2011/01/02

2011年新春顔見世興行(末広亭)

毎年お正月になると新春顔見世興行の落語を聴くために、新宿末広亭に行くことにしている。もう、今年で何回目の参加になるのだろうかは分からない。そして、毎年、正月3日に見に行くことにしていた。元旦は、家でのんびり、飲んで・食べてでぐだぐだして1日が終わる。2日目は、家族全員で初詣に行くことにしていたからだ。4日から仕事があることを考えると、必然的に3日がぽっかり空いてしまうので、結局3日に見に行くことになったのだが、毎年1月3日は、NHKの中継が入るために、その中継が入るたびに、末広亭には爆笑問題が紋付袴姿でカメラに映るためにやってきて「すごい盛り上がりです」とか、末広亭の前で中継が行われる。お昼12時過ぎごろから番組はやっているのだが、その中継のたびに、それまで近くの珈琲屋で寒さを凌いでいた爆笑問題が出てきて、ちょこっと喋ってまた珈琲屋に引っ込み、中継されるたびに人垣ができてうっとうしくなる。もちろん、2時半からは末広亭の中から中継され、そのときに、末広亭からの紹介のときには爆笑問題がカメラに向かってなにか喋って、そのあと数組の落語家や漫談家がテレビ用の喋りをして笑いを掻っ攫う。ただ、そのときに出演する芸人に、必ずといっていいほど、つまらないケーシー高峰が出演して、エロ医者トークをする。ご年配のかたなら、また出てきた!と、ほとんどお決まりの芸人の登場として喜ぶのだろうが、自分から考えるとこれほどつまらない惰性で仕事をしている人っているんだろうか?となんとなく早く辞めてくれと思ってしまう。つまり、正月3日に末広亭に行くと、つまらない芸人やテレビ用に編修された特別の芸人が出演するために、純粋には楽しめない。おまけに、最近は3日にテレビ中継されるからということがたくさんの人に知られてきたために、なにを目的にきているのか良く分からない人たちがたくさん開店前から並んでいるために、かなーり早くから並ばないといけない状態になっていた。

もうさすがに長時間並ぶのは勘弁して欲しいと思ったし、どうしようもないような芸人をわざわざ見るために並んでいるわけではないと思うようになってきたので、今年はいつも初詣に行っている日程を変更して、正月2日に末広亭に行くことにした。

1月3日に行くのではなく、2日に行ったからか、末広亭の傍にある伊勢丹は、朝からめちゃくちゃ人がたくさんいた。末広亭で並ぶ前に伊勢丹のトイレを借りようかと思っていたのだが、伊勢丹の中では全く歩けないし、一方通行になっていたため、これでは目的地のトイレにいけない。なので、慌てて外にでて別の手段を考えた。それだけ、1月2日というのは、東京ではすっかりデパートの発売りの日というのが定着してしまっている。ただ、最新のニュースでは、もうこの初売りというイベントは無くなるようだ。なぜなら、福袋とか初売りとか、そういう名目で人集めをしたとしても、売り上げはあっても利益が全く出ないということを「ようやく」デパートは気づいたらしく、利益が出ないのであれば、単なる従業員が忙しくなるだけであるので、従業員に休暇を与えるためにも、一般企業と同じように4日からの営業にするというのを軒並み発表したからだ。昔のデパートはどこも一般企業と同じように4日からの営業だったような気がする。それがどこかが始めた途端に、横並びで正月から営業開始し始めたのが、この騒ぎの発端。田舎に帰らず(本当は帰れずだとおもうが)東京に居残りになっている暇人たち用に開業したのが始まりなのだろう。

