大井川鉄道の客車は、昔ながらの客車そのままである。だから、はっきり言ってお世辞にでも綺麗というものではない。SL自体が昔のものだから、客車も昔のままで楽しんで貰おうという趣向のようだ。椅子は向かい合わせの4人席で、通路を挟んで両側に4席ずつある。もちろん昔の車輌なのでリクライニングシートになっているわけがない。長距離の移動の際にはお尻が痛くなる典型的な椅子である。それに前の人の膝に絶対当たってしまうというスタイルなので、よっぽど仲がいい人同士じゃないと、この4人の空間の中にいっしょにいるのは苦であろう。こういう椅子に座ると、貧乏旅行として東京から大垣行きの夜行列車に乗っていったことを思い出す。同じような貧乏旅行のひとたちが列車に満員になって乗っていたために、通路にも立っている人はたくさんいたし、知らない人と4人の空間を作っていたし、椅子が狭いので座りなおしをすることもあまりできないし、長時間の移動なのでケツは痛くなるしと、もう二度と乗りたくない列車だという思った印象が残っている。
車輌の内部は昔の構造だからということもあろうが、照明器具についても古めかしいスタイルをしているので、本当に時代を感じさせる。この薄黒く煤けているところがなまめかしてよいではないか。洗面台やトイレももちろん備えつきになっているが、トイレはお世辞にも綺麗なところじゃない。用が足せればそれで文句はないでしょ?といっているようなくらいの、いわゆるボットン便所だ。こちらは今でも使うことができるが、洗面台についてはおまけについているようなもので、水が出ないから使用禁止である。
冷房装置がついているわけじゃないので、暑ければ窓をあけて喚起をする。しかし、なにせこの機動車はSLだ。煙をもうもうと吐いた列車であるため、窓を開けっ放しになっていると、漫画の世界じゃないが顔が真っ黒になってしまう。特にトンネルに入った場合はさっさと窓を閉めないと、煙がもんもんと車内に入ってくるので大変だ。その度に、窓を閉める人達がわっさわさと動き出すのも笑える。
しかし、個人的には石炭が燃えたような匂いというのは不快な匂いじゃないので、窓を開けっ放しにしてでも嗅いでいたい・・・と思う。が、他の人も居るので、そんなことは口が裂けてもいえなかった。
金谷駅から終点の千頭駅までの約90分間のSLのたびを満喫してほしい。でも、SLに乗っていたとしてもあまりSLに乗っているなーという気にならない。やっぱりSLは乗っているものではなく外から見るものだというのが良く分かった。
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