2009/03/06

秘伝・香港街歩き術


香港は今も昔も日本人にとってはとても人気の有る観光地のうちの1つだろう。大体の人がそのごちゃごちゃした香港の街並みに魅力を感じ、ある人はショッピングに、ある人はグルメを堪能するために、ある人は映画の世界に浸るためという理由で渡航しているのだろう。そして、香港に関するガイドブックは腐るほど日本では刊行されているのは周知のとおりだ。

そんな香港の魅力に取り付かれて、暇があったら香港で香港人と戯れ、気分転換をしている人が書いた香港に関する本は、決してガイドブックとしては役に立たないと思う。ガイドブックとは偏見がなく一様に紹介をするものだが、この本では、本人の好き嫌いとこんなことが過去にあったというのを面白おかしく体験的に体系化したものであるからだ。しかし、その内容が濃すぎる。いくら香港の町が小さいとはいえ、北から南まで、本島から離島まで津々浦々まで網羅しており、それぞれの地域での主な見所はもちろんのこと、本人が過去に体験した出来事もここに記載されているのである。

好き嫌いで書いているものであるから、その情報が偏っているだろうとおもったら大間違い。香港の魅力はその1つに食べ物であるから、美味いとおもったところ、香港に行ったら必ず寄ってしまうレストランを紹介している。本を読んでいると、この人は広東語が堪能なんだろうと思うような場面が数々出てくる。よく行くレストランでの話の場面では、前に来たときにはこんなメニュはなかったのに、なぜ友達が来たときに日本語メニュがでてきたのだ!と、店員に聞いていたりするところは秀逸。離島あたりでは英語が通じず、広東語しか通じないような地域で、暑くてだるそうな顔をしていたら、店から「ビールでも飲むか?」と聞かれて対応しているのも面白い。

しかし、この本は、1993年に最初に観光されたものを文庫本にする際に情報を精査して再刊行しているものなので、今から考えると情報はちょっと古い。あれだけダイナミックに変わっている香港の町の様子を書こうとした場合には、常に新しい情報を記載しないといけないのであるが、ここに記載されているようなところはほとんど変わることがない香港を記載しているので、今読んでみても楽しい。香港に行ったことがある人であればもちろん、香港なんて興味ないっという人も、この本は読んでみるといいだろう。香港に対しての考え方がちょっと変わってくると思う。

また文章の中に出てくる作者の友達というのが、変な人たちばかりなのだ。神戸生まれの作者としては、生まれ育った神戸に近い六甲山麓からの夜景を香港の夜景と被せて説明しているが、「六甲なんて族の溜まり場でしょう?そんなところに慣れているんだから、こんな夜遅い時間に娘たちだけで歩いていても大丈夫だよねー?」という切り返しをしているところが面白い。

自分も台湾に関する本を彼女の本と同じような主観で書いてみようかなー。やっていることは基本的に変わらないし。

秘伝 香港街歩き術
藤木 弘子 著
新潮文庫
発売日: 1997/06

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