2012/06/09

ワット・スラケート(Bangkok)

ワット・ラーチャナッダーから、大きな通りに出くわし、横断歩道があるが信号が無い交差点を、行きかう車の波を無理やり通り抜けていくと、マハカーン砦というちょっとした砲台跡が出てくる。いまでは単なる道しるべの1つにしかなっていないような砦なのだが、ここは、オンアーン運河とバーンラムプー運河が交差する運河の三叉路になっており、運河を通ってやってくる外敵から守るための砦だったようだ。
砦を右手にみて運河を渡ってすぐの路地を運河沿いに歩いていく。そうすると、ジムトンプソンの家のほうに続く運河航路の船着場が見えてくる。ここから出発する船は、チャオプラヤ川の渡し舟のような大きな船ではなく、絶対どこかのおっさんが個人的に商売をしているんじゃないのか?というような船であり、いつ出発するのか分からないようなものだった。が、バンコクは運河の町であるため、こういう船を使って王宮エリアと繁華街を移動するのにはとても便利な交通手段だといえよう。なぜなら渋滞には全く捕まらないからである。

そんな船着場を横目にさらにどんどん道を歩いていくと、やけに人通りと出店がたくさん見えてくる。バンコクの市内に中では珍しく高台のようになっている丘が見えてくるのが、ここがお目当てのワット・スラケート(Wat Sraket)がある場所である。どこから人が集まってきているのか本当にわからないのだが、バイクや車やチャリや徒歩やらで集まってきているのだろう。

さて、こんなところに小高い丘になっているワット・スラケートだが、それは実は悲しい話が裏にある。平坦なバンコクでランドマーク的存在を作ろうとこの地に高台を設けようとしたようなのだが、もともとこんな運河が交わるところが地盤が良いかというと、そんなことはなく、土固めからかなりの難航工事だった模様で、ラーマ3世のころから始めた工事がようやくラーマ4世の時代になって高台はでき、その上に仏塔を建てようとしたのだが、結局いまの形になったのが1950年代になってからだというから、どんだけ工事に時間がかかったんだよーと言いたくなる。ただ、この高台を作ったのはいいのだが、当初の思惑とは異なり、この高台が死人の置き場になっていた時期がある。コレラが発生したときに、ばたばたと死んでいく死体を焼こうにも、火葬するより死体の数が多すぎるたために、死体を運河に棄てることが横行したのだが、運河は生活の場でもあったため、死体がぷかぷか大量に浮いたままだと、それを目掛けてカラスやハゲタカなどの害鳥が近寄ってくるのは当然である。死体の置き場に困ったために、やむを得ず、高台を死体置き場にしたという経緯である。だから、高台の上に建っている仏塔に上るためには、高台をぐるぐる廻っていかないと上がっていけないのだが、その道中に墓はあるわ、鐘があるわで、坂道自体がなんだかお祭り会場に続く道のように思えたのだが、その墓や鐘は弔いのための装飾だったにすぎないようだ。

てっぺんまで行くと、金色の気持ち悪い巨大な仏塔があり、その中に入ることができる。そして、その仏塔の中心には守り神の仏像が鎮座しているのだが、この仏像は、ほかの寺院のように巨大なホールの中に誰もが見られるというような形であるわけじゃく、仏塔の中に小さな洞窟みたいな穴を形成して、そのなかに座っているので、一度に大量の人が拝めるわけじゃない。少人数ずつが仏像を見ることができるようになっており、途中で立ち止まってなんかは許されない。警備員のような人たちが「前に進んで!」と本来なら寺院なので静粛が求められているのだが、ここではそんなのは無視。わいわいがやがやと騒々しいし、狭いところに何人も入るし、熱気が外に出て行かないので、体臭と熱気のせいで仏像がある小部屋はとても臭い。鼻が曲がりそうになる。それでもこの仏像を見るために多くの人がやってくるのであって、それはまるでエレファントマンを見るために遠くからやってきたひとたちが、一瞬の曲芸をみるために集まってきているような風景である。

坂道の道中にはたくさんの鐘が釣り下がっているのだが、それを鳴らしながら頂上まで上っていくと、全然のぼりが苦ではなくなる。しかし、訪問者めいめいが勝手に鐘を鳴らしまくっているので、その不協和音が微笑ましいというより煩いと感じるし、むしろ止めてくれと訴えたくなる。しかし、その鐘ならしがなかったら、結構急な坂道であるために途中でイヤになる人たちがいるだろう。

頂上から下界の景色はなかなか見事である。それに、高台なので風が結構あって気持ちが良い。地上にいると上からと下からの熱風で歩いているだけで体力激減するのだが、この高台にいると生き返った気持ちになる。坂道を上る前に、できればミネラルウォータは買っておいた方が良い。頂上付近にも売店はあるのだが、ここの売店はあまり水が冷えてなさそうである。風景はというと、都心のホテルなどの高層階から見る風景のほうが断然良いとおもうのだが、こちらは王宮エリアにある高台なので、繁華街のネオンをみるのとは違い、下界の有象無象が蠢いているのが馬鹿馬鹿しく思えてくる感覚をもつことができるだろう。

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