2006/09/29

もやしもん


いやし系の漫画が結構たくさん出版されているが、この漫画は一体癒し系に入るのだろうか?会社で「細菌と話せる子が主人公の漫画知っていますか?」と言われたときに、そんなもんあるのか?と本気に信じられなかった。教えてくれたのが派遣の子で、それもその時に実は初めて知った事実だったのだが、「私、こう見えても農大出身なんです」だそうな。だから、シャーレに細菌を培養させて眺めているのが好きなのぉ~♪っとマジ眼でうっとり語っていた姿を初めてみたときには、「また一人、変態を発見してしまった」と考えたのはいうまでも無い。さて、その派遣の子が「私も見たことが無いんですが・・」と紹介されたのが、この本なのだが、題名がそのときには分からなかった。検索しようにも何をキーワードにしたらいいのか分からなかったのだが、偶然にも後輩がそれって「”もやしもん”っていう漫画だそうですよ」と調べてくれた。そうしたら、もう1人の後輩が「”もやしもん”なら、私3巻だけ持ってます」と連鎖反応。えっ?そんなに有名だったの、この漫画!?と脳みそがぶっ飛びそうになってしまったのだが、事実である。本を持っているという後輩も「三巻だけ」という特殊事情というのも笑えるのだが、1巻と2巻は既に結婚している旦那には不評だったらしく、さっさと捨ててしまったらしい。この3巻も捨てちゃおうかなと思っていたところですよと、危うく「もやしもん」とご対面する前に、個人的には幻の漫画に終わってしまうところだった。早速その後輩から3巻だけではあるが、借りて読むことにした。

さて、肝心の漫画の内容なのだが、噂で聞いていた「細菌と話せる主人公」というのがどういうものなのかが全然想像できなかった。吉田戦車のようなノリの漫画なのか、それともねこぢるのような少し虐待的な漫画なのかは、ぱらぱら見るまでは全然内容がわからなかったのだが、実際に読んでみるとこれが面白い。舞台は某農業大学ということになっているが、その大学に入学した「細菌の存在を見ることができる」いとも変わった能力をもった主人公を中心とした学園ドラマが舞台になっている。第1巻と第2巻を読んでいないので、最初のほうの話は全然わからないが、第3巻から読んだところによると、既に主人公は樹慶蔵教授の研究室に入り浸っているところから始まっていた。第3巻まで来ると、いろいろな登場人物が括弧たるキャラクターとして決まってきているので、それぞれのキャラが話の中でどのように演じるべきかが分かりやすい。しかし、気になるのは細菌であろう。細菌がホンモノのような形ではなく、テレビCMにでも出てくるようなかわいいキャラクターとして描かれている。本物そっくりの細菌にしたら、気持ち悪くて仕方ないからだろうという配慮のようだ。内容は細菌にまつわるいろいろな事件を巻き起こすことで、細菌がどのような影響を人間世界に与えているのかを分かりやすく説明しているのが面白い。特に食べものと細菌との関係は、自分達人間にはとても身近なことなので、なるほどーというようなことが多いのだが、作者の知識がとても細菌に精通しているため、いささか説明が多すぎて、読むのに疲れるという点は否めない。ただ、食べものや飲み物にに興味がある人で、うんちくを語りたい人にとっては、こういう「ものの本質」も教えてくれるような内容は面白いかもしれない。単行本の各ページの端にも、各種の最近の豆情報が盛り込んでいるのだが、これがウザイくらい載っているので、興味がある人やオタクのひとには楽しいと思う。細菌たちが培養されたり発酵して増えてくることを「醸し出す」という言葉を使っているところも面白い。ボツリヌス菌の巻においては、主人公が「変なのが見える」から始まり、その菌が成長する最中の過程で細菌が「醸し出すぞー!」と可愛らしく叫んでいるのが笑える。実際にボツリヌス菌が増えてしまった場合には、人間が死んでしまうのだが、そういう菌の情報をこの漫画では笑いとして伝えているのが勉強になる。

細菌というと、ばい菌類としか思っていない人が多いが、役に立つ菌も世の中にあるのだというのがこれでよくわかる。ただ、細菌は目に見えないものだから、物知りとして読むのであれば面白い。

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