2007/12/02

台湾新幹線に新サービス


台湾新幹線に関するニュースが2件あったので、それについて言及したい。

台湾ではいま誰でも乗りたいと思っている台湾新幹線だが、これはもちろん日本人でも同じこと。台湾南部との距離を十分近くさせた手段として、これは台湾を移動する上で有益な手段になってきたからだ。1日の運行本数も増えたし、最初の頃に文句を言われた安全性も十分に保ってきていたし、さすが日本の新幹線技術の結晶だといえよう。

日本人が台湾新幹線のチケットを買うのは結構難儀だったが、いまではすっかり事前にネットで予約も購入もすることができるほど、ネットが充実になってきた。台湾旅行前に台湾新幹線を使って高雄方面に行きたい場合には、今までは現地台北に行かないと買うことができなかったし、それだと週末の激混みの時期にぶつかった場合には絶対に乗れないということがあったが、それは解消された。

次にサービスとして登場したのが、老人向けの低賃金サービス。開通当初から65歳以上の台湾人に実施してきた「シニア運賃(敬老票)」というのを、外国人の乗客にも適用するということ。その運賃設定は、片道通常運賃の半額。これはかなりいい企画だ。日本の新幹線では例え65歳以上でも、このような制度は適用されない。ドル箱路線だから値段を下げる必要が無いというのが理由らしいが、台湾新幹線は規格をした。すばらしい。購入する際には、西暦で生年月日が表されて、65歳以上であることが証明できるパスポートなどの顔つき公的書類を窓口に提示する必要がある。

台湾を訪問するジジィやババァたちもこれを大いに使って台湾南部への旅行を楽しんで貰いたいものだ。

もう1つの台湾新幹線に関するニュースは、日本の新幹線にも合い通じるものだ。

それは台北=高雄間を結んでいる新幹線は、同じ距離感で利用度の多い飛行機との競争によって生まれた企画で、今まで存在しなかったというのが不思議だったのだが、台湾新幹線に今回はじめて「自由席」を導入したというもの。急な出張で高雄方面に移動するビジネスマンを獲得するための手段ということらしい。12両編成の車輌のうち、10号車から12号車の3両が自由席として用意しているというもの。ビジネスマンだけではなく、急に高雄のほうに行ってみたいなと思う観光客に使えるものだろう。

ちなみに指定席券の料金も12月末までは2割引にするというキャンペーンを展開中で、台北=左営間で1090台湾ドル(約4200円)に設定したようだ。これは安い。飛行機の値段より安くなっているのは、便利だ。飛行機の場合は、搭乗前何分前にはチェックインをしなければならないし、ゲートを潜らなければならないという制約があるが、新幹線の場合もある程度、事前に切符の購入は必要なのだが、飛行機ほど時間に制約が無いのが便利である。

しかし、いずれにしても台湾新幹線の台北以外は、既存の駅とは全然違うところに新幹線専用の駅を作っているので、町まで移動するのがとても不便だ。これは台湾でいま計画中の新幹線と既存路線を結ぶ短距離路線の建設を待つしかない。

ANA株買い増し

この2週間は日本経済はジェットコースターなみに、日経平均が上がったり下がったりしている。アメリカのサブプライムローンの影響で、アメリカ経済と連携しているからが原因なのだろうが、これだけ上げ下げされると、一攫千金を狙っているデイトレーダーにとっては、画面から目を離せないといっても過言でもないだろう。それも急激な下げを記録していたために、「あーっ、高すぎて手が出ないや」とおもっていた銘柄が、一気に買える価格まで落ちたので、また買うチャンスが増えてきたというのは嬉しいことだ。原油高のような鉱物資源への投資が世界中で動いているために、株式が軽視されたというのも原因なのだろう。

個人的にも、もうちょっと買い増ししたいなとか、配当金が多い銘柄を調査をし始めていたところだったので、こういう下がった時期に株を買うのはいい事かなとおもった。銀行に寝かしていても意味が全く無いので、投資して稼ぐのはいい事かもしれない。もともと出張が多かったので、航空会社株を買ってその優待券を買うことで、出張時に金を節約したいということから株主投資をしたのがきっかけである。別に金儲けしたいというのがきっかけじゃなかったのであるが、配当金の低さにヘキヘキしていた。調べると他にも配当金が高いものがたくさんあることを発見。手ごろな値段で配当金と優待サービスがあるのを調べると、ちょっと楽しくなる。

