2006/08/31

都市対抗野球

今年も都市対抗野球というのが始まった。名前から考えると、各地の都市間の野球大会のように思われるが、実際のところは、その都市に存在する会社が代表になって、全国大会を行うというもので、高校生の野球大会が、甲子園の野球大会であるのと同じ意味で、社会人の野球大会というのがこれに該当する。自分が所属している会社もお客さんの会社も、この大会の常連出場チームであるため、毎回「今年は直接対決があるかな」というような話をするのも、ちょうどこの時期の時勢ネタの1つになっている。しかし、自分が担当になってからというもの、実際に直接対決になったことは無い。どこの会社もそうだとおもうが、個人戦じゃない限り、会社をあげて応援する場合は、会社を休んででも応援に良く風習はあるようだ。それが大きな会社であればあるほど盛んであり、このときのイベントのために社員から「カンパ」と称して、毎月少額ではあるが寄付金の募集を行っているのが実情だろう。寄付金だけでなく、試合当日は「業務命令で応援に行って来い」というのを言われたりする。野球のチームを大体の会社は労務・厚生の担当が主幹になって面倒を見ていると思うが、そういう面倒を見る世話役の担当になった場合、会社の動きとは関係なく、この手のイベントが優先的にしなければならないタスクになる。だいたいの大企業の場合はこういう実情だとおもう。万が一、小さい会社が出場した場合、社員全員で応援となった場合、仕事がその間ストップすることになるため、会社の事業活動をしつつも応援として性を出すということができるのは大企業だけのことだということが、言い換えれば言えると思う。

 お客の会社も、自社のチームも、第1回戦の試合は無難に勝利を収めることができた。ところが第2回戦の試合については、どちらも惜しくも負けてしまった。会社の関係者からすると「残念だな」とおもうかもしれないが、ところがブラスバンドや応援団そして世話役の担当者から考えると、「早く負けてくれてありがたい」というのが実際の感情だろうと思う。勝ち進んでいくと、それだけ毎回の試合に応援としていかねばならないし、事前準備もほぼ毎日のことになり、会社の仕事が全く出来なくなる。本来業務をせずにこういうイベントを優先的にしなければならなくなるので、会社からみると義務的な仕事だから大変だろう。そして、社員全員から集めたカンパ費用は、こういう裏で支えている人および応援グッヅのための費用に当てられるが、早く負けてしまった場合、カンパの費用があまることが有る。大体の場合、こういう金は最終的に何に消えていくのかは疑問だ。たぶん関係者の飲み食い代で消えていくのだろうと思う。幸い、自社もお客の会社も東京にあるため、応援の人を集めるのは簡単だし、開催している球場が後楽園のドームなので近いから、最初だけ応援に駆けつけて、そのまままた仕事場に戻ることは可能だ。ところが、地方から集まってくる会社もあるわけで、そういう会社の応援の場合は、バスを何台もチャーターして東京まで駆けつけて、試合が終わればまたそれに乗って帰っていくということを繰り返すことになるのだろう。寄付金をかなり集めないと、その手の応援費用に賄えないのだ。こう言う点から考えても、大企業でなければ人集めのための資金と人材を集めることが出来ず、さらに東京に拠点がないと、移動のための交通費・宿泊費がかなりがさバルことになる。

 ここ数年までは日本経済がどん底であったため、こういう企業スポーツが、ことごとく閉鎖された会社もたくさんあった。野球で言えば、有名なところでは、建設業界の熊谷組。野球の常連出場チームで優勝経験もあったのだが、会社業績が悪くなってしまい、明日にでも潰れてしまうかもという状態では、会社業績とは全く関係ない野球チームの存在自体が「悪」と考えられるわけで、自動的にチームは解散になってしまった。会社業績が悪くてもそれでも無理やり労務・厚生の一環としてチームの存続を続けていった会社が、いまこうして東京ドームに集まっているのだと思うが、大体の会社は多少の経済が悪くなってもあまり大きく業績に響かないような会社が出場していることが分かるだろう。最近業績がいい業界といえば、IT業界なのだが、そこに働いている人たちには、スポーツで会社に入るというような土壌がまず無いし、スポーツをしたいという気が無い人たちばかりなので、会社としては金があるが、スポーツ活動が全くないという矛盾も存在する。会社としてのチームではなく、会社が資本を提供して1つのプロチームをサポートしていくというのが多いが、それが今の楽天やヤフーといった会社の特徴だろう。(どちらもプロ野球チームを保有している。)

 社会人の野球チームは実力としてプロ野球のチームとあまり変わらないと言われている。実際に、社会人野球からドラフト制度を利用してプロ野球に入ってくる人が多いが、そういう人は直ぐにレギュラーの地位を手に入れているのが一般的だ。高校生の場合、体力作りや球に対する重さや速さが足らないために、1年目からレギュラーで活躍できるというのは実は本当に少ない。高校野球ですごく話題になっているひとくらいしかできない。プロ野球の場合は、その野球生命がとても短いため、活躍度が高いと給料も高くなるが、チームから「要らない」といわれればそのまま引退になる。そして、その後の長い人生をどのように暮らせれば良いのか考えなければ成らないということがある。ところが、社会人野球の場合、給料は会社から支給され、優勝などをした場合には、特別ボーナスとして貰える。そして、当然、通常勤務としての給料も得られる。いい会社であれば、それなりにいい給料をもらえると思われる。そして、定年までいちおう会社として働いて良いという保障はある。この点安全といえば安全では有る。ところが、人間はよくの塊の動物なので、ちょっと「自分は野球が上手いから、プロとして活躍できる実力は有る」なんていう自意識過剰でいると、実際のプロの世界で痛い目に遭い、人生の転落という人も何人も見てきた。社会人野球で楽しんでいる程度にするか、人生をかけて野球に挑むかは難しい選択だと思う。

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