マラッカからシンガポールに行く際には、一番楽で便利なのがバスである。これはネット上で検索すればたくさん情報が載っているので、すぐに知りたい情報は見つけられることができる。マラッカに関しては一番情報が載っている「Melaka Guide」を見ると、707トラベルというところのバスが一番乗りごごちがよさそうだというのは、渡航前に情報を仕入れていた。バスの予約はマラッカに行かないと無理だということはわかっていたので、マラッカに着いたらバスの予約だけはしておこうと思っていた。
しかし、マラッカのバスターミナルというのは、泊まっているホテルの場所からかなり離れているところにある。ホテルからバスターミナルまでは、ローカルバスで移動するか、またはタクシーで一度移動しなければならないということはわかっていたので、面倒くさいなと思っていた。
そこでホテルの人に、シンガポールまでバスで行こうと思うのだが、予約はできますか?と聞いてみた。こういうときにこそ、ホテルの人を使わない手は無い。聞いた相手が悪かったようで、「それはコンシェルジェに聞いてほしい。詳しいことはわからない。」と言われてしまった。そう言われてしまったら仕方が無い。コンシェルジェに聞いてみた。ついでに、ホテルを経由していくバスはありますか?と聞いてみたところ、あるとのこと。おぉ!それは便利だ。バスターミナルまで行かなくてもいいというのであれば便利なこと。どこの会社のバスで、何時出発でいくら掛かるのかと聞いてみたところ、Glassland というバス会社のバスで、一人40リンギットだそうで、バスは12時半「ごろ」玄関の目の前から出発するので、12時15分くらいまでにロビーに来ればいいという。コンシェルジェいわく、これは現金でいま払ってもらわないと処理できないから、いま現金をくれとのこと。なんだ、それ?少し怪しい気がする。でも、予約と切符の手配をしてくれるというのであれば、試してみることにした。お金を渡すと「夜には部屋にチケットは置いておく」と言った。まぁ、コンシェルジェの顔も名札の名前を覚えたので、いざとなったらホテルに訴えてやるともおもっていた。
ちなみに、バスの値段は同じ路線で、行きと帰りでは値段が全く違う。シンガポールから来る場合は38SGDもかかる。マラッカからシンガポールに行く場合の倍の値段である。シンガポールから物価の安いマレーシアに行く人が多いからなのか、シンガポールからの値段は高い。逆に、シンガポールは海外からシンガポールにやってきて、シンガポールに金を落としてくれる人たちは、大いにウェルカムなので、そのためにマレーシアからの値段は激安なのかもしれない。
ところが、その晩になっても部屋にはチケットが届いていなかった。やっぱりホテルの人間とはいえ、騙されたか!?と半分思っていたが、文句を言うのは翌朝またそのコンシェルジェを見つけたときに言ってやろうと思い、翌朝早速コンシェルジェのところに言ったら、さも頑張ってチケットを取ったかのような顔をしながら「これだ」と渡してくれた。「おいおい、昨日は部屋に持ってくると言ってたじゃないか」とちょっと文句を言ってみたところ、相手は一瞬たじろいだが、すぐに体裁を整えて「チケットは問題ない、そう、問題ない」ともう会話になっていないコメントが返ってきた。
チケットを見ると、ピンク色で、向こうが透けるように薄いペラ紙だったのだが、そこには、全然関係ない人の名前が書かれていた。それも女性の。Ms. Chen なんていうのが書かれていたので、「これ、全然違う人の名前だ」と言ったところ、「関係ない、問題なし」だそうだ。なんだ、それ?意味がわかんない。もしかして、この女の人から奪い取ってきたのかともおもっていたが、チケットには座席番号に「9B/9C」というのが書かれていて、いちおう席は決まっているらしい。バスに乗るときに、このチケットを見せれば問題なしとのこと。どこまで本当に信じていいのかわからない。それでもう一度何時に出発かを聞いてみたところ、12時半ごろかなー、だと。昨日と言っていることが違うじゃないか。大丈夫かぁ、このひと?とそのときは思う。
チェックアウトをクラブフロアで済ませて、いちおう12時ぴったりくらいにロビーに到着した。荷物は重かったので自分で持ち歩くのではなく、ホテルの人に持って降りてもらおうと、フロントに頼んだ。そして、ホテルのドアマンに、「シンガポール行きのバスに乗るのにどこで待っていたらいいですか?」と聞いたら「おまえらかー!ドライバーが待っているぞ」とのこと。は?出発はもっと後じゃないのか?と一瞬ビビる。しかし、トランクはまだ部屋の中にあるようなので、荷物はまだ下りてきていないとドアマンに伝える。露骨に不快な顔をされたのは、いまだに覚えている。その後、ようやくトランクが下りてきたときに、今度はバスのドライバーが血相を変えて「ハリーアップ、ハリーアップ」と急かす。自分たちに全く非があるとはこちらは全然思っていないので、なんでこんなにいろいろな人に怒られるのかが全くわからない。全部コンシェルジェのおっさんが適当なことをこちらに教えたことに始まるので、コンシェルジェのオヤジに文句を言ってくれとおもった。
