2007/11/10

皇帝たちの中国史


中国の歴代皇帝は、有名どころは分かっていても、意外に全然知らないものだ。高校の歴史のときに中国の皇帝を基本的には習うようなのだが、履修をそのときにしていないので、王朝を作った人くらいしか名前を知らない。それも王朝の中では知らない名前の人も居る。まぁ、歴代の皇帝が全部、偉大なる業績を持っているかというと、日本の将軍だって同じようなものだから、どうでもいいような存在の皇帝は基本的には多かったはずである。たくさんの皇帝の中でも、基本的なところを抑えたほうがいいと解説してくれているのが、NHKのラジオ第2放送で放映中の「皇帝たちの中国史」である。

皇帝の目線から、各王朝の実情を見てみようというのがこの番組の主旨であるが、その目線というのが、各王朝の基本的に偉大なる人たちの目線であるから、その解説もわかりやすい。話があまり分散せず、その皇帝に特化している話を中心に展開しているので、理解しやすい出来栄えだ。こういう教育番組を作る際のテキスト作りは、長年の放送教育番組を手がけているNHKならではだとおもう。放送を実際に聞いていなくても、このテキストだけを持って、それを個別に読むことでも十分に理解できるように配慮されているつくりが素晴らしい。

放送時間は、火曜日の夜9時半からの30分番組であるので、まともに聴こうと思えば、放送を聞くことが可能だ。しかし、残念ながら、火曜日のこの時間は、だいたい残業をしており、家に帰ることはまずない。だから、テキストは持っているのだが、実際に講師の稲畑耕一郎氏の言葉でこの講義を聞いたことがない。放送期間は3ヶ月間なので、その間に聞くことができたら聴いてみたいと思う。

始皇帝から始まる中国皇帝は、それぞれの思いで各支配王朝を統治していたのであるが、人物像からみた政治や情勢、そしてその人物が何をしたのかが整理しているので、中国皇帝の違いを良く感じることができる。そして、講義をしてくれる稲畑氏の選択した皇帝というのが、また普通じゃないので面白い。始皇帝のような超有名な人は、一番最初の肯定なので外せないとおもったのか、これは入れてあるが、三国志のあたりの時代であれば、劉備をフィーチャーしてもいいはずなのに、そこは曹操にフォーカスを当てているし、明の時代なら万暦帝を紹介しているところが、なんとも楽しい。最後はやっぱり溥儀で締めているところは、礼に始まり、礼に終わるという思いが伝わってきそうだ。始皇帝と最終皇帝は外せなかったのだろう。

各王朝のさらなる詳細の本は、講談社学術文庫のような本を買って、それで研究や知識を増やせばいいと思う。そこまで詳しく知りたくないけど、なんとなく主たる皇帝のことを知りたいなというのであれば、この程度のテキストで本当に十分だと認識した。教養の範囲で中国の皇帝を知るのはいいことだと思う。特に、分かっていれば、故宮博物院に行ったときに、どの時代のものかというのは、だいたい皇帝名で書かれていたりするので、その名前から何年のことで、時代背景に何があったかというのを知っているのと知らないのであれば、作品を見る眼が違ってくるからだろう。

登場人物一覧

・秦の始皇帝- 嬴政
・漢の高祖 - 劉邦
・漢の武帝 - 劉徹
・魏の武帝 - 曹操
・唐の太宗 - 李世民
・唐の則天武后 - 武照
・唐の玄宗 - 李隆基
・宋の徽宗 - 趙佶
・元の世祖 - クビライ
・明の万暦帝 - 朱翊鈞
・清の乾隆帝 - 愛新覚羅弘暦
・清の宣統帝 - 愛新覚羅溥儀


NHKカルチャーアワー「歴史再発見」
皇帝たちの中国史
稲畑耕一郎講師
放送:ラジオ第2放送 火曜日午後9:30~10:00
定価:850円

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