そうは言っても、何かの機会に親と国内に行こうとした場合、いま手元に半年で4枚分の優待券しかないため、自分の分も入れて最低でも6枚にしたいという欲望もあった。6枚あれば、年間2回は国内旅行が出来る計算になる。使える時期はいつでも可能なので、年末年始だろうがお盆だろうがいいし、変更することも可能だし、こんな便利な制度は無い。毎年どこかに親を連れて行っているという親孝行者なので(自称)、そう考えるとあと2000株は最低でも買って置こうと思った。値段から考えるとANAよりJALの株価が低くてお手ごろである。さらに、意外にJAL愛好家というのが多く、周りに北海道や九州出身の人も多く、彼らが帰省するときに優待券があったほうが、お金をセーブできるということから、前から「優待券がゲットできたら売ってください」と言われていた。金券屋にもっていっても、1000円にしかならないし、これをまともに金券屋で買うと今は1万円になるという自体なので、買うほうからみると、5000円~6000円くらいで売ったほうがお得だし、特割がつかえない期間でも使えるとなると重宝だ。売るほうから見ても、1000円にしかならないのに、5000円くらいで売れれば、儲けものだ。需要と供給が合致しているので、JAL株の株主優待券は結構売れる。しかし、なぜかANAについては売れない。だから、自分で使うしかない。自分で使う機会というのは、出張があれば使えるが、最近は出張が無いので使うときが無い。となると、家族で使うのが一番だ。

一時期450円を超えていて、もう買い増しするのは嫌だなとおもっていたが、11月の三連休前に411円までANA株が下がったので、これは買うしかないと一大奮起して、早速買い増しをした。今回は4000株の買い増し。結果的には11月22日に412円で買い増ししたため、手数料とか入れると415円で買い増し。前回買った株とあわせると、購入単価が428円になって、なかなか良い資産運用になったかと思う。ANAやJALに株価の高価を期待しているわけでもないので、配当金と株主優待券しか興味が無い。

他に別の銘柄に手を出そうかと思っていたが、あまりにも急激に株価が上がり始めたので、その投資のきっかけを失ったので、しばらくは様子を見ることにした。JAL株も買って置いて、また別の人に株主優待券を売ってもいいのだが、なにをして買っているのか意味が無いので、最近は、JAL株を売ってしまおうかとも考えている。海外線にも使えるのであれば、重宝できるのだが、それが使えないので意味が無い。

ジャニーズの欲望


毎日のテレビでジャニーズのタレントが出ていない日というのはまずありえない。しかし、ジャニーズのタレントが出ている番組ほど、全然面白いと思わないのは何故だろうか?メディアに露出しすぎだから、飽きてきたからなのだろうか?それとも、元々能力も無いのに、ジャニーズの営業があまりにもテレビ局に入り込んでいるために、否応なしにテレビ局もジャニーズのタレントを使わざるを得ず、そのために視聴者無視でジャニーズを儲けさせるための番組が作られているからなのだろか?そんな疑問を全部解消してくれるのがこの著作だろう。

ジャニーズの悪口を言うマスメディアはまず存在しない。ジャニーズを敵に廻すと仕事が廻ってこなくなるとも言われているくらい、ジャニーズ事務所は事務所自体がヤクザ的な役割を演じているからなのだろう。ジャニタレが事件を起した場合の揉み消し方が上手いのは有名だが、そのタレントの復活劇も見事に仕組んでいるというのも良くある。しかし、上手く行かなかったのは最近の例では、KAT-TUNの赤西仁だろう。言い換えれば、ジャニーズの思惑としてはポストSMAPとして大々的に売り込みたいKAT-TUNだが、上にSMAPが居るために、その座が空かないからいまいちまだKAT-TUNが、芸能界では無くてはならない存在になれない証拠なのだと思う。いまだにKAT-TUNの6人のメンバーが、10代以外の人に「他の人はだれ?」と思われているのがその証拠だろう。しかし、ジャニーズ事務所はたくさんの露出を使って彼らの存在をアピールしているのだが、SMAPを消さない限りにおいては無理だろう。しかし、ドル箱のSMAPを消すことは、ジャニーズ事務所にとっては土台無理なことだろうし、SMAPのメンバーが自らジャニーズ事務所を辞めるということはまずありえない。しかし、30歳も過ぎて、未だに「アイドル」なんて言っているジジィアイドルであるSMAPよりは、ジャニーズ事務所として早く後継者として若いタレントを売り出して、SMAPなみに長期間長持ちさせたいという気持ちもあるため、その葛藤に苛立っていることは確かだ。

