2009/09/13

亜細亜ふむふむ紀行


アジアなんて物騒で洒落てないとおもっていたために、これまで全く興味がなかった作者が、知り合いの1人が旦那の仕事の都合でベトナムへ転勤になったことをきっかけに、全員が定期的に集まれる場所として選んだのが香港という、その選び方からして、人生舐めているでしょう?というような、特にバブルの時代の遊び方をしていたひとたちの内容である。

本を読んだところ、筆者はこれまでヨーロッパばかりに注目していて、海外に行く=ヨーロッパに行くという典型的な日本人を演じていたようだ。でも、なぜかブランド物を買い漁ると言う事はこれまでしなかったようで、香港に行くと決まったときには、他のよく居るお姉ちゃんたちと同じように、エルメスだグッチだのブランド物を買い漁ることに命を掛けることを思いつく。一人の女性がどたばたするのではなく、その人の仲間全員がはちゃめちゃなキャラクターを持っていて、日本に居ると大人しいのに、海外に行くとなにかのスイッチが入ってしまい、これまで見たことがないような一面を見せて全員を困惑させるというひともいるから、海外旅行は面白い。

登場人物が同じ年代の同じ性別の人たちというわけではなく、老若男女が入り交じって、そのグループがいろいろなことをしでかすから面白い。だいたい団体旅行に行くと、かならずその中で1人、グズなやつが出てくるもので、やっぱりこのグループの中でも出発時から「遅れた!」と騒ぎ、他人に迷惑を掛けるひとが出てくる。そして、恐ろしいことに、香港でいちばん有名なペニンシュラホテルで、ハイティーを全員に奢らせられるという罰ゲームを与えられるというのは、自分たちのグループを見ているようで面白かった。

話としては、香港/澳門編・ソウル編・大阪編の3種類の話題にわたるのだが、香港/澳門編と大阪編が面白い。ソウル編は焼肉のことばっかりしか書いていないので、無視。まぁ、もともと歴史や文化のことを紹介するような本ではないので、それだけで読むのに耐えられないものなのだが、香港/澳門と大阪編は、そこを訪れる旅行者が土地の雰囲気に飲み込まれて、最終的には馴染んでしまうというのを上手く演出しているなと思った。特に大阪編は、冒頭の新幹線で大阪へ移動する際の状況から、「いかにも大阪」という状況が文字を通して想像できるくらい明快な雰囲気が読み取れる。新幹線でハゲオヤジと若い姉ちゃんが隣同士で座って、いちゃついていたなんていうのは、ドラマに出てくるような典型的な不倫カップルか、単なる商売女に手を出した金を持っているおっさんという組み合わせであるのは言うまでもない。そういう典型的な状況を体験できるのが大阪なんだと思う。ディープな大阪の部分は全く出てこないのだが、大阪に行ったことがある人、大阪に住んでいる人にとっては「あぁ、そういうのはあるある」と納得行くものばかりだろうと思う。

文章に勢いがあるので、270ページあまりの本も一気に短時間で読み終えることができた。実際に台湾旅行の際に持っていったのだが、高雄から台中へ移動する電車の中だけで読み終えてしまったのである。決して読むのが早いほうではないのだが、夢中になって文章に目が行ってしまった。おもわず台中で降りるのを忘れるところだった。

亜細亜ふむふむ紀行
群 ようこ 著
出版社 : 新潮文庫
発売日 : 1994/08
ページ数 : 279ページ

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