正月に落語を聞きに行くのがここ数年の定例行事になってしまった。以前は落語なんて、あんなの爺が聞くようなものと思っていたのだが、日本語の奥深さを知るようになると、落語は言語・文化・時代背景・心情・思考と、いろいろな面から日本人であることを考えさせてくれるいい材料なのだと知ったからである。
別にいつ観に行くかというのは決まっていないのだが、正月にだいたいすることは、毎年決まっているために、落語を観に行くのもいつも1月3日になってしまう。友達にも前々から日程指定で約束をして待ち合わせる。年々落語の人気が出てきているようで、特にここ数年は落語を題材とするドラマが放映されたことにより、お姉ちゃんたちも挙って見に来ていた。去年もそうだったのだが、1月3日には、なぜかNHKのテレビ中継が入るらしく、新宿末広亭の近辺にはテレビ中継車らしき車がたくさん停まっていた。
去年のテレビ中継では、春風亭昇太と中川翔子が司会をしているのを生で見たが、今年は爆笑問題だった。末広亭の前で並んでいると、爆笑問題の2人が法被・袴の姿で並んでいる人たちの横をつかつかと歩いていく。テレビの人たちは全体的に小さい人たちばかりなのだが、この人たちも例外に漏れず小さい。テレビの中で田中は「ちびちび」と馬鹿にされているが、本当に小さく、チビといわれても当然だと思った。たぶん150cmもない。子供と思われても仕方ないのはよくわかった。爆笑問題の2人は、普段から騒がしいのかと思ったら、カメラが廻っていないときには全く大人しく、カメラが廻り始めた途端にテンションが高くなるという、感情の激しさにはプロだなと感じた。何回か、中継のために末広亭へカメラが振られるたびに、爆笑問題の2人が中継現場に現れては、また控え室に引っ込むということをやっているので、2人も大変だと思う。テレビは見ていないのだが、話を聞いていると、どうやら大阪側の中継は、ムーディー勝山と友近だったらしい。このコンビも楽しそうだ。何回かの中継の際に、爆笑問題のほかに、ベテラン芸人である、ケーシー高峰とナポレオンズも一緒に中継に加わっていたが、人込みにもみくちゃになりながら見事中継を終えたようで、これも大変そうだ。
さて、肝心の落語だが、11時ごろから並んでいたので、前のほうの席を見事ゲット。去年は並ぶ時間が遅かったので、桟敷席しか座れなくて辛い思いをしたので、どうしても椅子に、それも舞台に近いところで座りたいなと思っていたのである。あまり舞台に近いと、芸人にいじられる可能性があるので、いじられない程度の距離を保ちつつ、できるだけ前のほうの席を選んだ。案の定、一番前に座っている人たちは、いろいろな芸人にいじられてていて、それを楽しんでいた人も居るが、自分が同じ立場だったら、面倒くさいと思ったに違いない。
並んでいるときにも五月蝿く売り子が居たが、落語協会特製の福袋を3000円でーすとして売っていた。中には何が入っているのだろうと思っていると、歌丸の扇子とか手ぬぐいとからしい。いらねーよ、そんなもの!限定販売だからということなのだろうか、並んでいるときや、中入りのときにも「買ってくださいー」と下っ端のひとたちが売っていた。でも、そのときの売り方があんまり面白くないところが、もっと喋りの達者な芸人らしくないとも思う。
今回出場していた芸人のラインナップは、やはり毎年違うためか、見たことも無い人もいたし、この人また居たかーというような人もいた。メンバーを見て驚いたのが、笑福亭鶴光が出演していたこと。あのひと、関西の落語家なのに、なぜ東京の舞台に出ているのだろうか?と疑問視した。もしかして上方落語協会を破門になったのだろうか?謎である。オールナイトニッポン時代のエロトークになるかと思ったら、そうでもなかった。でも、客を相手に喋る技術は達者であり、なかなか会場を盛り上げるのにはひと役を買っていたと思う。残念だったのが、去年は見ることができた老夫婦漫才師が今年は見られなかったことだろう。その他は、落語あり、漫才あり、手品ありなどなど、色々な芸人を見ることができ、お正月から笑わせてもらった。
しかし、第2部の歌丸はまだ新年挨拶のような喋りをしていたのだが、第3部のトリを務めていた三遊亭遊三は、真面目に古典落語の「たらちね」を披露した。その日のオオトリであり、それも正月なのにこんなしんみりとした題材を選ぶのも、その感性が分からないなーとおもいつつも聞いてしまった。傍に座っていた年配の人たちは、ボロボロ涙を流していたのが印象的だった。
それにしてもこういうお正月公演の場合には、珍しい人も見られるところが嬉しい。テレビでしか見たことが無かったのだが、大きなのこぎりを楽器に見立てて演奏するマグナム小林を生で見られるなんていうのは感激そのものだった。あんなものを楽器にしようとした発想が素晴らしい。本人曰く、「これは楽器のためののこぎりで、昔は結構良く使われていたんですよ」というが、そんなもの嘘に決まっている。しかし、名前に相応しくないよぼよぼのジジィであるマグナム小林が言うから、なんとなく説得感がある。それから曲芸を披露したボンボンブラザーズも生で見られるというのもすごい。昔は、染の助・染太郎がこの手の芸では有名だったが、何も語らないボンボンブラザーズのような芸も見事だろう。それから、漫才や漫談や落語とは違う語りとして、宮田章司の売り声も見事だった。寅さんで出てくるような、あの掛け声を披露してくれるものだが、あの手の語りが廃れていくのは悲しいものがある。
この日は第3部まで見てしまった。終わったときには、夜の21時を過ぎていた。帰りに、前にいったことがあるトルコ料理屋のハッサンに行ってみた。行った途端に「ラストオーダーです」と言われて、早いなーと感じたのだが、時間が時間なので仕方ないだろう。夜になると、トルコ人が多く来ているのが見られた。和風とトルコの組み合わせの1日だった。
余談だが、末広亭所有のチャリを発見した。