2009/09/13

マレー半島すちゃらか紀行


女性が書いた紀行文はつくづくつまらない作品になるということがよく認識できた一冊だと正直感じた。この本は3人の著者が同一旅行で感じた内容を記載しているという意味では、同じことをしているときに、互いにどのように感じていたのかというのがわかってしまうという意味では面白みがある。しかしながら、書いている本人にとっては、どたばたコメディのような事象があった場合でも、それを著者本人の視点で書いているため、その視点が他者が読んだ場合でも面白いものになるのかどうかという意味では、この本は全然面白いものではないと感じられる。というのも、せっかくマレー半島をいろいろなルートで回って堪能しているのにも関わらず、マレー半島ではなくてもいいだろうというような内容に全体的に感じるからだ。確かにこの場所で、こんな珍事が起こったというのは文章として残っている。しかし、その珍事の事象を表現するのに深さがないのだ。珍事はたいてい予想もしていないような事態が起こるから珍事なのであって、あわよくば期待しちゃいたいというような、事前に起こるだろうと想像できる事象であれば、それは珍事ではないと思う。奥深さがなんとなくないなぁと感じるのである。想像できるだろうという出来事を、さも「偶然こんなことが起こった」なんていうようにシナリオ化されてしまっては、オチがわかっているギャクを見せられているようなもの。わかっているオチを面白おかしく脚色するなら良い。おもしろくないのだ。

さらに言うと、同一著者が書いているわけじゃないので、ある人がノリ良く書いた文章を読んだ読者が、そのままのノリを持続して続きを読もうとすると、違う文体にいきなり変わるために、読む側から見ると一瞬困惑してしまう現象が起こる。そして、また慣れた頃に、さらに違う筆者が出てくるのである。もう頭の中が波に乗れないサーファーのような状態になって本を読むので、一気に読み進めるということが出来なくなる。たぶん、個々で一気に書いたほうがおもしろい本になるのだと思うが、こんなつまんない3人が(旅行記の中では4人で旅行している)文体を異なる勢いで書いているのは、良くない。どうせなら、3人の雑談形式で「あんなことがあったよねー」と井戸端会議にしたほうがまだよかったのではないかと思う。そのほうが、会話をしている人たち同士の腹の探り合いと反省会となる座談会に臨場感が出てきて、面白いのではないかと思う。

全体的な批評は書こうとしたらいくらでも書けるのでこのくらいにして、内容といこう。

マレーシアに関する本が世の中に出回っていないというのは、以前のblogでも書いた。そんな中でマレーシアを旅行に行った感想を書いたり、現場の生の情報が見られる本としては、少し友好かとおもう。ただし、マレーシアだって、日々発展している国であるために、ある程度参考になる本では合っても、現在のマレーシアを精密に反映しているかというと、それは嘘になる。ただ、情報が少ない地方の様子を知るためには、良い体験をしてそれを紹介している本であるとは思う。ただ、読みにくいだけ。

出発はクアラルンプールから始まり、マレー鉄道に乗って山のほうに行き、そのあと東海岸の島のほうにいくプランになっている。クアラルンプール以外は、ほとんどのガイドには記載されていないような内容なので、これはこれでちょっとした情報を記載しているのではないかとおもう。よくありがちな、どこどこにいって、何を買って、何を食べたーというようなつまらない旅行記ではないところが、まだ良い。食べる・買うという女性っぽいところはあまり出てこないのはよいとおもうが、この本の最初のほうで、いきなり「うっ・・・」と拒否感が出てくる部分がある。それは占いだ。登場人物の紹介の仕方が、「〇〇座、B型」というような、いかにも女性が好きそうな内容を書いているところが嫌になる。こういうのを止めればいいのにと思う。

マレー半島すちゃらか紀行
出版社:新潮文庫
著者:若竹 七海, 高野 宣李, 加門 七海
発売日: 1998/09
文庫: 322ページ

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