2010/09/28

未来警察

香港映画の醍醐味はなんといっても武器を使わない武道を使ったアクションムービーだ。格闘技なしの香港映画は、香港映画じゃない。これは香港映画のスタッフがハリウッドのスタッフになっても変わらないスタンスだとおもう。いつから「香港映画=アクションムービー」の図式を作られたのかわからないが、そこは、ブルース・リーとジャッキー・チェンの2人の功績は大きいと思う。人間と人間が本当に手足を使って戦うのは、ローマ時代のコロッセオで奴隷の剣闘士たちが戦うところを観る興奮と合い通じるものがある。武器フェチであれば、アメリカの戦争映画のように、ドンパチ激しいものが好みだろうとおもうが、個人的には肉弾戦になる香港映画のほうが好きだ。言い換えれば、香港映画のくせに、武器ばかりを使ってしまう映画だったら、見る気がしない。

さて、そんな前振りをしてしまっているが、シンガポール航空の機内でみた香港映画「秘密警察」について考察したい。確か、同名のアメリカ映画がかつてあったような気がするが、そのリバイバルなのだろうか?と一瞬思った。基本的なコンセプトは未来の警察を舞台にするドラマだということは変わらないが、話の内容は全然違うと思う。

今回主役に抜擢されているのは、香港映画の雄であるアンディ・ラウ。いかにも香港人臭い顔をしている男で、日本でも人気がある俳優の1人だろう。アンディ・ラウが出演する映画だから、もちろん手足を使った生の格闘が観られると期待するではないか。そして、共演者は台湾の女優のバービー・スー。いわゆる大Sと呼ばれている人である。この二人の競演が中華圏ではどの程度期待度の高い映画として認知されているのかよくわからない。そして、台湾のイケメン俳優・賀軍翔も出演している。どちらかというと、アンディ・ラウよりマイク・ハーのほうを観てしまいそうだ。

と書いたものの、実際、これを書くまでマイク・ハーが出演していたということに全く気づかなかった。実際には、アンディ・ラウとバービー・スーが所属する警察署の署長役として出演している。映画中では、飛び降り自殺を敢行しようとする女性を屋上から救出するとともに、「もう誰も私を好きになってくれない」と嘆いている女性に「僕が好きだ」と意味不明な喜劇というかコントを繰り広げて、なんじゃこれ?と言いたくなる様な役を演じていたあのボケ署長だったとは気づかなかった。マイク・ハーは、かっこいいイメージしかなかったのに、あのボケ署長の役は、確かに見た目は色男ではあるが、なんだか間抜けな人にしか映らない。マイク・ハーをそんな変な役に使った監督を恨むと勝手に憤慨してしまった。あと、昔のかっこいいマイク・ハーのイメージしか持っていなかったが、それから比べてオッサン化したから、映画を観ているときには全然気づかなかったのかもしれない。大丈夫か、マイク・ハー!

映画の内容は、近未来の香港を舞台にしている。当然このときには、香港ではなく中国バリバリになっていることだろうが、そんなことは一切無視である。警察が悪と戦うのは何も未来だから起こるわけではなく、警察システムが出来上がったときから、こんなのは続いている。ただ違うところは扱っている武器と、悪人の犯罪の目的だろう。未来なので何でもありの設定ができるという意味では、ストーリーは好き勝手に作れる。香港で行われた歴史展に改造人間化した悪党たちが地下からやってきて、香港市長をさらおうとするところから始まる。警察は、全員出動でこの改造人間化した4人組から市長を守ろうとするのだが、4人組が、まるでX-Menみたいに人間とは思えないような動きをしているために、生身の人間では歯向かえない。なんとかショベルカーにたくさん烏賊のようなアームを付けた車で対決するが2人までしかやっつけられなかったところから、アンディ・ラウ自体が人造人間に改造されて「スーパーマン」として活躍するという、なんだこりゃという映画だ。

話としては、ドタバタコメディに近いというべきなのか、それとも恋愛ものといっていいのか、なんだかわからなくなってしまうのだが、はっきりいってB級映画であることは間違いない。こんなものがヒットすること自体がおかしい。そして、冒頭で書いたが、香港映画だから格闘のシーンが気になるのだが、生身の体ではなく、決して飛び道具は使わないが、人造化した半武器で戦うので、戦うシーンが出てきてもあきれる。その動きがスムーズでなく、初期のアニメかーというくらいぎこちない動きをするために、観ていてもっとイライラした。

未来の警察官で改造されたアンディ・ラウが扮するロボ警官が現代にタイムマシンで移動してきて、これまたタイムマシンで過去に戻ってきた悪党と戦う際に、携帯カメラの動画を使って子供が撮影をして「すげぇスーパーマンを見たよー」と話題沸騰になる。それが同級生の女の子のお父さんがなっていたという想定なので、話がいっきに広がってしまうのだ。そして、悪党の弱点が心臓の部分をぶったたくと、機能停止で死んでしまうということを知るまでの長いこと、長いこと。殴る・踏みつける・ぶった切る、なにをしても死なない悪党にたいしてなすすべがないと半分諦めているところ、偶然、空飛ぶパトカーを使って悪党の1人を建物の壁との間に挟まって殺すというシーンで、心臓部分に当たったことから偶然知るという、これまためちゃくちゃなストーリー。

今回わかったのは香港映画でも、こんなくだらない映画があるだなということ。もっとまともな映画かと思って期待してみた自分がバカだった。これだったら、眠い目をこすって2時間くらいの長さの映画を観ているより、さっさと機内で寝てしまったほうがよかったかもしれない。

それにしても、マイク・ハー、もっといい映画を選んで出演してほしい。このままだとコメディ俳優になってしまうぞー。顔がカッコいいんだから。

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