2009/08/02

観光コースではない台湾


台湾は50年間の日本による統治により、ありとあらゆるインフラや制度が整い、高水準の教育と治安および蔓延していたマラリアの撲滅と、日本の治安について色々批判はあるにも関わらず日本は、当時の国家予算の1/3をはたいて台湾の整備を行なっていったことは有名だ。しかし、戦後やって来た国民党とその徒労たちによって、ことごとく日本の素晴らしい遺産はぶっ壊され、中国大陸の文化がそのままごっそり持ってこられた。日本が大嫌いな蒋介石の妻である宋美麗は、日本と日本に関連するものをことごとくぶっ壊すように関係者に指示した。したがって、日本の遺産であったものがこのときに結構紛失したといわれる。

ところが、台湾人はそうではなかった。二二八事件を皮切りに、国民党軍のやっていることは日本と違い、全く野蛮でどうしようもない役立たず集団であることが分かったのである。そうと分かれば、日本は良かった!と回顧的に思うのは当然であり、一度ぶっ壊したものを復元したりして、かつての日本に対する思いを思い起こさせるような運動も各地で広がった。

しかし目立った日本の遺産はなかなか見つけられない。よく見るとあんなところにも、こんなところにも日本文化が残っているというのは台湾中で探すことができる。本著は、隠れた日本文化と日本が残したものの遺産というのもを、台湾各地に渡って紹介している。

なにも日本が全ていい事をしたという意味のものばかりを紹介しているわけではない。霧社事件のような悲惨な事件の爪あとについても当然紹介している。日本万歳と賞讃するような中身ではないことを先に述べておきたい。

台湾は小さい島なのにも関わらず、見所は満載である。こんなに文化的にバラエティに富んだ場所はないとおもう。台湾的なところと言うのは、なかなか表現するのは難しい。有る意味日本的に近かったり、有る意味中国的だったりするのも面白い。その味付けとしていい味を付け加えてくれるのが本書だと思う。日本人の眼に映る台湾での遺跡を日本人がいまどのように感じるかは、台湾人ではなく日本人として当然知っておくべきことであり、感じたことは各個人として違っていても、それが間違いだとは誰も言えない。当人が感じたことがすべて正しいからである。ただ、歴史的な事実は変えられないし、後世にも伝えなければならないものだと思う。日本的なものがどこまで台湾で残されるのかは注目するべき事象だと思うが、残っているからこそ、台湾が台湾らしく生きているものであり、これが中国大陸と同じようなものばかりしかないところであると、本当に台湾は中国に飲み込まれた形になってしまう。

観光コースでない台湾―歩いて見る歴史と風土
片倉 佳史 (著)
出版社: 高文研
出版日: 2005/07

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