2013/05/11

ジェロニモス修道院(リスボン)

リスボンを訪問する観光客が絶対というほど訪れるところの1つに、世界遺産として名高いジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jeronimos)がある。リスボン市内からは市電の15番に乗っていくと、停車場の目の前にドーンとド肝を抜くくらいの巨大でそして優美な白い建物が見えてくる。市電15番に乗る人のほとんどはこのジェロニモス修道院にいくひとばかりなので、ジェロニモス修道院に行きたいのに、どこで降りたら良いのか分からないというようなひとでも絶対迷うことが無い。なぜなら、電車に乗っているひとのほとんどがその停車場で降りるからだ。始発のフィゲイラ広場から約20分程度で到着するが、電車はいつの時間に乗っても混雑しまくりである。
自分たちは日曜日にこのジェロニモス修道院に行くことにしていた。日曜日の午後2時ごろまでにジェロニモス修道院のほかベレン地区にある見どころは、すべて入場料が無料になるようで、観光客の多くもそれを知ってか知らずか、この日曜日の特定時間までにタダで見たいという欲望のため、結構どこに行っても並ぶことになる。ジェロニモス修道院も普通ならもっと空いているだろうとおもうのだが、このときにも入館するまでに約40分くらい待つことになった。まるでディズニーランドのアトラクションを並んでいるのと同じくらいだ。ジェロニモス修道院の建物自体が大理石で出来ているため、脳天直撃するような澄み切った晴れの日の下では、この修道院の壁経由で日光の反射が眩しすぎるくらいであった。そこに漬け込んで商売根性のある黒人たちが「サングラスあるけど、要る?」と押し売りのように列に並んでいる人に言ってくる。そういえば、何か今回の旅行で持ってくるのを忘れたと思っていたものの1つにサングラスがあることをこのときに気づく。ただ押し売りが売っているサングラスはどこまで陽を防いでくれるのかわからないが、10ユーロという値段で売っていた。たぶん何の役にも立たないものだったろう。

日曜なので、実は朝から日曜礼拝を行っているため、誰もが簡単に修道院の中に入れるというようなことをしていない。ミサの邪魔にならないように入場制限をしているため、あの長蛇の列が出来ているということなのである。別にミサがなければそんなに並ぶことが無いと思うのだが、内部から出てきた人数だけ列で待っている人が入れるという誘導の仕方をしているので、いつまでも内部の様子を眺めている人がいたら、全然中に入ることができないということになる。もちろん、カトリック教徒のひとであれば、順番に入ったあとにミサが行われている内部のなかのさらに内部に入ることが出来るのだが、それだと信仰のほうが強くてこの修道院の中を眺めるという余裕はなくなるだろうと思う。また、列で待っていると、列の先頭では案内の人が「いまはミサをやっている時間だし、あんまり長くいると後ろで待っている人たちがなかなか入れないので、さっと出てきてくれ」というリクエストを一方的に言って来る。これは全員に言っていて、英語のほかにフランス語やドイツ語やイタリア語の各国語で説明をしているが、そんな説明を真面目に守る人はどこにいるんだろうと思う。

修道院はマヌエル1世の号令で、ヴァスコ・ダ・ガマの偉業をたたえるために建てられたもの。この豪華な建物は、ヴァスコ・ダ・ガマが開拓したインド航路によってポルトガルに多大な胡椒による利益を得た金によって作られたものである。以降、大航海時代によってポルトガルが南米とアジアに拡大していき、その航海の安全を祈願するためのものに段々使われ方が変わってくる。しかし、ヴァスコ・ダ・ガマがインド航路を開拓したからといって、簡単にポルトガルがインドの交易を独占的に手に入れることができたかというと、それはない。独占的な交易を生むまでには各国との軋轢は避けられないのだが、ここではあえて説明は避けておき、歴史に詳しい人の説明に代えさせてもらうか、または別のところで記載したいと思う。いずれにしても、その後の航海時代に手に入れたアジア諸国からの香辛料、アフリカからの金、マデイラ諸島からの砂糖という金になるものばかりがポルトガルのものになったことによって、あの小さい国が金持ち国家になったことは事実である。

修道院に入ると、すぐ両側に大きな石棺が見えるのが分かる。入口を入って左側がヴァスコ・ダ・ガマの石棺で、右側が大叙事詩を歌い上げたルイス・デ・カモンイスのもの。世界文学が好きなひとは知っているとおもうが、一般的な日本人にはあまり聞き慣れないこの人は、実はポルトガル史上、もっとも偉大な詩人であると言われるひとであり、大航海時代のポルトガルのことを書いた叙事詩「ウズ・ルジアダス(Os Lusiadas)」を書いた人である。修道院自体が大航海時代を奨励し、その偉業をたたえるために建てられたものであることは既に述べたとおりだが、それを文字として収めた詩人もこの修道院でたたえられるべきものとして崇められたモノなのだろうとおもう。
 
修道院の中にあるサンタマリア教会は、三廊式の教会であり、天井が1つの大理石というわけじゃく、まるで熱帯の樹木かとおもうような不思議な形をしているのだが、どこまでも装飾しないと気がすまないというものなのか、これがマニュアル様式というものなのかわからないが、あらゆるところで幾何学模様が煩くない感じで作りこんでいるのがわかる。
中央の祭壇部分についてはもちろんキリスト教国であるために、キリストが中心ではあるのだが、あくまでもここれは大航海時代を称えるものであるが、その成功は網であるキリストの加護の下に反映できたものであるという意味で、天井と背景のところにキリストkに関する肖像画が掲げられている。これは大聖堂や教会にあるようなものとは全く異なっている。ただ、中央にある鐘みたいなものは一体なんなのだろうか?とおもった。
実はこの修道院、教会の部分だけを見てもらっては困る。回廊の部分に付いても見事なので絶対に見てもらいたいところだ。回廊自体もかなり大きなつくりになっているのだが、2階建てで八角形になっているこの回廊、是非中庭を覗き込むような形で建物を見て欲しい。これもどこをとっても装飾だらけになっているので、思わず「うわぁー」と絶対唸ることだろう。特に窓の部分に該当するところの模様についてはもう見事としか言いようが無い。雨が少ない地中海地方だからこのような大理石の遺跡が風化せずにずっと残っているんだろうと思う。
これだけの装飾を施した建物全体が5年や6年でできるかというとそんなものは無理。やっぱり50年は掛かっているが、それは当然だろうと思う。ただ、この修道院を担当することになったデザイナーは、かなりプレッシャーを感じただろうし、出来上がったものに対してかなりの自慢になったことは間違いないだろうと思う。

ジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jeronimos)
URL : http://www.mosteirojeronimos.pt/en/
開業時間:10:00~17:00(10月から5月)
     10:00~18:30(5月から9月)October to May 
休業日:月曜、1/1, 5/1, 12/25とイースター
拝観料:7ユーロ(ベレムの塔とのコンビネーションチケットは10ユーロ)

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