2006/08/31

満留賀(蕎麦)

 会社の近くに江戸の典型的な蕎麦屋がある。そんなに有名な店ではないが、神保町では数軒ある蕎麦屋だ。他の店はどうなのかしらないが、会社の近くにあるこの店舗は、とにかく昼ご飯の時間になると、蕎麦好きのおっさんたちがよく通っている。若い女性が入っているのはみたことがない。だいたいどうしようもないような年齢のおっさんばかりなのである。蕎麦屋は客の出入りの回転が速いので、ご飯の時間帯だと、この店には相当の数の客が着ているのだと想像が出来る。店内は50席くらいあるし、さらに2階にも座敷の部屋が有る。ただ、よっぽど混んでこないと2階の部屋を開放することは無い。客に開放するのは、本当に人が住んでいそうな場所を食べる場所に使っているので、もしかしたら、賄いのひとが使っている(住んでいる)部屋を昼間は開放しているのかもしれない。

 ここでいつも注文するのは、かきあげせいろ(800円)である。2枚の蒸篭に乗った蕎麦と、大きな掻き揚げのセットである。大食漢のひとにとっては量が少ないと感じるかもしれないが、個人的にはここの蕎麦の量でちょうどいい。蕎麦なので早く食べられるし、そこそこお腹も満腹になるので、時間が無いときには良く利用している。蕎麦は田舎蕎麦風の黒い麺であり、付け麺スタイルの場合、その受け汁は、かつおの出し汁であるので、風味がある。しかし、個人的には蕎麦の味が良く分からない。饂飩文化で育っているので、蕎麦文化の違い、つまり蕎麦の違いがわからないのである。長野県や山梨県などの、土地が痩せていて稲作が作れなかった地域のひとたちにとっては、蕎麦は唯一摂取できる炭水化物だった。だから、山間部出身の人は絶対に蕎麦の違いが分かる。

 冒頭で「典型的な」と書いた理由は、江戸っ子独特の口調で注文を受けたりするおばさんがいるからである。店内は大体このような威勢のいいおばさんが仕切るのが江戸の蕎麦屋。そして、その仕切っている様子が、脳みその天辺から声を出しているくらいの金切り声。「せいろ、2まーーーーい!」という声が店内に響くのは、元気があって良いと客には評判だと思う。しかし、注文を取ったあと、そのまま厨房に聴こえるように注文内容を伝えている様子は分かるが、だれが何を注文したかというのをどこにもメモをしていないのも凄いと思う。江戸の蕎麦屋にはこれもよくある光景だ。注文表はとらなくても、誰が何を注文したか、その場その場で全部記憶しているらしい。すごい。どこかの中華料理屋の中国人にその秘訣をおしえてあげてほしいくらいだ。

満留賀(まるか)
東京都千代田区神田神保町1-17

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