バスは大型バスで、席は横では1席-2席の3席分しかなく、縦は全部で9列しかない。だから、座席はかなり広く、まるで新幹線の席くらい前後が広い。そして、リクライニングはほぼフラットになるくらい倒れるので、シンガポールまでの運行時間が4時間だというのを聞いていたが、それも苦痛ではないなと思った。おまけにトイレも当然付いているので、最近、長距離移動のときに、妙にトイレに行きたくて仕方なくなるときが続いたので、今回もどこで途中休憩するのかわからないようなバスに乗るとすると、もし万が一、急にトイレに行くことになったら絶対トイレがないと死んでしまうと思ったからだ。トイレがあることでかなり安心した。さらにいうと、座席には飛行機の座席みたいに音楽やテレビの音声が聞こえるようなイヤフォンジャックと音量調整が付いていた。バスはジョホール・バル方向へ、高速道路をひたすら南下していく。しかし、高速道路からの車窓は、クアラルンプールからマラッカに途中で1度休憩を入れる。Pusat Perniagaan というところにある高速道路に隣接したサービスエリアで休憩をする。ここでは約30分の休憩だ。このサービスエリアは、とても中は広くて、お土産屋やご飯を食べられるところなど、まるで本当に日本のサービスエリアと全く同じである。本屋やレコード屋なども一緒にあるので、マレーシアで買い忘れたものがあるなら、ここで買ったらいいと思う。バスはとうとうマレー半島の最南端であるジョホール・バルの国境に到着する。ここまででだいたい3時間くらいである。途中休憩を入れているので、実質2時間半くらいだろう。ジョホール・バルの国境では、全員がバスから降りて、出国審査を行う。この出国審査はとても簡単で、パスポートとパスポートに挟まれていた書類だけを提出すればOK。出国審査を受けたあとは、そのまま、またバスに乗るのである。
バスは全員が乗り込んだことを確認すると、バスはジョホール水道を渡って、いよいよシンガポールに到着する。ずいぶん昔にシンガポールからジョホール・バルを炎天下に歩いて渡ったことがあって、もう二度と歩いて渡らないと誓ったことがあったことを思い出した。やっぱりバスでジョホール水道を渡るのは簡単でいい。
シンガポール側の入国審査は、マレーシア側とは打って変わって、全員がバスから降りる際には、手荷物のほかにバスのトランクルームにトランクを預けているのであれば、それも持って降りなければならない。シンガポールに入国なので、もちろん入国審査のための入国カードも書かねばならない。これはバスで移動する際に先に書いてあったので、何の問題もなかった。問題はここから先である。
入国審査自体はほとんど混んでいなかったのだが、入国審査後の荷物検査の際に、なぜか係員に別室に連れて行かれた。何の悪いこともしていないのにである。荷物の中に怪しいものがあったのかと聞いたら「違う」という。一緒にいた友達も同じように連れて行かれた。トランクと一緒に別室に連れて行かれて、言われたことは「ランダム検査だ」らしい。そのためになぜか指紋押捺もさせられた。シンガポールに何度も入国・出国をしたことがあるのに、こんな屈辱ははじめてである。いかにも怪しそうな顔や身なりをしているのであれば、「おまえ、ちょっと来い」と言われて別室に連れて行かれるのであれば理解できる。そんなに汚い格好をしていたわけでもないし、どう考えても、一緒のバスに乗っていた中国系のやつらに比べて、普通の格好をしていたし、挙動不審な行動もしていなかったのに、なぜなのか全然理解できなかった。それも顔写真とかを撮られるならわかるが、指紋押捺である。それってほとんど犯罪者に適用されるための手段だろう。屈辱的にもほどがある。これ以来、シンガポールに対する印象は格段に下がった。もう二度とこんな国に来てやるものかとさえ思った。
ほとんど不貞腐れた状態でバスのほうに戻っていくと、今度はバスの運転手が「おまえら、なにしていたんだ」という無言のプレッシャーをかけてくる。それも腰に手をあててにらんでいるような感じだ。今度のことも自分たちが悪いわけじゃない。悪いのは、このシンガポールの入国審査官たちである。こいつらが勝手に人のことを犯罪者のように扱ったために、バスに戻れなかっただけなのにーと、心に思った。
あとでいろいろな人に聞いてみると、日本人のくせにバスでシンガポールに入ってくるということと、大きなトランクを持って入国してくる際に、普通の日本人だったら飛行機で来るはずなのに、飛行機を使わないでバスで移動するということは、怪しいものを運ぼうとしているに間違いないと考えられたのでは?と言われた。それって、シンガポール人が勝手に日本人に対して思っている妄想でしょう。押し付けられても困る。おかげで、こちらはこれからシンガポールでは指紋が常に確認させられるかもしれないのだ。シンガポールに導入されているシンガポール人にのみ利用可能な無人入出国審査のゲートが指紋によって使えるかというと、そうではないのである。何の利用価値もないのに、指紋だけとられることに対して、こんな侮辱的なことはない。
バスは最終的に、シンガポールの Golden Mile Complex に到着する。Golden Mile Complex は最寄りのMRTの駅は Bugis か Lavender になるが、どちらも駅からは少し離れているので、移動するのはちょっときつい。だから、タクシーを利用したいところである。
Melaka Guide
URL : http://tonyjsp.com/melaka/index.html
Glassland Bus Corporation
URL : http://www.grassland.com.sg/golden-schedule.html
2 件のコメント:
こんにちは。
もうすぐ女一人旅でKLからSPRへ南下バス旅行を考えていたので、参考にさせてもらいます。
シンガポールは一見先進国ですが「明るい北○鮮」と現地日本人に呼ばれているくらい政府の統制がきついらしいので、嫌な思いをされたようですね。私も心して旅してきます!
バスでの移動は快適ですが、交通事情によって時間が不安定なので、時間に余裕をもってくださいね。
シンガポールの入国で、この時はランダム審査で別室に連れて行かれましたが、数度しかシンガポールに行ったことがない場合には全く対象にならないとおもいます。なぜなら審査する側からすると、1度しか来ないような人間の指紋を採っても徒労に終わるからです。逆に言うと、シンガポールに一生に1度くらいしか行かないひとはほとんど無視されるだけですね。
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