しかし、何故ここまでどこのチャンネルを捻ってもつまんないジャニーズタレントが出てくるようになったのか、そして、ファンはどうジャニーズ事務所と絡んでいるのかというのかが、熱狂的なファンじゃない人間にとっては、どうも納得がいかないところがある。まぁ、どの宗教においても、そのグループにどっぷり嵌ってしまうと、その泥沼の存在自体も、ましてや周りのことも見え難くなるのは当然だろう。

じゃ、こうも似たようなキャラクターが無いタレント集団に対して、熱狂的なファンがずっとついているのだろうかという疑問から、本は解消してくれる。売り出し中のタレントに対して、さも「賑わっています」とアピールさせるためのファン動員も仕組まれた創価学会の選挙戦と同じようなものだという理屈がある。ファンは、本当はSMAPのような超有名グループのコンサートのいい席を取りたいがために、どうでもいいようなジャニーズのこれからのタレントのコンサートやイベントに参加しているようだ。そうしないと、お目当てのタレントのイベントに参加する資格さえ与えてくれないのだ。これはジャニーズ事務所が自ら宣伝をする必要も無く、ファンを動員して無理やり、ファンを自らの代わりに宣伝部員として使っているのだ。

しかし、ジャニーズ事務所は常に成功をしているというわけでもない。過去に数々の失敗もしていることも明記されている。しかし、その失敗を土台にどのようにしたら解決できるかという底力も持っているところがジャニーズ事務所が、いまだに芸能界を君臨している理由なのだろう。反町隆史がジャニーズ事務所に元々居たことは有名だが、辞めたあと圧力をかけて芸能界に登場させないようにしても、実力がある芸能人なのでファンは黙っていないし、現に彼は今でも活躍している。しかし、ジャニーズ事務所との関係は良くない。DA PAMPについても同じで、ジャニーズ以外の男性グループは、絶対許したくないジャニーズ事務所にとっては、各方面に圧力をかけたのだが、DA PAMPは踊れるし、歌は本当に上手いし、本当に実力があるので、ジャニーズ事務所の圧力は「あほ」と一般人に認識させてしまったのも分かりやすい例だ。どんな大舞台でも口パクしか演じないし、中途半端な踊りしかできないタレントよりも、本当に上手い演技をするタレントに対しては、一般人はファンとしてちゃんと根付くのである。

何を演じても「キムタク」キャラから脱することが出来ない木村拓哉だが、いちおうドラマは過去は「当たっていた」と言えようが、ここにきて、あのワンパターンな演技に嫌気を指している一般視聴者は多いだろう。ちょっと前にあった「華麗なる一族」では、キムタクだけが現代人の風貌と演技をしており、「お前は少し前の時代を演技できないのか?」とそのタレント性の限界をのぞかせるようなドラマがあったことは記憶に新しい。しかし、昔からのファンは多い。雑誌an-anが毎年「抱かれたい男1位」にしているのは、あれは本当のファンが1位として投票していないのは誰が見ても分かることで、ジャニーズ事務所が裏で金を積んでいるということと、an-anの雑誌編集者がジャニーズ事務所に傾倒しているからなのだ。どうでもいいようなジャニタレが上位に出ているのを観れば、一目瞭然だろう。なぜ、当時は超ブレークしていた速水もこみちより、ブラウン管を通してわがままぶりと育ちの悪さを露呈しているバカ・自称アイドル中居正広のほうが上位なのか、未だに理由がわからん。顔も悪いし、能力ないし、声は汚いし、作り笑い丸出しの気持ち悪い顔をたまに雑誌に出ているのを見ると腹立つのに、なぜあんなのが上位?とおもう。

音楽CDに関しても、ジャニーズ事務所が総力をかけて発売最初の週は1位になるように金を積んでいるのも分かりやすい。しかし、1位を取ったという事実だけは残るので、ファンを騙すことは容易だ。次週になったらランクが圏外になっている場合の多くは、まさしくこの金で買ったランクなのである。本ではその仕組みを詳細に書いているので、興味があるひとは是非読んで貰いたい。

あとは、ジャニーズ事務所に関連する全ての会社とその会社が何を行っているのかが克明に書いているのも反ジャニーズの人間にとっては面白く読める。ジャニーズエンターテイメントを設立したいきさつや、そういえば、いままでavex traxを使っていたのに、いつの間にジャニーズエンターテイメントになったんだっけ?という理由がこれを読めばわかる。金をいかにジャニーズ以外のところに落とさせないかという戦略的なところは勉強になる。まさに、西武王国が過去に君臨していたときと同じような構造なのが面白いのだが、西武の例を見ていると、所詮、化けの皮が崩れたときに崩壊するのだろうというのが想像できる。

