2013/05/11

リスボンのフリーマーケット

サンタ・エングラシア教会のあとは、サン・ヴィンセンテ・デ・フォーラ教会(Monastery of São Vicente de Fora)にいこうとおもったが、サン・ヴィンセンテ・デ・フォーラ教会の隣りの通りを使って、蚤の市(Feira da Ladra)が開いていたので、眺めてみた

この蚤の市はポルトガル語では「泥棒市」と呼ばれており、なにか怪しげな名前ではあるが、いちおう形式上はフリーマーケットである。しかし、個人的にはこのフリーマーケットは、じっくり各店舗を眺めてあるような場所ではないと思った。なにしろ、道端に店舗を広げるというのは、一般的なフリーマーケットではあると思うのだが、どの店も売られているものがどいつもこいつもくだらないものばかりで、誰がそんなものを買うんだろうというものばかりしか売られているようなものはなかった。オランダでも女王の日にちなんでフリーマーケットが開催されるのだが、そのときには、各家にある在庫一層処分のための感がなくもなかったが、ここリスボンのフリーマーケットは、家庭のゴミというより、その辺の道端で落ちていたものを誰かが勝手に集めてきて、それで店らしくモノを並べて売っているという感じだった。だから、このフリーマーケットに来ている人は、「なにか掘り出し物があるかな」という目的でやってきているというひとはまず居ない。どうせ売られているものはくだらないものばかりだというのを知っている人は地元の人。だから、やってきているのは一応ガイドブックにも書かれていることもあるので、どういうものかお試しで来ている観光客と、その観光客をカモとしている風来坊たちが集まっているようだった。

そして、店舗として出店している人たちを眺めてみると、意外にも黒人が多い。ポルトガルは、旧植民地にアフリカの各地域があるため、そこからポルトガル本国にやってきたという人たちが住んでいる。同じ言語だからポルトガル語の聖地みたいになっているリスボンに集まってきただけなのだろうが、リスボン自体がヨーロッパの中でも洗練はされているが時代遅れで時間が止まっているような場所であるために、経済的にも発展度が無いところで、パリやウィーンやロンドンのような先端的な場所だと勘違いしてやってきた移民もしくは不法入国者たちは、それでも自国よりは発展しているポルトガルの首都リスボンに集まってきて、あまり金儲けが出来ないということがわかっていても、もう本国には帰れないで、ここで食いつなぐしか選択が無いという黒人も多く居るんだろう。このフリーマーケットは、そんなどうしようもないような移民たちが小遣い稼ぎのために堂々と店を広げられる場所なんだろうと想像した。

だいたい黒人が売っているものというのは、どうみてもニセモノというようなものばかり。パッと見た感じではブランド物のように見えるが、あまりはっきりとわからせないように陰ったところに店を広げてニセモノだと分からないようにしている。だけど、黒人たちは目の肥えたひとたちがみたらそんなものはすぐに分かるということについては気づいていない。だから、見慣れているひとたちにとって、必死になってニセモノを売って小遣い稼ぎをしようとしている陳列物を眺めると、苦笑しか出てこないのは言うまでも無い。そして誰もそのニセモノの販売に対してイチャモンをつけたり、注意をしたり、おちょくったりしていることはない。むしろ、そのニセモノを誰が騙されて買うのかというのを遠巻きながら見ているという、上から目線での楽しみをしているように見える。

そして、ニセモノを売っている黒人たちは、ほとんどの店舗もどきの店では、開店休業状態に近いために、フリーマーケットの開催時間中、かなり暇なんだろうとおもう。ひとりで店舗をじっと黙ったまま守っているというような根性の座った黒人は全く居ない。暇だから、隣りの店の店主と「おまえ、売り上げは堂なんだ?」「さっぱりだな」というようなツマンナイ会話をして時間を潰すしかない。しかし、その黒人同士の集まりを見ていると、悪い意味、ここがニューヨークの昔のハーレムみたいに、黒人が屯っている怖い地域のように見えてしまうから、観光客としてこのくだらないフリーマーケットにきたひとたちにとっては、何も武器を持っていないと言うのは分かっていても、不気味さだけが漂う黒人たちの談笑の場にしか見えないのは、商売あがったりを助長させるものだと思った。
じゃぁ、黒人はニセモノばかり売っていて、白人のほうが売っているものは本物ばかりかというと、これまた輪をかけてニセモノ臭いものを売っているから始末に終えない。どうせなら、古着とか古本を売っているくらいならわかるのだが、誰が買うのかわからない、片足しかない靴とか、さびだらけのナイフとか、どんな保存状態にしていたらそんなに折り曲がるのだ?というくらいグニャグニャに曲がってしまっているドーナツ版のレコードとか売っているのを見かけた。

リスボンにきて記念としてどうしても金を使ってみたいという奇特な人であれば、なにかつまんない商売もどきをしているフリーマーケットの店主たちの生活を助けるという意味で、くだらないものに散財するというのもいいかもしれない。が、大金をそんなものに散財するのであれば、金は払うが品物は要らないという意識で寄付にしたほうがよっぽどいいと思う。

泥棒市(Feira da Ladra)
開催:毎週火曜日と日曜日 朝6時から夕方5時まで

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