会社の近くに典型的な中華料理屋がある。日本人が経営している中華料理屋ではなく、中国人が経営している中華料理屋である。神田神保町は、周恩来が日本留学をしていたときに隠れ蓑にしたり、情報交換の場として使っていた「漢陽楼」や、中国における倒清・民主化の運動として、孫文が活動するためのパトロンとして、上海に店舗を構えていた内田書店の東京本店があったり、随分前から、日本に滞在する中国人の「身元引受」先として活躍した中華料理屋がたくさんある。どれもこれも名だたる中華料理屋である。そういう中華料理屋でも、大陸系の中華料理屋と、台湾系の中華料理屋では、その店の雰囲気からして全然異なっている。
今回紹介するのは台湾系の中華料理屋である「新味園」。1号店は東京の八重洲に営業していたものを、最近神保町にも進出してきた晩生の中華料理屋である。中華激戦区の神保町によくもまぁ、ぬけぬけと新参者が店舗を出してきたものだと、その挑戦的な回転に対して、舌が肥えている神保町界隈で働いている人・住民が注目したのは言うまでも無い。場所が神保町でもメインのとおりである靖国通りにあるわけでもなく、神保町の商店街である「すずらん通り」沿いにあるわけでもない。最近できた雑居ビルのそれも地下階に店舗を構えているのである。看板が目立たないので、これじゃぁ、あんまり客が入らないんじゃないのかなーと、工事中のときから注目していたのだが、開店後、ごきぶりほいほいに吸い込まれるように昼時になるとこの店舗に客がなだれ込んでいるのを見て、「そんなに美味いのかな?」と半信半疑に思い、昼ご飯のときに行ってみることにした。
地下階に下りて行くと、店員が全員中国系の人間であることに驚く。厨房は当然ながら、フロアを仕切る人も全員中国人。そして、中は通路が激狭!いくつか個室で仕切られたところもあるし、でかい丸テーブルが店内にもある部屋もあった。しかし、でかい丸テーブルの部屋は、夜ご飯に大人数でその丸テーブルを囲むという雰囲気であれば、問題ない。問題ないというのは、一度座ると、奥に座った人は立ち上がってテーブルから離れることができないという点である。昼ご飯の時間帯だと、数人の集団でしかたぶん一緒に店舗にはいるはずがないので、違うグループの人たちが、その同じ大きなテーブルになった場合、最悪である。食べている間に、「すみませーん」と言われて中座し、席を立たねば成らないからだ。これは最悪である。他の個室の部屋についても同様で、4人テーブルならあまり意識はしないが、8人テーブルのところが多く、そちらだと大変だ。また、この中華料理屋は、昼ご飯の時間は値段880円でバイキング形式で食べられる。バイキング形式なので、客は好き勝手に料理の前で好きなものを採ることができるというのが「売り」のはずだが、バイキングとして用意されているテーブルは、狭い通路沿いにあるあめ、その通路が人1人がようやく通れる位の広さだから、列に並んでバイキングの料理を取った後、また戻って取り忘れた料理を取るということが出来難いし、手前の席が割り当てられた場合、料理を全部取って戻ってくるときに、お盆をあたまの上に載せるくらいじゃないと、人の交差ができないという不便さはある。あれは建物的に欠陥だと思う。あんな狭いところで営業をするのであれば、昼はバイキング形式で提供するのは止めたほうが良いと思う。絶対、そのうち事故が起こるはずだ。
建物の構造と料理の提供の仕方にも問題があるのだが、それよりも、店員がもっと酷い。中国系の人たちばかりが集まっている店の場合、概していえるのは「マネージメントができていない」という点である。別の店舗であるが、小川町交差点のほうに「四川厨房」という中華料理屋があった。ここも厨房およびフロアの店員は全部中国系なのだが、まず、メニュを覚えられない。メモをしているのに、間違ってメモしているらしく、客の注文したメニュと違ったものを持ってくるのは当然出し、厨房と「お前が悪い」というような喧嘩は頻繁に行っている。さらに、注文したのに、料理の提供されるまで、時間がいくら経過しても持ってこないというのもよくある。作っているほうが、注文伝票を読み忘れていたとか、伝票をどこかに捨ててしまったという場合に多くある。などなど、そういう「仕切りがうまくできない」のが典型的な中華料理屋の特徴である。この店も実はそうで、バイキング形式だから、実はあまり注文に関して神経質になる必要が無いのだが、マネージメントが出来ていないという理由は、「座るスペースがないのに、客をどんどん入店させて、結局客が座るスペースが無くて怒っている」光景を何度もみていることだ。例えば、客が4人で一緒にやってきたとする。通常は、店内を見渡して空き席があるかどうかを確認するという動作があるはずだが、店員はそんなことをせず、「はい、4名様入場ですー」と大声で言う。絶対、「少々お待ちください」というのを言わない。店内が、バイキングの料理の前で、人がぐちゃぐちゃになっているし、歩くスペースも無く座るスペースも無いのに、気にしない態度が笑える。神経質な人だったら、もう二度とこんな店に来るか!と思うだろうが、個人的には、こんな面白い芝居が見られる場所は他に無い!と、喧騒の店内を動物園のように見てしまう。
肝心な料理だが、お世辞でも「美味い」とはいえない。同時に「不味い」ともいえない。つまり、特徴が無いのだ。美味くも無く不味くも無くは、平均的といえば、言葉の響きが良いが、特徴が無いところでは味の記憶が客にないために、次回「あの店はこういう味だったから、もう一度行ってみよう」という感覚から離れてしまうのではないかと思う。店の中が喧騒なので、味より店の雰囲気のほうが記憶に残るのだろうと思う。唯一美味いとおもったのが、ジャガイモと豚ばら肉を、カレー風味のスープで煮た料理がある。名前は知らない。これだけは美味いとおもう。珈琲も飲み放題で880円なのは、コストパフォーマンスとしては良いと思う。意外と、神田神保町で昼ご飯時間にバイキングとして提供しているところが少ないので、その点では「当たった」のかもしれない。神保町におけるバイキング提供で有名な店は、麺料理で名高い上海朝市(http://www.asa-ichi.com/)だろう。新味園は、炒飯も焼きそばも点心も全然美味くない。だけど、客がいつも多くいるのは何故だろう?不思議な中華料理屋である。また後日レポートしたい。
新味園(台湾料理)
住所 : 東京都千代田区神田神保町1-37-3 BーWALL神保町 B1F
電話 : 03-3292-7068
1 件のコメント:
最近この店はブログを書いたあと、ここを見たのか知らないが、めちゃめちゃ派手な入り口に大変身。テナントビルであるにも関わらず、これでもかーと場違いな門構えになっているのが笑える。台湾やシンガポールのように電飾ギラギラというのは無いのだが、入り口全部にメニュを大々的に掲げているのは、他人ながら恥ずかしくなる。しかし、客足は衰えていない。大したものだ。
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