サクサクっと読める本なので、是非ブックオフとかの本屋で見つけたら買うことをお勧めしたい。自分もブックオフで100円で買って知った本だが、ジャニーズ事務所の圧力によってこの本は絶版になっているはずなので、見つけたら買っておこう。

ジャニーズの欲望―アイドル資本主義の戦略と構造
鹿砦社編集部
鹿砦社 1998年12月出版

タブーの世界地図


世の中どうしてこう言うことが起こるのだろう?と不思議なことは多い。それも国家間の場合の出来事はまさにそう思うのが多いのだが、それは大体において、事件が起こっている国家間の歴史的背景や文化的背景が原因であることがほぼ100%である。歴史的背景というなかにはもちろん利害関係というのも大きく入っているのは否めない。現在だと、一番分かりやすいのは、アメリカを中心とした利害関係の縮図だろう。中東利権に関しては、アメリカは自分たちが主導的に行っているのではなく、イスラエルが背後でコントロールしているためにアメリカが否応なしにイスラエル以外のアラブ地域といまいち良くない関係になっているし、中国に関しては「我は一番」という中華思想のために国境線を巡る紛争は昔から収まっていない。普通の解説書であれば、それぞれのジャンルにおいて1冊の本ができるものを、脳みそがアホでも分かりやすいように書かれて、まとめているところが読みやすく書かれているのがこの本である。

だいたい国家間で気になることがまとめて書いているのだが、分かりやすく解説しているのはテロリストの世界地図だろう。イスラム世界がいまでは有名になってしまったが、テロリスト集団はなにもイスラム教信仰者ばかりではなく、キリスト教世界にもいるし、当然日本にもいる。世界で「日本赤軍」といえば、昔は無く子も黙るテロリスト集団であったことは言うまでも無い。他にも世界中にはテロリスト集団がわんさかいるのだが、彼らが何を攻撃対象にしているのか、どこで活躍しているのか、過去にどのような活動をしたのかというのもまとめられているので分かりやすい。

国家間だけではなく、1つの国のなかでの内紛が何故起こって他国の軍隊が乗り込んでくるようになったかという例を、アフガニスタンと旧ユーゴスラビアの例で挙げており、それぞれの勢力がどう分かれていたのかというのも書かれているのは、あーっ、なるほどーと納得できる。内紛や内戦というのもは、日本では戊辰戦争以降起こったことが無い過去の遺物になってしまっているので、現代人にとってはあまりピンとこないのだが、世界中では普通にいまでも内戦・内紛は起こっているのが常識だ。特に経済発達が未熟なアフリカやアジアでは多い。さらに本当は起こっているのだが、情報統制のために外部の人間がなかなか知ることができないという内戦・暴動・内紛というのもかなり多い。中国や隣国のカザフスタンやキルギスがまさしくそうだろう。所謂「もみ消している」のだから。

最後には、軍事国家や軍事産業、そして軍事同盟にもメスを入れており、誰が世界の紛争をコントロールしているのかというのが一目瞭然の地図があるのも圧巻だ。結論としてアメリカが世界最大のテロ輸出国家だとしている。アメリカの軍事産業は、就労人数から考えると、アメリカ経済の中心でもあるので、世界のどこかで紛争でもしていないと、アメリカ製の武器が輸出できず、失業問題になってしまうからである。だから、アメリカは10年おきくらいに、「武器在庫一層廃棄セール」と銘打って、どうでもいいところに、必要以上のミサイルや武器をぶち込んで、最初の名目はなんだったか後になったら誰も分からない状態の泥仕合を仕組みとして定期的にやらないと国内経済が持たないという状態なっているのが笑える。しかし、自国への攻撃は絶対に許さないという単なるわがままぶりを世界中に振りまいているのも更に子供だましで笑えるところだ。そういう解説も書いているので是非一読して欲しい。

500円以内にこれだけ「あっ、なるほどー」と納得してしまう内容が書かれているのは他に無いと思うし、あっさり読むことが出来るので、行き帰りの電車の中で気軽に読んで貰いたい。別に右翼・左翼のどちらにも傾倒している内容ではないので、素直に読めることだろう。

