくことになる。
バスで20分くらい乗ると、最初に人がわんさか下りる場所である「大門坂下」というバス停に到着する。大門坂の看板が出ているところから少しだけ先に行ったところにバス停があるので、本当に坂の下から歩き始めたいという人がいたら、バスが走ってきた道を少し戻って、看板のあるところまで戻ると良いと思う。既にここまでバスに乗ってこないで、昔ながらのお遍路さんみたいに歩いてきている人もいて、一旦この看板のところで記念写真を撮っているひとたちが結構たくさんいるからすぐ場所はわかると思う。
この大門坂下からだと、ずっと長い石段が続くので、頑張って上ってみよう。最初は大した坂になっていないので、高尾山の山道で歩いているような楽しさは出てくると思う。
途中で貸衣装屋があるのを発見した。ここでは、熊野参詣を昔ながらの格好で行うために着替えの衣装を貸してくれるところなのだが、結構これが女性だったら一度は着てみたいと思うところなんだろうと思う。だけど、この衣装のままこの先の参道を歩いていくのは結構しんどいのじゃないのかなと思ったのだが、実際にはどうなのだろうか?大体足元もトレッキングシューズではなく、草履に履き替えるわけだから、歩きにくいし、足が絶対痛くなるんじゃないかと思う。ところが、これはカップルで行ったほうが実は良いとも思った。男性用の平安貴族風の格好もなかなか良いと思う。でも、ブサイクなひとが着たのでは、全然格好がつかないと思う。
大門坂は上り始めていくと、両脇を高い木で囲まれている石段なので、この坂道は炎天下直下を避けることができるので、歩きやすいと思う。これが炎天下だったら、絶対に途中何度も立ち止まって給水しなければならなくなるだろうと思う。この大きな木で囲まれた道を歩いていることで、下界との間を遮断するような空間が出来るので、熊野詣に神経を集中できるという効果もあるのだろうか?
途中、一箇所だけ、道路と接触する場所に出くわして、いっきに下界に引き戻される感じが出るところがある。ちょうど中腹あたりのところで、道路からするといろは坂の途中みたいなところにあたる。ここはちょうどちょっとした休憩所のように、比較的広い空間になっているので、休憩をしている参拝客が結構屯っている。ここで休憩をしたら、一気に上って行きたい所だ。
しかしここから先はちょっと坂がきつくなる。まだ整備された階段だから歩きやすいのだが、まあ坂道だから杖を突いて歩きたくなるような場所だ。
上り終わったところが、実はこの坂道の終点ではあるのだが、そこが神社かというとそうではない。まだまだ先は長い。一旦ここで休憩をしても良いのだが、何も無いところなので先に行ったほうが良いだろう。
道沿いに歩いていくと、バスどおりに出てくる。ちょうどバスの終着地点辺りにあたる。この辺りに来るとお店が両脇にいろいろあるので、ちょっと寄り道したくなるのだが、ここで体力を使ったのでは、先に進めなくなる。道路のすぐ脇に、また長くつづく階段が見えるところがある。実はここが参道の入口である。これまで上がってきた階段の道は単なる道。ここから先がいよいよ神社に入ろうかなとする前の道なのである。しかし、この階段がまたキツい。途中の郵便局前に休憩をする場所があるのだが、ここで休憩するのもいいだろうが、ここはゴールではない。まだまだ先があるのでどんどん進んでいきたいところだ。
途中庭園のようなところに出てくるのだが、ここは参拝された上皇や法皇が宿として使った場所である「実方院」の跡である。よくもこんな高台のところに作ったものだと関心するのだが、建物は純和室で、畳の広い部屋が外からでも見て取れる。そして庭園のところには現在喫茶店になっているので、ここで休憩をしても良いと思う。
さて、さらにどんどん進んでいくと、高台の上のほうに朱色の鳥居が見えてくる。ここまで来ると、いよいよ那智大社の本殿が近くなってきたという合図である。
しかしまだまだ本殿に行くには坂道を歩かないといけない。一体どんだけ坂道の階段を歩かせるんだーとおもうのだが、那智山の上に大社は建っているので、そこまで上らないと本殿にありつけないわけである。そして、一番ショックだったのは、最後の最後に急激な石段が目の前に聳え立っていたときだろう。この石段を上らないと本殿にいくことが出来ないのだ。
さて、長い石段を上ったあとには、朱色の染まった本殿とその周りの社殿が広がっている広いエリアに出てくる。この日はとても天気が良かったので、空の青さと社殿の朱色がとても映えて見えていたのが印象的。本殿の隣りにはこれまた八咫烏を祀った場所があるのでそこも絶対お参りしたほうが良いだろう。