本来の末広亭の話からだんだんずれてきたので、話を末広亭の興行のほうに戻すことにする。

今年の正月顔みせ公演の出演者のリストは、こちらのサイトに記載されている通り。毎日見に行っても、出演者が変わっていたりするので楽しいと思うが、そこまでの暇と時間が無いのが惜しい。毎日3部構成になっているところ、2部と3部は通しで見ることができるので、2部から見に行くという人は多い。もちろん1部にお目当ての芸人が出演されているのであれば、それをみに朝から行くのはいいだろう。毎年2部から入館することにしているので、今年もそれに合わせていくことにした。しかし、毎年めちゃくちゃ並ぶことは知っているので、末人亭には11時ごろには到着するように行ってみた。
末広亭に到着したのは時間ぴったりの11時であった。毎年この時間になっても、すでに2部から入館したいと思っている人たちが並び始めている。しかし、並び始めているといっても10人から20人くらいの程度であるので、最終的な人数の多さに比べればたいした量ではない。だから早めに行くのはいい。今年は3日ではないのであるが、きっと混んでいることだろうと思っていたが、なんと先頭から2番目という位置を確保した。一番最初に並んでいた女性が、入口からちょっと離れたところで本を読んでいたので、もしかしてこの人かなーと思いつつも、劇場の人に「2部を見たいのですが、どこで並んだらいいです?」と聞いてみたところ「あの女性の後ろに並んでください」とのこと。劇場の人はちゃんとお客さんのことを観察しているのである。立派だ。第1部の始まりは11時からなので、ちょうど1部をみるために入館している人たちがまだいた時間帯の話である。
寒風さらけ出しているところで長時間を待っているのはとても辛い。おまけに座るところも無いという悪条件あるので、結構しんどいものだ。常連の人だと、釣りなんかに使われる小さい折りたたみの椅子を持って行ったりする人も要るので、長時間並ぶのを覚悟に見に行くべきである。一番の問題は、トイレの問題だろう。1人で行った場合、トイレに行きたくても、その場所を離れるわけにはいかないし、周りの人に「場所をとっておいてください」といっても、そんなに他人のことが信じられるとは思えないからだ。だから、できるだけ複数人で行くべきである。自分としては今回最初に自分が並んで、あとから友達が暖かいお茶を持ってきて並んでくれたので、ご飯を飲み物を確保できたのは嬉しいことだ。後ろに並んでいた男の人も、最初はひとりかなーとおもっていたら、行儀の悪いクソガキ2人と買い物大好き奥さんとその母親が後から合流してきた。だんなに並ばせておいて、本人と母親は伊勢丹で買い物をしてきてからの合流ということである。お父さんも大変だ。またこのクソガキが、泣くわ、わめくわ、じっとしていないわ、人に体当たりしても謝らないわと、サバイバルナイフでも持っていたら、頭の天辺からザクッと刺したくなるような気分を何度も思わせてくれた。さて2時半になったので、入場料を払って入館。一番前の席に座ると、台座の芸人からいじられるので、そうならないためには3列目くらいが一番いい。そこで、3列目の真ん中を陣取ってふんぞり返ってみることにした。クソガキたち親子は、脳みそゼロなので、一番前に座って、相変わらず喧しくしている。親も馬鹿だが子も馬鹿だ。

客が全員入る入らないに限らず、幕は上がる。バイオリン漫談のマグナム小林の今年のネタは「暴れん坊将軍」。なんでもかんでもバイオリンを弾いて笑わせてくれる人で、大学時代に、バイオリンでサザエさんやドラえもんを弾いていた友達を思い出してしまった。そして、今回はさらにタップシューズを履いて登場したので、何をするかと思ったら、馬が駆ける様子をタップにしてバイオリンで暴れん坊将軍のテーマを弾いていた。馬の鳴き声もバイオリンでやっているのも面白い。

漫才は、夫婦漫才の「新山ひでや・やすこ」。この2人、実は初めて見たような気がするのだが、なかなか面白い。基本的には自虐ネタが多いような気がするが、一生懸命やっているところが好感が持てる。独特の喋り方をするために、それがまた愛嬌の1つになりそうなのだが、流行らなさそうなギャクを一生懸命やっていたのがいじらしい。