国境を越えるタブーの世界地図
世界情勢研究会編
永岡書店
486円

丸かじりドンキホーテ


世界最大量の出版物というのは、キリスト教の聖書であることは誰でも分かる。しかし、その次に多い出版物というのは何だろうというと、意外にほとんどの人は何だろうか答えることが出来ない人が多いのではないだろうか。実は、「ドン・キホーテ」なのだそうな。東方見聞録とかシェークスピアのいずれかの書物か、またはゲーテかジュリアス=シーサーのガリア戦記あたりかなーと思う人は多いだろうが、どれも違うのだそうな。ちなみに、日本での最大量出版物は、これも意外に知られていないが、「電話帳」である。誰も「購入する出版物」を対象としているわけではないのを改めて言及しておく。

しかし、名前は知っていても、ドン・キホーテの物語とは一体どういう内容なのか答えられる人はどれだけ居るのだろうか?この本の中でも「スペイン人でさえも全部読んだことがある人はいない」ということが書かれている。確かに、源氏物語や平家物語の内容は知っていても、全巻詳細に読破したひとは文学系以外の人でどれだけの日本人が読破しているのか疑問である。自分もその中の一人である。世界第2位の出版物であるにも関わらず、このありさま。その理由は、ドン・キホーテが実は長い物語であること、当時のスペインの風土・文化・思想・政治についての知識がないと、その物語の面白さを理解できないということが、日本人にとってもハードルの高さがあるのだろうとおもう。確かに、ドン・キホーテの物語は、小学生向きに簡単に書かれたり、絵本のようなものにして売られているものがあるが、それは所詮子供だましであって、全体のあらすじは分かっても詳細のあらすじと物語が「バカ受け」する理由は知ることができない。文学作品においてはどれも同じだと思うが、その書物が書かれた時代背景を知らないと、全然理解できないのだろうなというのは感じた。

作者もその点を痛快に述べて、じゃぁ、途中で諦めてしまうドンキ・ホーテを、出版当時仕事をしなくても読ことに熱中するひとが多かったという、いまでいうところの、ハリーポッターの出版と同じような現象が起こったことの解説がされているものが良い。もちろん、物語をこの本の作者なりに簡潔にまとめているところもいいが、過不足無く簡潔にまとめているところもいい。これを読むと、スペインという国がどのような国であったのか、そして、いまではスペインの観光地で有名になったところが、なぜ有名になったのかというのも理解できる。ドン・キホーテを読まずして、スペインを観光することは、全く意味が無いことも分かる。観光旅行の企画で、ドン・キホーテの道筋を歩くという企画を見たことがあるのだが、それって、物語を読んだことが無い人にとっては全く意味が無いだろうなとおもう。買物しか興味が無い人にとっては、買物が出来ない場所への観光は、買物と買物の間の余興にしか思われないと思うので、そういう人は別に海外にまで行って買物する必要はなく、銀座や表参道で買物をしていたほうが断然安いはすだから、こういう本を読む必要は無いのだろう。ヨーロッパ人にとっては、教養は重要な会話のファクターであるので、これはアジア人にとってはなかなか難しいハードルである。ドン・キホーテあたりは超基礎的な物語であるので、これを知らずしてスペインに行くことほど恥ずかしいものは無い。無知のままスペインに行って、それなりに感動して、帰国することは、単なるその観光客の自己満足としかない。

表面的なスペインを知っているだけでは、観光旅行をするにはつまらないとおもう。それで十分だという人は不必要なことだろう。金が続く限り買物を続けて貰えればいいとおもう。そうじゃない何故スペインに観光旅行にいくのかと考えた人は、是非一度はドン・キホーテを読んでからスペインに行くことをお勧めする。そのドン・キホーテを最初から詳細に読むのが面倒くさいという人にとっては、この解説本を読んでから行くのがいい。これを読めば、食文化、キリスト教とイスラム文化の融合、そしてスペイン王国の文化というのがすぐに理解できるだろう。ましてや、ドン・キホーテの軌跡を辿ろうとする人は、道中の町で何をするべきか、何を見るべきかというのがよくわかるはずだ。きっとどのガイドブックよりも重要なことが書かれていると思う。

