2006/09/06

吉野家

 1854年の開国以来、西洋人が日本に入ってきてから牛肉を食べる文化が日本には根付いた。それまで牛は、農作業の重要な道具であるため、それを食べるということは元々思想的に存在していなかったし、仏教が根付いていた日本では殺生に当たるために、それまで牛肉を食べる文化が無かったのは必然的である。ところが牛肉文化が入ってきた後は、あっという間に日本の食卓の1つに数えられるようになった。牛丼は、まさしく西洋と和風のミックスの最高傑作だと思う。米と牛肉。なんという素晴らしいミックスだろうか。その代表的ファーストフードチェーンが「吉野家」である。「牛丼一筋80年。早いの、美味いの、安いのぉ~♪」というCMを見たのは小さい頃だった気がする。いまはそのCMは存在しない。

 ところが個人的には全然今まで吉野家に行ったことが無い。学生は金が無いが、たらふく満腹になれるご飯なら大歓迎なのだが、吉野家だけは金がない学生時代でも決していかなかったところだった。学校に通う道中に吉野家があまり存在しなかったということもあるのだが、なんとなく「吉野家=どうしようもないおっさんたちが溜まる昼ご飯を食べるところ」という固定観念があったからである。だから、社会人になって吉野家の話になったときに「行ったことが無い」というのを告白するのは、とても恥ずかしくていえなかった。でも、これって、自慢することでもないと思うので、いまとなっては何を恥ずかしがっていたのだろうと笑ってしまう。それでも、今まで1度しか吉野家に行ったことが無い。やっぱり学生のときの考え方が脳にこびりついていて、そこから消えないのだと思う。

 そんな吉野家が米国牛肉BSE問題が発生して以来、店内から看板メニュの「牛丼」が消えて久しい。ここしばらくは、牛丼を止めて「豚丼」を売り出している。一時期の満員御礼状態からは少なくなったのだが、それでもいまではすっかり豚丼が定着し、店内は満員である。下記の記事にもあるように2月1日に1日だけ牛丼を販売したときには、長蛇の列を作って牛丼を食べに集まったのはニュースにもなった。ニュースの中で涙を流して感激していた客がいたのだが、そこまでするほどの感激か?とツッコミを入れたほどである。

 また限定ではあるが、吉野家は牛丼販売の復活をするそうだ。でも、昔ほどファーストフードの定番として吉野家の人気復活があるかどうかは疑わしい。おっさんたちの溜まり場として罵倒していたのと同じように、牛丼を良く知っている世代にとっては「待ちに待った」とおもわれるかもしれないが、それ以降の世代にとっては、「あっ、そう?」と冷ややかに受け止めるのではないだろうか?やはり1年数ヶ月の販売中止は、食文化を変化させたと思う。

 以下は、その復活を伝えるニュース記事から。



吉野家「18日牛丼復活」発表、当面は限定販売

 吉野家ディー・アンド・シーは6日、米国産牛肉の禁輸に伴い1年7カ月間販売を休止してきた牛丼を18日に復活させると正式発表した。確保できた牛肉が少ないため、9月は同日だけ、10月と11月は月初の5日間販売する。12月以降は提供数を限定し、毎日販売する。並盛りの価格は禁輸前より100円高い380円とする。

 18日は午前11時から約1000店の全店で100万食販売する。牛肉は米国産が9割で、残りの1割はメキシコ産と豪州産。大盛りは480円で特盛りはなし。持ち帰りは1人4個まで。牛丼が売り切れ次第、豚丼、定食などの販売に切り替える。10、11月は1―5日に1日100万食ずつ販売し、12月以降は1日36万食を毎日販売する。

 同日会見した安部修仁社長は「かつてと全く同じ味が再現できた。牛丼がまた販売できることに感動を覚えている」と話した。一部の消費者が不安を持っているため、米国の加工工場を視察するなどして安全性を確保しているが、「不安を完全にぬぐい去るのは難しい。来店客にリーフレット、ポスターなどで地道に説明したい」とした。 吉野家が当面確保できる牛肉の量は月500トン。12月以降は当初予想通りの同1000トンに増えると見ている。

 米国産牛肉が7月27日に解禁されて1カ月余りが過ぎ、一部の焼き肉店、スーパーが販売を再開し始めた。全体的には様子見の店が多いが、牛丼チェーン最大の吉野家の販売再開は消費者、企業双方の心理に影響を与える可能性がある。

 吉野家は04年2月に牛丼販売を休止し、翌年2月に1日限定で復活した。

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