2009/08/02

迷宮都市を歩くヴェネチア


一度行ったことがある場所でも、改めて紹介されてみると、そんなのあったっけ?と思わず考え込んでしまうようなものところっていうのは良くあると思う。ヴェネチアには確か2度行ったことがあるのに、アカデミア美術館やサンマルコ広場のことは分かっていても、それ以外に、なにがあったっけ?と考えたときに、意外に記憶に無いということが良く分かる。

建築家からみた海外の都市の紹介というのは、目線が一般的な観光旅行者とは違う目線であるために、普通のひとたちが見る世界とは違う世界で都市を紹介してくれるため、紹介された内容を見ると、「おぉ、そういうのがあったのかー」と本当に感慨深くなる。それが本著だ。

ヴェネチアは誰もが知っている水の都であり、世界の大都市の中では、唯一車が存在しない都市である。その車がないという点において、「道」と言う考え方が他の都市とは全然違う考え方で形成されており、車の変わりに船がその主役を得ているわけで、船の世界と人間の生活がどのように関わっているのかを考えさせてくれる。

ヴェネチアに行ったことが有る人であれば誰もが納得することが1つある。それは橋がたくさんあり、そして歩きにくいということだ。運河があちこちに張り巡らされており、それが一般の都市の小道の変わりに運河があるというのはおわかりのとおり。そのために、運河を越えるためには必ず多かれ少なかれ橋が存在する。そして人間はその橋を渡るのか、それとも船を使って対岸にいくのかどちらかである。そして、人間が船ではない場所を歩くときには、どこまで行っても真っ直ぐな道というのを発見することができない。ちょっといくと、すぐに曲がり角になっていたり、運河が道を阻んでいたりするのだ。まるで金沢にある武家屋敷の道のようだ。つまり、外敵がやって来た場合でも守ることが出来るつくりなのだ。

そしてヴェネチアは至るところでマリア像を見ることができるようだ。マリア像は、中華世界だと媽祖と同じように扱われる場合が多いのだが、水の世界なのでマリアを守り神として崇めているのだろう。街の中の建物や橋の袂には必ずといっていいほどこのマリア像があるらしいが、ヴェネチアに行ったときには全く気付かなかった。時には祠として、時には道祖神のような形で街のあちこちにあるために、ヴェネチアの人はマリアに守られているという自覚はあるのだろう。

水の都であるヴェネチアは、広い土地を探すのはとても難しい。しかし無いことは無い。それが広場なのだ。通常、色々な人たちとの交流はバールで行なわれると思われがちだが、やっぱり人間、太陽の下で大勢が集まるほうが楽しいに決まっている。バールで飲みながらワイワイやるのも良いのだが、闇な中で物事を決めているような気がしてならない。その点広場は色々な人が集まる好都合の場所だし、情報交換の場所でもある。しかし、土地が有り余っている田舎の土地とは違うため、草で覆われた土地があるわけではないのがヴェネチアだ。限り有る広いスペースをどのように使うかはヴェネチア人の考えようだとおもう。

本はほとんどの写真をカラーで紹介している珍しいタイプだ。是非ヴェネチアに行く人はこの本を持っていくことをお勧めしたい。一般的なガイドでも十分なのだが、この本を持ってヴェネチアの迷宮都市を歩くというのはなかなか楽しいことだと思う。誰も気付かないような場所にある価値有るものを捜し歩いて、「ふふふ・・・」と一人で怪しく楽しむのもいいだろう。しかし気をつけてもらいたいのは、この本は建築家の目線で書かれているヴェネチアの紹介であるため、ヴェネチアではこういうモノを買ったほうがいいとか、ここでご飯を食べたほうがいいとか、いわゆる観光本では全然無い。逆にいうと、建物好きな人はヴェネチアに行くべきだし、この本をもっていろいろな時代の要素を盛り込んでいるヴェネチアの建物様式を見て歩くというのはいいことだろう。

迷宮都市ヴェネチアを歩く-カラー版
陣内 秀信 著
出版社:角川oneテーマ21
出版日:2004年7月10日

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