松江は城下町であるがゆえに、食事をする際に名店はあるものだ。その代表的なものが、松江城の傍にある「蓬莱吉日庵」というところだろう。
店の場所は地図で見るとわかりやすそうな場所じゃないかと思われがちだが、やはり城下町であるために、裏通りに入ると、もうどこがどこだかわからなくなるような作りになっている。店についても、表通りに大きな建物が存在しなければわかりやすいのだが、店に行き着くための曲がり角に大きな建物があると、横道を猫が通るように確認しながらじゃないとたどり着けないのではないかと思われる。
そんなことを言っても、「県民会館前」というバス停から裏道に入るとすぐに暖簾が掛かった店を発見することができるので、迷いそうに鳴るのであれば、県民会館前を通るバスに乗ってみるのもいいかもしれない。
この店は、小泉八雲も通った名店なんだそうで、確かに暖簾を潜った先には、ちょっと躊躇してしまいそうな雰囲気を醸し出した入り口と店内が広がっている。もともとの民家を改装して、そのまま店にしているところではあるが、まぁ、中に入ってみて、その調度品や室内の雰囲気、および窓から見えてくる整備された庭園を観るのは、優雅な気分になれる。店としては、定食を中心としたメニュを出す店と、蕎麦を中心に出す店が併用されているつくりだが、入り口が全く違う。できれば、定食の店のほうを選びたいところだ。ここでは「緑の膳」と「協の膳」の2種類を頼んでみることにした。どちらも共通するおかずが存在するのだが、決定的な違いは、てんぷらがあるかないかだ。松江・出雲にきたのであるから蕎麦を食べたいというのはわからんでもないが、そうまでして蕎麦を食べるのであれば専門店のほうに入ったほうがいいのではというのが個人的な感想だった。見た目としては、かなり多い品数のように見られるのだが、それは日本料理の特徴であって、実際に口にしてみると、ちょうどいい量だといえるだろう。皿と盛り付けの組み合わせを目で楽しませるのは、日本料理の大きな特徴の1つであるが、フランス料理みたいにデカイ皿にちょっと盛られているようなつくりではないところが良い。味付けもすべて濃くなく、薄くなく、ちょうど良いので、これは好みが分かれるところだろうが、個人的には好きな味だ。いかにも小京都の流れを汲んでいる町に根付いた料理を表しているというのがよく解った。
料理というのは美味いと口数が減ってしまうようなもので、「うまいなぁー」言いながら食べるのはなんだか下品に思えて、思わず無言でパクパクと食べてしまった。確かにマズイとそれはまた無言になるのだが、箸の進み方が断然遅くなることだろう。いろいろな品を少しずつ食べられるのもいいと思うし、なんといっ
ても美味いというのが一番いい。あとは、店の雰囲気がとても落ち着いているので、子供がぎゃーぎゃー騒ぐような環境でもないところもいい。気分がよければ庭園のほうに目線を移してみるのもいいだろう。
ちなみに、最初は角の窓が見えないような場所に座らされたのだが、「空いたら移っていいですか?」と頼んでみたところ、どうぞーっと気軽に言われ、食事の時には残念ながら席は移るチャンスがなかったのだが、デザートとコーヒーが提供されるときには、テーブルを移って、一番いい場所を陣取ってしまった。というより、向こう側が案内したのだ。あとは、庭園については、自由に出入りしていいので、庭園マニアのひとは是非広い庭園の中を歩いてみるのもいいだろう。離れの個室のほうにも行くことができるので、これを機会に見学するのもいいと思われる。もちろん店の人は快くOKする。たぶんどこのガイドにもこの店は紹介されているので、ガイドを見て来店している人がほとんどだと思われる。しかし、地元の人も、有閑マダムたちがたむろする場所としても使われているようなので、この店の人気度が高いのがわかるだろう。金がないような若い人はこういうところには普段から来ないと思う。だが、
旅行者のようなそのときだけは楽しめればいいというような人たちは、思い切ってこの店に来るのもいいと思われる。松江に来たら、昼でも夜でもどちらでもいいから使ってみたい場所の1つである。
蓬莱吉日庵
URL : http://www.horai-kitijitsu.com
Open : 11:00~14:00, 17:00~21:00
Holiday : 第2火曜日
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