2015/07/31

愛玉子(オーギョーチー)

 
台湾にはたくさんのデザートがあり、それはどれもこれも美味しい。日本人の舌にもかなり合うものがたくさんあるため、台湾に行くたびにそのデザートを食べ歩くというひとは結構居ると思われる。台湾のデザートの中でも、台湾でしか見ることがないデザートとして有名なのが「愛玉子」というもの。読み方は「おーぎょーちー」と言う。中国語ではなく台湾語での読み方だ。文字から考えると、卵を使ったデザートかと思われるが、ぜんぜん違う。台湾風のフルーツ寒天と言ったほうがいいかもしれない。夏の暑いときに食べると、涼しさを感じることができる絶好のデザートだといえよう。
そんな台湾のデザートを、日本で唯一、専門店として開業している店が千駄木にある。その名前も「愛玉子」で読み方は台湾語の「おーぎょーちー」のまま。ぜんざいやあんみつのような他のデザートと一緒に提供している店は他にもあるかもしれないのだが、この店は本当に愛玉子しか売っていない。そのほかの食べ物は無い。よくもまぁここまで勝負に出たものだと思われるのだが、驚くなかれ、この店はなんと戦前から存在する店として、結構有名な店なのである。開業は1936年というから、もう創業80年にはなるものである。当時は、台湾も日本領であったため、台湾から本土にやってきた人がこの店を開いて、故郷の台湾の味を日本に広めたのだろうとは思われる。

店舗は決して新しいというわけじゃなく、昔ながらの喫茶店のような感じよりも、昔の蕎麦屋やラーメン屋というようなものをベースに作った店のようにも見られる。小窓のようなカウンターがあって、そこから商品が提供されることを想定しているのだろうが、実際には何の役にも立っていない。できあがった愛玉子は、店員がちゃんとテーブルまで持ってきてくれるからである。じゃ、昔ながらのカウンター式小窓はどうなっているのかというと、会計台となっていて、小銭がそのまま置かれていたりするから、三田にあった昔のラーメン次郎本店のようなものに思えてしまった。
創業80年もやっていれば、いろいろな人が客として訪れるのは当然であり、作家の池波正太郎が常連としてこの店にやってきて愛玉子を喜んで食べていたというのは有名な話だ。池波正太郎だけじゃなく、俳優・女優・著名人のたくさんのひとたちがこの店で、昔から変わらない愛玉子を食べていたというものだ。

愛玉子自体のことは台湾デザートであるということまでしかここでは言及しないのだが、基本的にはレモンシロップをかけて食べたほうが美味しいと店では勧める。そのまま食べても美味いとは思うのだが、味が薄いので、その寒天風味をより楽しむのであればシロップをかけてもいいだろうと思う。

この店は前から知っていて、一度は行ってみたいとは思っていたのだが、根津・千駄木あたりを散策することが流行っていても、わざわざ行くということはそんなに自分のなかでは要望がなかったので、なにかの機会にこの店に行ければいいだろうという程度でしか考えていなかったのだが、今回はたまたま傍に行くことができる機会ができたので、立ち寄ってみたのである。長年の希望がかなってとてもうれしい気持ちになったし、あんまり最近は台湾にいける時間がなくなったので、台湾に行かなくても台湾の味を堪能できるということの嬉しさも重なって、とてもいい時間をすごすことができたと思った。

最後につけたしをするとすれば、この店は、テイクアウトもできる。この店で買って、別のところで食べるということも楽しいことだろう。

愛玉子(おーぎょーちー)
住所:東京都台東区上野桜木2-11-8
電話:03-3821-5375
営業時間:10:00~18:00(売り切れ次第閉店)
定休日:不定休

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