手品は、いつもながら松旭斉八重子。個人的には「やえこちゃん」と心の中では思っている。そして、いつも手品の芸に対して、客の反応はとても薄い。オーソドックスの手品に対して反応が薄いのは、きっとミスターマリックやセロのせいで、手品師の手が目の前で見られるような手品に客がなれてしまったからなのかなという気もする。手品の好きなおばさんが舞台でなにかしているというくらいしか客がおもっていないところなのだろう。でも、本当の手品はやえこちゃんがやっているようなのが手品なのである。アシスタントの人も、実はアシスタントといえども手品師で、いちおう弟子らしい。しかし、たまにタネを明かすようなしぐさをして笑わせるところが良い。周りの反応は薄くても、わたしゃあんたの芸は楽しんでるよ、やえこちゃん。

誰もが知っている人といえば、春風亭昇太。NHKの中継があるときには、昇太の自虐ネタが爆笑を誘うのだが、この日の昇太は、独自の創作落語だった。それも時間が限られているので、創作落語でも短めのタイプのもの。へー、昇太も真面目に落語を正月からやるんだなーというのは改めてプロの凄さを感じた。それまで創作落語というのはあまり個人的には評価しなかったのだが、たまにこういう落語を聴くと楽しいのが良くわかった。

隣のばんごはんでおなじみの桂米助も出ていたのだが、これもNHK中継が入る場合には、しゃもじ持って訪れた家の話をしたりするのだが、この日は定番中の定番の古典落語のネタをやっていた。真面目にやっていたので、なんでかなーと思う。この日の客層は、いまいちノリが悪かったからかもしれない。たくさんの人数が入っているのにも関わらず、あまり大きな拍手や「待ってました」というような声も懸かりはしなかったからだ。定番の落語のネタをやれば、客も盛り上がるだろうという思いだったのだろうが、どうも間違ったらしい。

あまりテレビではお見掛けすることは無いのだが、こういう落語を見る機会のときに必ず見ることができるのが、桂歌春である。ボソボソというような語り口で、少し前のめりになって話をするスタイルがちょっと好きだ。新春落語で話す内容は、毎年同じのような気がするが、毎回聞いたあと、なにのネタを話していたのかすっかり忘れてしまう。まぁ、落語というのはその場が楽しければいいのだ。テレビでも是非見てみたいところである。
オオトリは、やっぱり桂歌丸。毎年、第2部の主任を務めているので、他の人よりもネタの時間が長いのである。前半は、一般的な時事ネタとか客いじりをすることで客を笑わせて、そのあと、知らない間に落語のほうに入るという話し方は毎年同じである。でも、最近耳障りだなと思ってきたのは、「映画館に行って、となりで煎餅食っているババァがうるさくてねー」という話から「人が話をしているのに、モノを食っている客もゆるせないんですよー。あっ、決してそこでお菓子を召し上がっているかたのことを言っているわけじゃありません」といういじり方も飽きてきた。ただ、今年の歌丸の落語は、正直「もう、この人死ぬかもしれない」というのがなんとなく伝わってきてしまった。もうすっかり入れ歯なのだろうという話し方は仕方ないとしても、用意されているお茶を、二度も手をつけていた。普通、落語ではお茶が用意されていたとしても、これは途中に1度しか手をつけないというのがエチケットのようである。そこをどうしても歳のせいで、口の中が乾いてしまうために、その渇きを補うために二度も手をつけたのだろう。

面倒くさいNHKの中継もないし、見たくもないような芸人が出るわけじゃないので、やっぱり3日に見るのではなく2日に見るのが良いと思った。残念なのは、客層。やっぱりミーハー的にテレビに映るかもしれないというのを期待して会場にやって来た人たちは、何でもかんでもキャーキャー喜ぶのだろうが、落語好きな人が本当に集まった場合には、やっぱり盛り上がりも今ひとつになるんだなーというのが良くわかった。