2009/06/13

中国のテレビ放送(北京)

北京のホテルでは、NHKもCNNもEuroSportsも視聴することは可能だ。泊まっていた京倫飯店でも見ることは可能であったが、日本の放送局はNHK以外は観ることが出来なかった。他の国と同様、NHKも海外用のNHK放送番組しか受信することは出来ない。だから、普段NHKの総合または衛星放送で観ている内容や番組構成とは異なるので、違和感があるかもしれないが、それでも日本語の放送を観て、聴けるというのは、海外ではありがたいものである。その他はCCTVががっちり、たくさんのチャンネルを専用しており、他の地方局のチャネルもいちおうケーブルテレビという形で視聴することができた。中国にあるすべての省には独自のテレビ局があるようで、それぞれで違う番組を放映しているため、ケーブルで選ぶときにどれを選んで良いのか迷ってしまうくらいであった。

しかし、テレビを見ていて気になることがあった。それはNHKを観ているときのことである。中国のローカル放送ではないので、海外用のNHKの番組では、日本で見るときには普通に存在する「時刻表示」というのは無い。それは問題ないが、時刻表示が無くても、天下のNHKなので、時間正確に番組は放送されるものである。実際に北京で見ていてNHKはその時間正確な番組放送ではなかったのである。というのも、NHKでは番組放送をする際に「〇時ぴったり」で始まる番組は多い。だから、その番組の開始を、時刻あわせとして使えるはずなのだが、なぜか時刻が妙に変であることに気付いた。

NTT DoCoMo も携帯電話に「自動時刻補正機能」というのを持たせており、定期的に携帯電話が正しい時間を秒単位で合わせる機能を持っているのだ。携帯の時間補正はそんなに頻繁に行わなくても、意外に時間は合っている。電源のON/OFFを頻繁にしているとその時計は狂ってくるのだが、ずっとONをしている間はそんなに変わらない。

そう、携帯の時刻とNHKの放送開始の「0秒」表示が全く違うのである。携帯の時刻は、中国にいる間に時間補正はしないかもしれないが、日本にいる間に勝手に補正されている。よく観ると、NHKの放送のほうが15秒ほど遅いのだ。これはもしかしたら携帯のほうが狂っているのかもしれない・・・っとおもい、父が腕時計を持っていたので、そちらでも確認した。父親の時計は、家を出てくる際に、117で時計あわせをしていたくらいだから、ほとんど時間に狂いは無い。それを見てもやっぱり15秒ほどNHKが遅れて放送しているのだ。

これは面白くなってきた。もしかしたら、意図的に15秒の遅延を中国国内で見せているのだろうという予想が立ってきたのだ。

そして事件は起こる。NHKは娯楽番組も当然放送するが、だいたい報道番組を中心に海外向けにも放送している。特に朝の時間帯はニュース放映が多い。例のごとく、ホテルでテレビを見ていたところ、ニュースの突然映像が切れた。音声も聞こえず、真っ暗状態。しばらくしたら、映像と音声は復活する。最初、「衛星放送だし、途中で映像が切れたのかな」というくらいの感覚でしか思わなかったのだが、何度かこの状態が続くと「おかしい」と気付く。それもニュースを行っている場合に限るのだ。娯楽番組や朝の連ドラが放映されているときには絶対に「真っ暗」にはならない。

理由がわかったのは、やっぱり朝のニュース放映をNHKで行っているときである。滞在期間は、例の天安門事件が6月4日にあったことにより、「まもなく20周年になる天安門事件」を日本ではどこの放送局でも放映しようとしていたときだ。中国では天安門事件自体を「無かった歴史」にしたいという意図が働いているため、海外メディアで放映されていること自体も国内で放映すること自体が絶対許されない。それがNHKでもCNNもである。NHKのニュースの仕方として、まず見出しを言ったあとに、内容の詳細を放映するという形式をとっていることが多い。いつものようにNHKが見出しを言った後、内容の詳細を放映する際の、天安門事件のその後という内容を放映する直前になって、テレビが真っ暗になった。

15秒の遅延というのは、生放送で放映されている海外メディアの放送の中で、中国に不利になるもの、民主化や天安門や法輪功のような単語が出てくるようなニュースが出てきた場合には、すぐにでも放映できないようにするための仕組みを作っているのである。海外の衛星放送といえども、中国では、住民・企業が直接パラボナアンテナを建物につけて、衛星から直接放送を見るということが実は許されていないことを後で知る。海外放送を見るためには、中国政府の息が掛かっているケーブルテレビに加入するしかないのである。

NHKでの真っ暗事件のあと、CNNではどうなのだろうか?と試しにCNNを見ていた。CNNでも天安門事件後20周年の放送をしようとしていたのだと思う。ところがカメラパンが北京に切り替わった途端に、画面が真っ暗になった。そして、北京からのリポートが終わった途端に画面が直っているのである。すべての海外放送のチェックを行っているというのは聞いたことがあるが、ここまで露骨に中国に不利になるような情報を国内に持ち込ませないように徹底している情報操作の厳重さを露骨に見て、恐ろしい国だと思った。

もちろんCCTVを中心とした政府直轄の放送局は、どこも天安門事件に関する放映は全く行っていない。いつもと同じ6月4日を迎えるような報道をしていた。

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