孫文

孫文は中華民国の建国の父でもあり、中共のほうでも建国の父として崇められているのは周知の事項であろう。数千年続いていた中華世界の専制君主制を倒し、世界で最初の民主国を設立したのは大きな功績だろうが、彼はもともとそんなつもりで当時の王朝である清朝をぶっ潰したのではない。満州族つまり、漢民族にとっては夷てきだった民族が中華を治めていることが嫌だったのだろう。孫文が居た広東の地は、政治の中心地である北京から遠いところにあるので、なおさらその気持ちが大きかったし、多くの漢民族が同じような思いだったようだ。しかし、声を大にして清朝の悪口を言う事はできないし、集会をすることは法律で禁止されている。これはいまのシンガポールと同じである。公で政治不満や政府を馬鹿にすることは許されない。となると、アングラな世界を作ってそこで集会をし、仲間しかしらない暗号を使って秘密結社を作る必要がある。そこから生まれたのがいまのチャイニーズマフィアだということは実は重要だ。

この本は小説であるのだが、ほぼ史実を忠実に反映しているため、清朝転覆から孫文が死ぬまでの功績ややったことや失敗がほぼ全部網羅されている。中国の歴史の中で一番面白いのは、アヘン戦争以降から第2次世界大戦終了までの時代である100年間だろう。一番の激動の時代であり、たくさんの本を書いても書ききれないものだと思う。そして孫文はそのなかでも重要な登場人物の一人だ。孫文の名前は三民主義を掲げたひとというのでは知られているが、あまり日本人にとっては孫文のことは知らない人が多いのではないだろうか。台湾にいけば、中山記念堂を建てているくらい神様に崇められているが、日本ではチちょび髭のオヤジとしか認知されていないのが一般的だと思う。実は、日本にも何度も来ており、そこで清朝転覆のための協力者をたくさん作り、資金を集め、当時の日本の有力な政治家を巻き込んでいたのだ。日清戦争のあと、日本は中国にとって最先端技術と思想を持ち、中国よりも優れた身近な国という認識をされていたために、中国人にとっては当時もいまも日本への留学が盛んに行われていたこともバックアップされていたのだろう。
陳舜臣の小説はいつもながら、詳細の内容がかかれているため、膨大な中国に関する資料を集めて、知識の宝庫をもっているひとだと感心してしまう。孫文に対する知識も半端じゃない量を持っており、孫文と関係した数々の人たちとの関係も、この小説を通してすべて読み解くことができるので、大変勉強になり参考になる書物だとおもう。単なるチョビ髭のおっさんではないことも理解できるだろうし、中国最大の詐欺師と言われてしまっていたこともままあったようだが、何故そう中国人に思われるようになったのかも分かるし、中国人にありがちな自分の利権のために他人の利権を潰してでも成り上がって見せたいという欲望が渦巻いていたということも分かるし、世界中に広がったチャイニーズマフィアの卵のような組織が世界各地でどのような役割を演じたのかというのも良く分かる。また、清朝が一番の「お尋ね者」とみなしていた孫文を、ロンドンで拉致監禁したことが、さらなる孫文を世界中に名を広めてしまったという汚点も知ることができる。おかげで、いつでも暗殺できたはずなのに、暗殺できなくなってしまった清朝の愚かさが露呈されていて、歴史とは本当に痛快で面白いと改めて感じさせてくれる。

医師であり、キリスト教徒であり、革命化であり、集金能力の高い政治家でもあった孫文であるが、同時もいまもやはり世界各地に中国人が広がっているが、知人・同郷人というツテという伝手を使って何かを成し遂げようとしている考え方は、今も昔も中国人には変わらない考え方なのだなと改めて認識してしまうし、日本人とは異なり自分の生まれた土地はどうでもよくて、外に出てそこで成功したところが自分の故郷であると思う気持ちは日本人にはなかなか理解できない部分でもある。日本人であれば、自分が先祖代代管理している土地があるから、なかなか違う土地で成功を望むために移住したいという人は少ないのだが、中国人にとっては土地は一時的に定住した場所であり、財産ではないと考えているところの根本的な違いなのだろう。孫文の兄弟も親も、ハワイにその当時から移住して財を成していたし、孫文自体も故郷の広東省から脱出して、まだ植民地であったマカオで病院を開設していたし、こういう外に出て行こうという精神を物語を通してでも知ることはできる。

ちなみに、外国にでて成功している中国人が多く、客家系であるといわれている通り、孫文もやっぱり客家の人だった。広東省梅県といえば、客家のなかでも中心的な客家の集まる場所でもあるからである。純粋の漢民族である客家系のひとであればあるほど、清朝の中国支配は許したくなかった事実なのだろう。「復明倒清」をお題目のように唱えていたのは分かる気がした。

孫文(上)(下) - 陳舜臣
中公文庫
各 720円