本殿はかなり立派なつくりになっており、このときには、社殿のなかで祝詞を上げているひとはいなかったのだが、サッカーの日本代表ももしかしたら参拝にくることもあるのかなーと勝手に想像しながら参拝してみた。そういえば、本殿の前には巨大なおみくじがあるので、是非それを使っておみくじを引いて見たら良いと思う。
そういえば、熊野速玉神社のほうはそんなに人がいなかったのに、この那智大社のほうはめちゃくちゃ参拝客がたくさんいた。あれ?みんなどこにいたんだろう?と思うくらいの参拝客である。やっぱりここは那智大社もそうなのだが、傍に有名な那智の滝があるところだからなんだろうと思う。
那智山には那智大社しかないとおもったら、大間違い。実は、那智大社の鳥居を潜ると、隣りには西国三十三ヶ所第一番札所である那智山青岸渡寺が存在する。神仏一体化の名残でここに建てられたのか知らないのだが、いずれにしろ、上皇や法皇が那智大社を参拝するときの常宿にしていた寺であることは間違いない。観世音菩薩が祀られているお寺なので、那智大社とは違う気持ちでおまいりするのが良いだろう。
中に入ると、各種曼荼羅を販売しているところや御札を売っているところが本堂の中にある。なんだか販売員に対しておまいりしているみたいで、妙に変な感じがするんだが、どうしてあんなところに売り場を作ったのか疑問だ。内部で参拝者の監視をするための目的としてしか思えない。
そして更に下っていくと、有名な那智の滝と赤い三重塔のペアが見える場所が見えてくる。ここからの写真は、那智の滝にやってきたなーというのが一番わかるところだろうと思うので、結構たくさんの人が写真を撮るために集まってきている。やっぱりここからの景色は最高だなー。それに良い天気だったから、空の青、山の緑、建物の朱色、滝の白の色具合がくっきり違って見えていて最高。
三重塔には上ることができて、高いところから那智の滝を近くで見ることが出来る。塔の中には特にこれといった展示物があるわけでもない。一応曼荼羅が飾られているのだが、そんなもの誰も見ていることはないだろう。この塔から観る滝の姿はやっぱり雄大だ。滝の上から滝つぼまで見えるので、実際に上ってみるのは良いと思う。
しかし、この三重の塔のところが一番身近に滝が見える場所ではない。もっと身近に見えるのは違うところだ。実はバス停にもなっている「那智の滝入口」というところに、滝のすぐ傍にいける場所の入口がある。この入口まで行くには、実は結構山を下らないといけない。この坂道の石段も結構な階段になっているので膝に負担があるひとは結構辛いところだろう。でも、高い木々に囲まれているのでひんやりとした空気で囲まれているから気持ちが良い。
滝の入り口にやってくると、車通りだからかもしれないが、お店がたくさん存在する。そしてバス停があるので、帰りのバスの時間を確認してから滝つぼ傍までいくのがいいのではないだろうか?
滝つぼ入口からも実はさらに石段を下らないといけない。それをだんだん下っていくと、滝の音がずっと大きくなってくるので気分が高ぶってくる。ここまでやってくると、那智の滝も違う形で見えるので、爽快感が出てくる。滝自体になにか祀られているというわけじゃないのだが、霊験新たか、修行の場として使われている場所なのだろうから。しかし、那智の滝を見に来る人は多いとは思うのだが、そこで何をしているかというと、滝がすごいねーと感動しているだけであり、そこでおまいりをするという人はあんまりいないように思われる。
熊野那智大社の参拝は大門坂下から始まり、山を散策して、最後に滝を眺めていくという山散歩になるのだが、これは時間をかけても絶対廻って欲しいところだ。帰京する時間を気にしながら山歩きをすると、落ち着いて見られることはできないだろうから、やっぱり那智大社と本宮にいく日を変えてよかったと思った。
熊野那智大社
URL : http://www.kumanonachitaisha.or.jp/
那智山青岸渡寺
URL : http://www2.ocn.ne.jp/~sanzan/NTTcontents/seigan/
熊野交通・那智山往復時刻表
URL : http://www.kumakou.co.jp/bus/jikoku_item_9.html
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